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新年の準備2



家に着くと子ども達がお出迎えしてくれた。


「おかえりなさい~」


「せんせ~獲物取れた~?」


「せんせーの肩にのってるのが獲物~?」


「先生虫食べるの?」



「タベナイヨ。ワタシ ウマクナイヨ」


 肩の上からぶるるっと蜂の妖精(幼虫)が訴える。


「!?」


 子ども達が衝撃の表情ののち、マリーとコニーがニターとした笑みを浮かべる。ケビンは手をにぎにぎしている。叩く準備をするな。


「しゃべったー!!何これー!!」


「なにこれなにこれ~!!」


コニーとマリーが興奮し、ジャンプして走り回ってる。


「蜂の妖精だそうだ。」


「先生、妖精って何ですか?」


 ロイからの質問に戸惑う。え?そういや妖精って何だ?改めて説明しろって言われると難しいな。妖精=ピクシーみたいなのが俺の認識だったけど。これ幼虫だしな。


「う~ん先生もよくわからなくなった。とりあえず不思議な存在だな。自分で妖精って言ってるし妖精なんだろ。多分」


「先生、この虫さん名前あるんですか?」


と、エリスが聞いてきた。名前?あんの?


「ワタシ ジョウオウヨー。」


「却下。許さん。」


「ユルサン ッテ イワレテモー。ジャア ナマエツケテヨー。」


「僕 名前つける。  バナナがいい。」


 ケビンはバナナが好きだなあ~でも待て、バナナは駄目だ。紛らわしい。まあ白くて細長くてギリギリバナナぽいが駄目だ。


「ケビン、バナナはだ~め。虫さんは食べ物じゃないのよ。」


 さすがお姉さん。エリスが止めてくれたうえに、提案してくれる。


「蜂だし、ミツコって名前はどうかな~?先生。」


 何か和風。ミツバチじゃないけどまあいいか。


「いいんじゃないか。じゃ蜂の妖精、今からミツコな~。」


「ミツコ。ミツコ。」


 幼虫も気に行ったようだ。


「ミツコ!!ミツコ!!キャハハハ」


 マリーとコニーも気に行ったようだ。何かようわからんが気にいったのかな。。。


「獲物取れてないんだけど、魔物いっぱい倒したから、ちょっと素材集めてくるわ~。」


「先生ついていってもいい?僕解体手伝う。」


 ロイがたくましいセリフを。


「私も手伝うー。」「ぼくもー」「わたしもー」


 って全員が。ほんまええ子達やで。


「じゃあ、全員で行くか~。ロッキーとニコも連れおいで。」


 結局全員で行くことになった。町までの道では無く整備されてない森を歩く事になるが、いい経験だろう。俺も爺さんに連れられて近くの森には入ってたしな。ただし、絶対に俺から離れないようにくれぐれも念を押しておく。


 現場に到着すると、全員で素材を荷場所の方に運ぶことにした。多少は解体するが、積める分は家で作業する。はじめゴブリンを見て子ども達がびっくりしていた。


「先生、これって人間なの?」


「いや、ゴブリンっていう魔物だよ。人間のように道具も使うし群れで行動するけどね。家畜や畑を襲ったりする悪い魔物だよ。」


「先生、ゴブリンも解体するの?」


「先生も倒したの初めてでね。解体は先生が勉強しながらやるよ。皆は蜂の解体しようか。ただし針と毒があるからね。十分注意して。」


「はーい。」


 ゴブリンは、20匹荷馬車に強引に積んだ。蜂はその場で解体し魔石と針、毒袋を抜き取った。羽は損傷が激しくあまり取れなかった。蜂の魔石は小さかったけれど数が数だけにそこそこの稼ぎになりそうだ。針と毒袋を慎重に袋にしまい、蜂の死がいを処分しようとすると


「センセー モッタイナイ ソレ ワタシタベルヨー。」


 ミツコ もったいないって言葉知ってるのね(感動)。それにミツコも俺の事先生って呼んでるな。


「結構な数あるから、全部は無理だろ?どれだけ食べる?」


「ゼンブ タベレルヨー。ワタシ ヨウセイ デ レアダカラネー。タベタブンダケ ウカ ハヤマルヨー。」


 便利な奴。。。解体の終わった蜂を食べやすい大きさに切ってミツコに渡していく。どんどん食べていく。すげーなミツコ。体積増えてねえ。まさにファンタジー。それだけ食えるならってことで、荷馬車に積んだゴブリンもここで解体することにした。ゴブリンの匂いは少々きつく、肉は食おうと思えない匂いだった。冒険者ギルドで買い取られたゴブ肉は何に使うんだろ。。。まさか食わないよな?ゴブリンの肉を肉だんごにしないとだめか?ってミツコに聞くと、本当は肉だんごの方がいいけど我慢するって言ってた。1匹目皮をはいでて思ったが、獣タイプの魔物より皮は薄く、正直非常に手間のかかる解体になりそうだったので皮をはぐのをやめた。営利な爪だけ取り、討伐依頼に使える耳をカット。魔石を抜いた後、肉はミツコにあげた。


「カタクテ ゴブリンハ オイシクナイヨ」


 とミツコが嘆いていた。知らん。頑張って食え。ミツコの偉大な胃袋のおかげで思っていたよりも帰りの荷物は少なくなった。


「アト スコシ タベタラ ウカシソウヨ。シュクフク ハ イエ ノホウガ イインデショ?」


「え?早くない?」


「ケッコウタベタカラネ。」


 まあ 早いのはいい事か。


 さあ 帰るぞてっとこで、俺の「警戒」スキルに何かひっかかる。大きな角を持った雄鹿が見えた。鹿は警戒心が強く近づくと逃げてしまう。今は弓を持ってないし、投げナイフでは厳しい距離だ。しかし明日のお祝い用に是非とも狩っておきたい。さてどうするか。10mまで近づけばなんとか投げナイフの射程なのだが。爺さんから教わった狩人スキルでぎりぎりまで近づいて仕留めるとするか。


「みんな、50mほど向こうに鹿がいる。俺がしとめてくるからここから動かないように。静かにな。」


 鹿を狙ってる事を伝え一人森の中に消える俺。子ども達も見ている。先生として恥ずかしくない姿を見せなくては。自分の存在を限りなく薄くし迂回し、徐々に徐々に鹿に近づいていく。40m 30m 20mもう少しで投げナイフの射程距離だ。その時鹿が食事を終えたのか、今いる場所から離れようとした。まずい、間に合わない!!気配を消す忍び足をやめ走りながらナイフを投げる。1投目不発。俺に気付いた鹿が必死に逃げる。2投目不発、3投目不発・・・あかん、待って 鹿待って!!4投目かなり不発。


鹿逃げる。足速い。俺追いつけない。ナイフ当たらない。鹿は見る影もなくなった。


 ・・・失敗したんご。


 しょぼーんと皆のいるとこに向かう。


「せんせーい、鹿は~?」


「・・・逃げられた。」


ケビンにトントンと慰めるように足を叩かれた。3歳に慰められるとは・・・


「先生獲物は大丈夫だよ。さっき猪が襲ってきたけど、ロッキーとニコがたおしたから。」


「へ?」


「ほらそこでひっくりかえってるよ。」


 できた家畜というかペットというか・・・


「さ、さすがだな。ロッキー、ニコ・・・」


「ヒーハー!!(ニヤリ)」


「ぶもぶも」


 とりあえず獲物も取れたし良かった良かった・・・いいとこ見せれなかったけど。


 ひっくり返った猪を仕留め血抜きをし、荷馬車に積んで持って帰り解体する。明日は新年、この肉を使ってお祝いをしよう。猪肉のステーキだ。いや、小麦粉、ワイン、ニンニクがあるんだしから揚げを作ってみるか。醤油があれば尚いいのだが、塩でもまあ旨いだろう。酒もワインだけどまあ・・・にしても日本酒や醤油ってどうやって作るんだ?醤油は大豆を発酵だっけか?日本酒は米だったかな・・・材料とかはなんとなく思いだせても具体的な作り方はさっぱりだ。知識は宝、どこかに宝は落ちてないかな(願望)


 日が変わり新年を迎える。特に昨日から何か変わったってことは無いのだが、年齢だけは皆増える。俺が13歳、エリスが8歳、ロイが7歳、コニーが6歳、マリーとケビンは4歳になる。


「新年おめでとう!!」


 森の中でイベントなんてほぼない。唯一とも言っていいイベントがこの新年の祝いである。


「おめでと~せんせ~」


「おめでとー先生!!」


「今日はいつもと違う食べ方でお祝いしよう。」


「やったー!!」


 子どもたちも喜んでいる。昨晩ワインとニンニクに漬け込んだ猪肉を、小麦粉を付けて低温の油でゆっくり揚げる。揚げ物は、油を使う贅沢な調理法なので、これからも滅多にやれない調理法だ。麦のスープとキャベツの千切りも用意する。ほんと揚げ物の見た目ってほんと悪魔的!!ソース、ケチャップ、マヨネーズがあればさらにうまくなるのに!!あ、マヨネーズは作れるか。また今度試してみよう。


「おいしそ~先生この料理なぁに?」


「猪肉のから揚げだよ。熱いから気を付けて食べるんだよ。」


「はーい。」


 から揚げを食べる。ヤバウマ。塩でも十分うまい。たまらん。


「おいしー。先生おいしいよー。」


 そうだろ そうだろ うんうん。ミツコにも食べさせてあげる。


「ウマウマ。ウッ ウカスル。チョット ニワデ ウカシテキマー。」


 え?と 当然だな おい!!しかも軽いな。


「うか~うか~先生うかってなあに?」


 コニー聞いてきた。


「虫の幼虫がね、大人になることだよ。」


 だったよな。合ってるよな?


「ミツコ、大人になるの?早いね~」


「ね~。」


「カッテニ ウカスルノデ アシタマデ ホットイテネ。」


お、おう。。。ごゆっくり。のっそのっそと庭の方に向かっていくミツコ。


 ひとしきりから揚げを楽しんだ後、今日はある意味祝日なのでのんびり過ごす事にした。さて、ミツコはどんな姿になるのやら・・・


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