狼の名は
犬もとい、グレイウルフを連れて家に戻る。
「ただいま~」
「おかえり~??きゃああー!!」
ま、そうなるよね。今まで襲われてた相手だしね。
「あー、このグレイウルフは、大丈夫だから。襲わないから。」
「ほんと?」
子ども達が固まって警戒している。大丈夫と言ったが、本当に大丈夫だよな。勝手に使役完了したと思っているが、グレイウルフに目で大丈夫だよな?ってアイクコンタクトを送ると
「わふぅ!!」
と軽く吠えた。
「ひっ!!」
警戒してる子ども達は警戒をさらに強めた。仕方ない。子ども達の前でグレイウルフの頭をなでてやり、顎下もなでてやる。
「くぅ~ん。」
「ほら 怖くない」
決まったろ?今のセリフ決まったろ?
「・・・」
子ども達には通じてない。姫姉さま通じないよ!!さらに撫で続けてやると腹を出してさらに喜びを全面にだしている。グレイウルフのあまりに無防備な様子に子ども達も警戒を解いていく。
「せんせー本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。さわってみ?」
恐る恐るグレイウルフにさわってみる子ども達。こらケビンわっしゃわっしゃしすぎだ。一応、グレイウルフにも釘を刺しておく。
「ここにいるのは、みんな家族だからな」
「わふ」
理解してるといいが・・・正直、初見で会ったなら二足歩行の牛、ニコの方が怖いと思うのだが。
30分もすると、グレイウルフとおっかっけっこしたり、木の棒を投げて取りにいかせたりと馴染んでいた。そうだ、名前を付けなきゃな。前世の実家で飼ってた犬は、シベリアンハスキーの雑種で雄だった。名前は「太郎」。ここは「花子」しかあるまい。ミツコに続いてハナコ。異世界で浮く名前だがまあいいだろう。
「このグレイウルフに名前を付けた。今からハナコな。」
「ハナコ-!!ハナコ!!」
「ワンワン!!」
喜んでくれてるようだ。さて、馴染んだところでハナコを洗わなければな。ついさっきまで完全野生だからな。洗浄の水玉を見た瞬間、脱兎のごとく逃げ出したハナコだったが、
「コラ、ハナコこっちに来なさい。」
と怒ると、耳を伏せながらしぶしぶ近づいてきた。どこの世界でも犬はお風呂や水が嫌いなようだ。犬じゃなくて狼だったが。なんつうか、グレイウルフってシベリアンハスキーに似ていて実家の犬を思いだす。模様は違うけどね。ふふ お手やお座りも教えなきゃな。
次の日は、ダンジョンにも町へも行かず狩りに出かけた。ハナコを連れて。少し小さめのグレイウルフであったが、もともと野生で狩りもしてたであろうし、戦うのも問題ないだろう。森に入りしばらくするとホーンラビットを見つけた。
「ハナコ、あの獲物を捕っておいで。」
静かな声で「ワフ」って言うと、さっそうと走り抜けた。ホーンラビットに飛びかかり爪で角をいなすと首元をガブリと一撃である。ヒューなかなかやる。何の問題もなく仕留めたな。ハナコがホーンラビットを咥えて俺のところまでもどってきた。そのままホーンラビットを献上物のように差し出しお座りの姿勢になる。しっぽふりふりである。
「よくやった」
ハナコをなででやる。それと褒美に干し肉を少し与える。あ、そういや犬って塩あげちゃだめなんだっけか。塩なしで干し肉つくれるんだっけか?後で試してみよう。ロッキーもかなりの戦力であるが、ハナコも中々にいい戦力になりそうだ。あいもかわらず人外の戦力だけが増えていく(笑)さて『本』でハナコの能力を確認するか。
≪名前=ハナコ 種族=グレイウルフ レベル=3 スキル=『格闘 3』『遠吠え 3』『言語理解 1』 技=『ウルフファング』≫
遠吠え覚えてるな。しゃべれたら効果聞くのに…技は、なんというかそのまんまというか。。。わかりやすくていいんだけどね。
俺の能力も確認してみると、
ジョブ:教師 レベル11→13 固有スキル『習熟度アップ 小』
神:知恵の神メディウス 魔法才能:水魔法(初級)才能:本の加護
パッシブスキル:『接客 25』『計算 20』『教育 10→11』『指揮統率 10』『調理 4』『短剣 3』『投擲 5→6』『弓 4』『斧 5→7』『解体 5』『採取 4』『農業 4』『畜産 4』『修理 1』『調合 2』『道具加工 1』『水生活魔法 30』『土木作業 4→5』『警戒 2→4』『乗馬 2→4』『水魔法(初級) 1→8』『穴掘り 2』new
アクティブスキル:『観察 2→3』『遠吠え 1』new
魔法:『創水 30』 『洗浄 30』『癒しの水 1→2』『水球 1→5』『水操作 1→5』『氷作成 3』new
技:『チャージ 1』『蜂刺 1』new 『トマホーク 1』new 『スマッシュ 3』new
使役:『グレイウルフ 1』
情報量多すぎ!!把握できん(笑)レベルもスキルも順調に伸びてるようだ。子ども達に任せっきりのところは、一切スキルが上がってない。戦闘以外でも常に使っている水魔法は伸びがいい。新しい項目、使役は、『グレイウルフ 1』となってる。使役にもレベルがあるのか?前世からの持ちこしスキルでは、初めて『教育』が上がった。先生としても成長しているようだ。地味にうれしい。
子ども達はポツポツとスキルを得ていた。計算・農業・畜産・調理・解体などレベル1であるが全員発現していた。個々で見ると、エリスは『闇魔法(初級)』、ロイは『槍』を取得しているみたいだ。順調に成長しているみたいで何よりである。
その夜、家族の一員としてハナコが増えたことを祝った。祝いの席は豪快に肉を食べる。飲み物は、キンキンに冷やした水にミツコから分けてもらった蜜を少し入れて飲む。砂糖はあまり手に入らないのでフルーツ以外の甘味は貴重である。養蜂、メープルシロップ、サトウキビなど、存在は知っていても、本物を見たことがなかったり、方法がわからなかったりで実現には遠い。前世で読んでた異世界物の主人公たちはどうしてあんなに博識なのか。物語と言ってしまえばそれまでだけど。。。ネット検索の偉大さを懐かしんでしまう。まあそれでも生きていけば知識も蓄えられるしできる事も増えていくだろう。
祝いの次の日は、貯めに貯めたボススライムの戦利品などを持って冒険者ギルドに向かう。ギルド職員の中年女性が数の多さにびっくりしていた。そういえば最近アリエッタさんを見ないなと思って聞いてみると、結婚してお腹が大きくなったのでお休み中だそうな。笑顔の素敵な方だったので、さぞもてたであろう。今生の俺も13歳。そろそろ浮いた話や出会いが転がってこないものか。ふと考えてみると同年代の女の子の知り合いがいない事に気づく(笑)この辺前世と変わらんなあ・・・話が逸れた。ボススライムの落とした核と雑魚スライムが落としたドロップ品、その他の魔物素材で1金貨ほどになった。ボススライムが落とした謎のレアドロップも確認してもらった。
「ボススライムのレアドロップ・・・正直初めて見たわ。私も正体わからないから『鑑定』持ちの人に確認してもらうから1日預からせてくれないかしら?」
『鑑定』スキルねぇ、なんて便利そうな響きのスキルなんでしょうか。知らない物でも鑑定できるんだろうか。
「どうぞ。あずかってください。」
2個あるうちの一つを職員さんに渡した。どれくらい倒したら出たの?って聞かれたので300匹以上だと言うとあきれられた。確かに忍耐のいる作業でしたけれども。帰りに、食材とハナコの首輪を買って帰路についた。ロッキーはたくましいがあくまでロバなので勘違いされることもなかろうが、ハナコは見た目が魔物なので、首輪でも付けないと間違って攻撃されたらかなわないからね。




