羽化と開拓
新年を迎えた次の日、羽化しているはずのミツコを探す。庭を見回すと見覚えの無いでっかい花が咲いている。花の大きさだけで50cm全体で2mほどだろうか。昨日まで無かったのだからミツコがらみだとは思うが。。。で、肝心のミツコはどこにいるんだ?キョロキョロと見回してると
「おはよう、先生。」
後ろから声がかかる。聞いたことのない声。ミツコかな?と後ろを振り返ると
ナニコレ・・・?羽の生えた蜂のコスプレをしたような身長1mくらいの幼女の姿で、頭には王冠をかぶっている。が、全体的にムッキムキ。格闘ゲームにでてくるようなムッキムキ。違和感しかねえ。。。妖精とは?
「お、おはよう ミツコ。。。?」
「いい朝ですね。先生。」
そ、そうね。
「と、ところでミツコ。あのでっかい花はミツコに関係あるの?」
「そうですわ。あの花も祝福ですわ。あの花からは毎日蜜が出てきますの。私の主食でもありますけど、少しなら差し上げますわ。」
何故 語尾がお嬢様キャラっぽく?中身変わらないだろ?羽化すると頭も変化するのか?
「祝福?あの花もってことは他にも?って、祝福って何かわからないって言ってなかったっけ?」
「羽化したら知識が流れてきましたの。話し方も素敵になりましたでしょ?ふふ。もう一つの祝福は私ですわ。」
「ミツコが?どういうこと?」
「私あの花が無いと生きていけませんの。ですのでこのお家を守りますわ。それが祝福。おまけで家族も面倒見ますわよ。」
まあ強そうな筋肉してらっしゃいますが、、、本当に守れるほど強いのか?
「何か疑ってる顔をなさってますわね、先生?あの花の蜜があればいいだけなので、離れて動く事もできますの。証拠を取ってきますわ。しばらくお待ちくださいな。」
そういってミツコは飛んでいった。小さい羽でぶ~んと。しばらくするとミツコはでっかい猪を手に、飛んで帰ってきた。その羽で猪抱えて飛んでこれるのおかしくね?魔力か何かで飛んでるのか?猪は多分ワイルドボアか。ビクンビクンしてるな。
「ワンパンですわ。」
ワイルドボアをワンパンで沈めたの・・・?
「私もう肉食べなくても良いので皆で召し上がってくださいな。まあまあ強いでしょ?私。」
ええ。今この家で一番強いのミツコじゃね?
「先生おはよー。」
子ども達が起きてきた。
「何かいる~!!」
子ども達がミツコを発見した。
「私はミツコよ。みんなよろしくね。」
「ミツコー昨日と全然違う~!!おっきくなったー!!」
コニーとマリーがはしゃいでいる。おっきくなった事より問題はムッキムキな事じゃないのか。
「えー皆おはよう。ミツコの姿が変わったけど昨日とかわらず仲良くやってくれ。あと、庭に生えてる大きな花は、ミツコの大事な花だから気を付けること。水もあげてね。」
「はーい。」
と話をしてたら、気を失っていたワイルドボアが目を覚ました。やべ、ビクンビクンしていたけど死んでなかったか。ワイルドボアがミツコに突進する。ミツコはワイルドボアを蹴り上げる。3mほど真上に飛ぶワイルドボア。落ちてくるワイルドボアの顔面に蹴り上げた足でかかとおとし。地面に沈み込むワイルドボア。
つええよ。。。ミツコさん。家の守りは貴方に任せて大丈夫そうね。。。
「ミツコ つよーい!!」
「すごい ミツコーー!!」
子ども達も大喜びである。
「先生、私にも眠るところ用意してくださいね?」
ミツコがニコリと言ってきた。はい。そうさせていただきます。
「今日の予定は、このマッドボアの解体以外はいつもといっしょね。じゃあ解散。」
ミツコの事は想定外だったが、俺たちは日常に戻っていく。子ども達は自分の仕事と武器の訓練と勉強。俺は、ロッキーとニコを連れて開拓である。
ちなみに結構モンスターを倒したので今回の成果を『本』で確認してみた。レベルが11に上がっていたほかは、仲間にミツコが加わっていた。
≪名前=ミツコ 種族=蜂の妖精 レベル=1 魔法の才 『植物魔法』 スキル=『格闘 30』 魔法『グロウ 5』≫
ミツコ レベル1であの強さなの?格闘30もあるよ。植物魔法『グロウ」は、植物の成長でも促すのだろうか?ちょっと妖精っぽい。魔法使えるなんて言ってなかったけどな。本人が言うまでは聞かないでおくか。
後は魔物だが、
<<グレイウルフ 73%>><<平原狼 87%>><<ゴブリン スキル:『穴掘り』取得>><<ヒュージホーネット 技:『蜂刺』取得>>
ゴブリン、ヒュージホーネットのスキル・技が解放されている。ゴブリンは『穴掘り』か、『土木工事』とどう違うのか?思うに俺のスキル考察ではスキルには二つある。自らの経験を数値化したもので能力の証明となるもの。『接客』や『計算』なんかがそうだと思う。対して『警戒』や職業レベルの上昇によって覚えるスキルは特別な能力の付与に近いと思う。その考えだと『土木工事』は能力証明、『穴掘り』は穴を掘る特別な能力が付与されるんじゃないだろうか。あくまで推察だけど。あとゴブリン魔法使いと戦士は同じゴブリンなんだな。とりあえず『穴掘り』は取得と。で、ヒュージホーネットは、技『蜂刺』。そのまんまだけど。俺針無いんだけど使えるのか・・・?まあ取得しとく。
一月ほど過ぎたころ、当初の目的だった100m四方の開拓が完了した。続いて柵を作る。木と蔦などを使った2mほどの高さの柵である。道づくりの時に伐採した木材も残っていたので割合早く作業は終わった。ロッキーもニコもパワフルに活躍してくれた。ミツコは「私は守り専門ですので。」と蔦でつくってあげたハンモックで揺られて寝ている。おのれ・・・魔物が襲ってきたときはきちんと仕事してくれよ。。。
続いて堀を作る。前と同じ大きさだけど100m四方で規模が段違い。しかし作業を始めて気づいたのだが『穴掘り』スキルの威力は絶大だった。シャベルを持って掘る速度が3倍以上早い。思わず笑ってしまった。サクサク掘れる。おもろい。外側の柵が完成した時に内側の堀を埋めようかと思ったが、せっかくだからビオトープにして、そこで水耕栽培できる野菜や生き物でも育てることにする。どういったものがあるかわからないが。ザリガニなら育てるの簡単そうなんだけどな。食ったことないけど。てかいるのかな?
ふた月がたったころ、開拓作業は全て終了した。堀が完成したことで、子ども達も新規開拓ゾーンで安全に過ごせるようになった。全員で畑を作り、前に植えた果樹を植え替える。後々果樹を増やせるように若干余裕をもっておく。できた畑には堆肥を混ぜて準備をする。ちなみに堆肥は『観察』スキルで確認している。動物、人間の便を堆肥にするべく集めて発酵させているのだが
--便 状態:普通 から
--堆肥 状態:普通 に変わったらokだ。うんこの観察とはシュールだが、便利だし・・・
畑の準備ができたら、昨年作ったキャベツ、じゃがいも、新しく玉ねぎ、トマトを植える予定だ。魔物がいなければもっと大きく畑も展開できるのだが。今はまだ我慢。用心棒がいるから多少無理はできそうだけど。
子ども達の勉強は、割り算までおわって、応用問題に入っている。武器の訓練も各々好きな武器に変わった。エリスは弓を選択。ロイは槍。コニーは鞭。マリーとケビンはナイフで練習だ。もう少し大きくなったら別の武器も考える予定。エリスは武器訓練に加えて闇魔法の練習も行う。庭で真っ暗なとこがあったら概ね魔法の練習をしているエリスである。狩りは肉がなくなったら俺が行く事にしている。冷蔵箱のおかげで肉の持ちもいい。
開拓作業もひと段落したので、俺は町へ向かおうと考えている。冒険者ギルドに通って依頼をこなしお金を稼ぐことと『本』を使って自分を鍛える事をしたいのだ。せっかくファンタジー異世界に来たのだから色々やってみたいってのもある。ロッキーと駆け抜けたら最速30分ほどで行けるし、ミツコとニコがいれば子ども達を任せても安心との判断である。子どもたちへの教育も合間合間で続けるつもりだ。もちろん通いの予定なので離れるわけでは無いのだが。ダンジョンも行ってみたい。オラ わくわくしてきたぞ!!




