ダンジョン地下1F
探索が始まるぜ!!と意気込んではみたもののすでに地下1Fで嫌気がさしている。というのもスライムの大群が道をふさいでいるからだ。人があまり来ないので増えまくっているんじゃないだろうか。ロッキーと共に乗り込んだが、情報くらいはしっかり仕入れてからくるべきだった。割合慎重派の俺にしてはどうかしてたと言わざるをえない。パーティメンバーが集まらない焦りもあったんだと思う。笑ったあいつらを見返してやる!!って思ってたけど、逆の立場で考えると実績の無い13の若造で、しかも戦闘職じゃ無いジョブでパーティメンバーを募集。。。俺も参加しないよな。まあ、それはそれとして笑うことはないと思うけどな。さて、そんなことより目の前のスライムの大群だ。斧も刃があるので相性が悪いとはいえないが、良くもない。水魔法は相性が悪い。20や30で効かないスライムの群れを片っ端から斧で倒さないといけないのか・・・はぁ。まあやるしかないよね。幸い動きは遅いし、油断しなければやられないだろう。
が、、、スライムは1匹1匹は大したことが無かったのに、集まるとなんというか大きな集合体みたいに襲ってきて結構危ない。ちまちま斧で殴っては逃げ殴っては逃げをしているが、奥から補充されているようで減っているように思えない。洞窟の通路で無かったら無視して回り込んだらいいんだろうけど。地下1Fから難易度高くね?もっと皆さん掃除してくださいよ。。。ゆーっくりとスライム団体様が移動してこっちに来ている。あの集団に取り込まれたら逃げれず溶かされて殺されちゃうだろうし。逃げたらダンジョン入館料?30銅貨捨てたようなものだし。火魔法でもあればなあ・・・!!って火魔法、その対極の魔法俺持ってるじゃん。試してみるか。
まずは大きめの『水球』でスライムを水まみれにする。そのうち吸収されるだろうが、そうなる前に『氷作成』を使う。予想通り、水まみれのスライム達がどんどん凍っていく。ガッチガチに凍るのでは無く水をあびせられたところだけが凍っている。凍って動けなくなったスライムを斧でぶっ叩いていく。面白いように簡単にスライムが崩れていく。流動体より凍ってる方が斧と相性いい。ザックザックと斧で倒していきとうとう通路のスライムを一掃することができた。通路には魔石とドロップ品と思われるアイテムが落ちている。なるほど、ギルド長が言ってた通りだな。ご丁寧に瓶に入った状態でドロップしているが、本当ダンジョンの中だけ妙にゲームっぽいんだよなあ。それにしてもなんだろなこの瓶の中身。『観察』を使ってみるか。
-油 状態:上--
なるほどゲームなどでよくあるスライムオイルってやつかな。3つオイルが落ちてたけど同じものっぽいからレアではなさそうだ。あと魔石は町の外にでるスライムの魔石よりかなり小さかった。オイルと魔石をロッキーの荷物袋に入れて奥にすすむ。入って30分ほどになるが今のところ罠らしきものが見つかっていない。まだ見つかってないだけか、もっと下の階層に行かないと罠は無いのか。そういった情報も仕入れてくるべきだったと痛感する。無いとは思うが地下1Fで罠で死ぬってこともあるかもだしな。よし、町に戻ったら、謙虚に情報を集めて慎重に行こう。笑われても馬鹿にされても死ぬよりはいい。というか普通にギルド職員に聞いたら教えてくれたかもしれないのに何で聞かなかったのか俺(後悔)。色んな経験をつんで、いずれは家にいる子どもたちにも教えてあげたいしな。頑張っていこう。
相変わらずポツポツと出てくるスライムを倒しつつ、何度目かの分かれ道の後、小部屋のような所に出た。部屋の真ん中には、ぽつんと宝箱が置かれている。確か宝箱も出るって言ってたはずだし、スライムがうようよいるってことは、あまり人がきていないと思うから、宝箱が放置されていてもおかしくはないかもしれない。ただ、怪しさ満点である。俺のスキルに開錠などないからカギかかってたら終わりだし、罠を回避する術も知らない。でもね、でもね 宝箱ってさ開けなくちゃいられない気分になるよね。まさか1Fから宝箱から毒なんて出ないだろ…?出ないよね…?えーい開けちゃえ。
ギィーイ 宝箱が開く。別段アクションは無い。罠は・・・ないのかな?箱の中を覗き込むと1冊の本が見えた。まじか!?地下1Fで魔導書とか出るのか大当たりじゃん!!手に取って中を見る。
<<この本を見て、ラッキー魔法の本とか思ったでしょ?残念違いまーす。これは落書き帳です。ダンジョンに来た記念に一言書いていってください。持って帰らないでね。>>
ご丁寧にペンとインクも宝箱に置いてある。ペラペラとめくるとこんにちは とか 俺はだれそれだ とか どこから来た だとか 俺は何々になるだとか 恋人募集中だとか・・・殺意が沸いた。誰がこれを置いたんだ?ダンジョンの主ってこともないだろ。しかも皆きちんと書いてるし。罠がどうとか言ってた俺は一体・・・とりあえず腹がたったので、前世で大人気の顔がアンパンの方のイラストを描いて、そっと宝箱をとじた。
仕切り直しだ。先に進もう。奥へ奥へと進んでいく。現れる敵はスライムのみ。かなり小さい魔石とはいえ50以上は倒した。30銅貨の元はとっただろう。オイルも5瓶取れたし。何とか1Fのフロアボスを倒して転送装置に登録まではしておきたいが、情報が無いためゴールまでどれくらいかまったくわからない。幸いスライムの大群は一度だけだったし、ダンジョンでも『警戒』スキルは働くので、死ぬことはないだろうけど。スライムばかりを倒しつつ、さらに30分砂時計を二回ひっくり返したころ、大きな扉のある場所に着いた。おー何かボスの部屋っぽいな。あ、看板がある。『地下1Fボスの間、危険だと思ったら逃げてください。冒険者ギルド』めっちゃ親切な看板やん。ボス部屋からは逃げれるんだな。良かった。勝てなかったら死あるのみとか辛いもんな。
水を飲み一休みしたあと、ボス部屋に入ってみた。広い部屋だ。高さも5mはあるか。真ん中に何かいるな。ん?スライムが1匹?なんだ通路にいたスライムの大群の方がよっぽどやばいじゃないか。まあ安全な方が助かる。さてやるかと斧を構えた瞬間、スライムが跳ねた。油断しきっていた俺はもろにスライムアタックをくらって吹っ飛ぶ。ゴロゴロと転がって壁にぶつかった。
「げぼっ」
ぐっ、普通のスライムじゃないってことか。油断した。骨は大丈夫そうだ・・・良かった。って考えてるとスライムが今度は体を捻ったように動きだした。何か来る!!
「プシュアアアアア!!」
あぶね!!何か吐きだした!!床が若干溶けてる。酸ってやつか。あんなの喰らって『癒しの水』で傷を癒せるのか?ってまた飛んできた。斧で受けようとして斧ごと吹っ飛ばされる。
「こ、この!!」
す、スライムめ 強いじゃないか・・・スライムの大群をしとめたように氷攻めしたいが、『水球』を使う隙を作れない。動きも速く酸とスライムアタックの連続技に翻弄されたままだ。仕方ない。手は借りずに倒したかったけど。
「ロッキー!一瞬でいい、こいつをおさえてくれ!」
「ヒヒン!!」
まかせろとでも言いそうな顔で突っ込んでくる。酸攻撃をサイドステップでかわし、スライムアタックを体で受け止める。おおーびくともしてねえ、すげー。いやいやそんなこと言ってる場合じゃない。
「『水球』!からの『氷作成』!!」
スライムが凍っていく。やはりタンク役がいると戦いやすい。凍ったスライムをロッキーが踏み砕いていく。やがて粉々になった。
「ふう。助かったロッキー。」
「ヒーハー!!」
スライムとは言え、手ごわい相手だった。一人だったら逃げの選択肢もあったかもしれない。少し待つとボススライムの体が消えて、魔石と何かアイテムが落ちていた。よくわからないアイテムだな。魔石は、町の外のスライムと同じくらいの大きさだった。正直割りにあわん(泣)ダンジョンで魔石で稼ぐにはどうやら数で稼がないとだめのようだ。敵を探す苦労はあまりなさそうだけど。
回収後フロアをうろうろと見回すとダンジョン入り口にあった装置と下に降りる階段があった。装置にギルドカードを掲げると装置が光った。水晶パネルもついてる。水晶には、ダンジョンから出る場合は脱出ボタンを、別の階層に行く場合は階層の数字を入力せよと出ていた。俺の場合、1Fしか行ってないので、脱出を選んで見る。あ、やべロッキーも転送されるのか?慌ててロッキーをつかんだ。ギュンと目の前が暗転したと思ったら、ダンジョン入り口からほんの少し離れた別の装置の前に立っていた。つかんだロッキーも傍にいた。良かった、置き去りにしたかと思ったよ。
入り口周りには冒険者の姿は無かった。皆ダンジョンに入っているんだろう。受付をしてもらった職員さんらしき人に挨拶をしてから帰ろうと近づく。
「おー無事みたいだな。初めてできちんとボス倒して帰ってきたんだな。大したもんだ。」
「え、一人一人顔おぼえてるんですか?」
「いやあ。君は目立つからさ。若いしロバといっしょだしね。ヤジが聞こえてたけどジョブ教師なんだって?」
「はい。ちょっと思い入れありまして、今子どもを引き取っていっしょに過ごしているんですけど、子どもに色々教えるのに教師なかなかいいですよ」
「子どもって、君も子どもだろうに。まあヤジなんか気にせずがんばればいいさ。人を笑ってけなす連中なんて大したことないからな。実際、君の後ろの団体だけだったよ。笑ってたのは。」
そうなのか。てっきりみんな笑ってたのか思ってた。視野がせまくなってたんだな。
「ありがとうございます。戦闘ジョブではないので、パーティ組むのは難しいですけど、少しづつ頑張っていきます。」
「うんうん、少しづつ頑張ってレベルを上げて、装備をそろえて。技や魔法も覚えてな。皆そうやって強くなっていくもんさ。ジョブも重要だけど、本当に大事なのは心構えさ。」
おっさん いいこというじゃないか。感動したぞ。前世の俺よりは若そうだが。
「はい!!」
「あー君、名前は?俺はギルド職員で ロドリゴだ。よろしくな。」
「アルフレットです。よろしくお願いします。」
「アルか。覚えた覚えた。またな!!」
ダンジョンに入る前は、嫌な気分を味わったが、帰りはとてもいい気分で帰れた。大事なのは心構え。確かにそうだ。卑屈にならず頑張っていこう。ロドリゴさんの技を覚えるって言葉で思いだしたけど、戦闘ギルドで技覚えるって言ったまま一回も行ってないや。ギルド長に盾使った方がいいぞって言われたのも忘れてるし・・・・もう少ししっかり準備するか~。さてさて素材はいくらになるかな とか考えつつ町へ戻るのだった。




