新年用の準備
しばらくして、前世で言う大晦日の日がやってきた。明日は新年。全員そろって一つ年を取る。開拓は柵まで取り掛かれていないものの、予定地の半分まで木の除去は終わった。勉強は今は引き算を教えている。せっかくの新年、できれば豪華な獲物を捕りたいものである。護衛としてロッキーとニコを家に残し、獲物を求めて森の中を徘徊する。ワイルドボアか猪が見つかればいいのだが。。。
1時間ほど徘徊すると求めていない魔物の群れに遭遇する。以前に何回か戦ったことのあるヒュージホーネットである。ブンブン飛び回っている。どうやら巣が近くにありそうだ。蜂はごちそうにはなりそうもない。ならないよね・・・?できれば試さないでいようと思う。。。ハチミツでも採れればいいのだが、この蜂の顔は、どうにも「俺肉食ってます」って顔だ。いやいかん顔で蜂を判断してはいけない。あっ、肉だんご運んでる・・・素材としては、針・毒袋・羽などがあるが、今回の食べる獲物っていう目標からは外れる。
さて離れるかと距離をおこうとしたところ、別の集団が見えた。緑色の肌に尖った耳、小鬼とも呼ばれる魔物ゴブリンだ。森のこの辺りで見たことなど無い魔物だ。まあヒュージホーネットもあまり見なかったので当てにはならないのだが。ゴブリンは、こん棒、錆びた剣や槍を持って20匹ほどの集団で進んでいる。このまま進めば恐らくヒュージホーネットの巣があるだろうと思われるポイントだ。ゴブリンが蜂の巣を襲うのだろうか。とりあえず様子を伺うか。
予想通りの進路を通りゴブリンは、蜂の巣の方向に向かっていく。ゴブリンとは戦ったことがないので強さはわからないが、100匹以上はいるであろう蜂の群れに挑んで勝てるものなのか。細心の注意を払い戦況を伺う。巣から距離があるところで蜂が1匹ゴブリンの餌食になる。それを合図に巣がある方向から蜂の群れが飛び出てきた。俺にはわからなかったが、何か合図を出したのであろう。
蜂の大群を前にして1匹のゴブリンが迎え撃とうとする。杖持ってるな。まさか!?
「####!!」(何言ってるか聞き取れない。)
杖から火の魔法が飛び出す。蜂の大群に火が襲い魔法の威力で吹っ飛ぶもの燃え移るものなど1/3ほどが魔法の餌食になる。そう言えば他者が使う魔法なんてほとんど見たことなかったな。火の魔法・・・恐るべき威力だ。というか森燃えてんじゃん。なにやってんのゴブ野郎!!
しかし、ゴブ魔法使いは、おかまいなしに
「####!!」(何言ってるか聞き取れない2。)
二回目の火の魔法、その他のゴブリンの追撃もあって襲ってきた50ほどの蜂の群れは全滅する。その勢いのままゴブリン達は巣に向かおうとしている。残りの蜂は半数。このまま傍観しても良かったが、ゴブリンに家の周りをうろうろされても困るな。。。こっそり1匹づつ仕留めて漁夫の利を得れないものか・・・待てよ初めから敵だと考えるのは良くないかもしれない。もしかしたら友好的なゴブリンという可能性もあるわけだしな。
両手をあげて柔らかな笑みを浮かべてゴブリンたちの前にでる。
「やーこんにち 」
「####!!」(何言ってるか聞き取れない3。)
魔法ゴブめ!!あいさつの途中で魔法打ってきやがった。正面に『洗浄』を張りつつ横にかわす。ズドーンと木が燃えた。敵確定じゃああああああ。今の魔法で魔法ゴブは魔力が尽きたのかふらつく。それに合わせたように蜂達がいっせいにゴブリンに襲い掛かった。何故か俺の方にはこない。蜂って確かフェロモンか何かで仲間に知らせるってのあったよな。それかな?蜂とゴブと俺の乱戦だ。これ幸いと俺は真っ先に『水弾』を魔法ゴブに打ち込む。吹っ飛んで気を失ったようだ。とどめを刺そうと思ったが、ゴブリン戦士軍団が守るように魔法ゴブの前に立った。だが攻撃は俺だけではない。蜂はやられつつも毒針で何匹もゴブリンを始末していく。蜂に気を取られているすきに俺もゴブリンを斧で襲う。体感的にグレイウルフよりは数段戦闘力は落ちる感じかな。ゴブリンが残り3匹くらいになった時にあやまって蜂も倒してしまう。蜂が俺も標的に選ぶ。仕方ない。デスマッチだ。
つぶし合いをしてくれた結果、かなりの数がいたにもかかわらず全ての敵を始末することができた。魔法ゴブも守ってくれる戦士ゴブがいなくなったので、気絶中に首を落とした。蜂の死がいの中には2倍ほどでかいのもいた。恐らくこれが女王蜂だろうな。
「ふうぅ。」
流れのままに戦闘に巻き込まれてしまったけどどうにかなったな。しかし、ゴブ20匹、燃えてない蜂が何匹いるかわからないけど、持って帰るのもここで解体も無理だなあ。数が多すぎるや。確かギルドでゴブリンの皮や肉も買取やってたけど食えるのかこれ?なんていうかヒューマンタイプの魔物解体ってハードル高いし、子どもには見せたくねえなあ・・・
にしてもゴブリンは何故蜂を襲ったんだろうか。蜂にしては100匹くらいだと小さなコロニーだと思うけど、巣に何かあるのか?残った蜂がいないか警戒しつつ巣を確認する。やはり蜂蜜は無さそう。ん?何か動いたぞ?幼虫か?
・・・何かへんなのいる・・・幼虫の頭に王冠のっかてるんだけど。次期嬢女王蜂って王冠かぶってたっけ?異世界だしな・・・あるかもなあ。というか幼虫の体内からめっちゃ魔力感じるんですけど。ゴブリン狙ってたのってこれなんじゃないか。なんか特別性ぽいし。幼虫はこいつ一匹だけか。さてさて
「こいつ食えない事もないんだろうけど、新年に蜂の幼虫食うのもなあ」
「タベナイデー」
う?幼虫しゃべった?他に誰かいるの?周りを見渡しても誰もいない。
「タベナイデーコロサナイデー。ワタシ オイシク ナイヨー」
幼虫しゃべってんな。ロッキーもニコも言葉理解してるしありえなくもないか?こういう状況に慣れてきた気がするな。
「お前はヒュージホーネットの幼虫か?」
質問を投げかけてみる。
「チガウヨー。ワタシ ハチノヨウセイ。スウジュウネンニイチド セカイジュウノ ドコカノハチカラ ウマレルノ。レア ヨ レア。」
何かレア主張してきたぞ。
「で、妖精は蜂から生まれてどうなるんだ?世界中の蜂を統べるのか?」
「チガウヨー。ウマレテ シヌダケー。タダ ヨウセイガ ウカシタトコロ スコシダケ シュクフクサレルノ。」
「祝福って?」
「ワカンナイー。デモ レアダカラ。ワタシレアダカラ コロサナイデー。セワシテクレル ハチモ イナクナッタ ミタイダカラ ヤシナッテー。」
養ってくれとは(笑)どうする?ゴブリンがわざわざここに襲いにきたってことからも信ぴょう性はある。何故か魔力も感じるし。しかし養うって、そもそも何食うんだ、こいつ。
「で、何食べるの?お前さんは?」
「ナンデモタベルヨー。ハナノミツ デモ ニクデモ。」
蜂が食えるものなら何でも行けるのか。
「そこのゴブリンの死体でもいいのか?」
「イイヨー。デモ デキタラ ニクダンゴ ニ シテネー。」
ふうむ。仕方ない連れて帰るか。これも何かの縁か・・・なんか変わった生き物ばかり増えていくな。。。一応釘もさしとくか。
「もし、悪さしたら食うからな!!」
できたら食いたくないけど・・・
「ヒィー ワルサシナイヨー。クワナイデー ヨウセイ ウソツカナイヨー。」
うさんくせええwまあいいや。体長30cmほどの幼虫を肩に乗せる。魔法ゴブの杖とゴブリン軍団の装備をロープにひとくくりにして持って帰る。いったん帰ってロッキーと荷馬車連れてこないと数が多すぎる。
新たなペット?を連れて俺は家に帰るのだった。そして帰り道で気づく。新年を祝う肉をまだ取って無い事に・・・(泣)




