訳あり
最後は家畜屋さんである。ぺトラさんのお店に向かった。
「あら、いらっしゃい。あれ、一人じゃないのね。」
「ええ、色々あっていっしょに暮らしている家族です。」
「君一人で森住んでたのよね?君がこの子たちの面倒を?」
「はい。いっしょに暮らし始めたのは最近ですけどね。」
「そっか~大変ね。で、今日はどんな用件で?」
「えと、この子コニーとこの子マリーが新しい動物を飼いたいっていうので。コニーは大きめの動物、マリーは猫がいいんだそうです。」
「じゃあコニーちゃんはあの辺の動物見ようか?お姉ちゃんが案内してあげる。ネコ科はあっちになるから君が連れていって選んであげて。決まったら声かけてね。」
コニーがぺトラさんに付いていく。ロイとエリスもいっしょについていったようだ。マリーとケビンの手をつないでネコ科がいる檻の方に向かう。日本でもよく見た感じの猫が多いな。子猫はどれもかわいいものだ。マリーとケビンは興奮しっぱなしである。俺も興奮していた。子猫たまらん。何だこの可愛さ。
「せんせー マリーこの子がいい~」
「どれどれ~うっ」
なんてこった。かわいいよ確かにかわいい。でもこの柄、顔 ヒョウだよね?パンサーだよね?
「マリー・・・この子がいいの?」
「うん。この子がいい!!」
ま、まあぺトラさんに聞いてみるか。ぺトラさんの方に向かう。またもや俺は「うっ」という声を出してしまう。コニーが釘付けになって見ているのどう見ても象ですやん。
「あのー、ぺトラさん?これ象ですよね?」
「象だねー。」
「ちなみにおいくらで?」
「5金貨」
無理無理無理。もうそんな金ねえ。
「ちなみにあっちのヒョウは?」
「4金貨。結構珍しい種類なのよ。」
それ~も無理!!
「すまん、コニー、マリー。先生の持っているお金では買えないよ。。。」
絶望の表情の二人。お金と買い物の概念を理解してるのか謎だったけど、ちゃんと理解してるのね。何度かお金で買い物してるの見てたろうしな。
「わかった~別の子 さがす~。」
しょぼーんとしながら別の子を見に行く二人。すまん甲斐性の無い俺を許してくれ。だがなヒョウはいけても象は買えないぞ。。。小屋に入りきらん。。。
「そういや君、訳アリ好きだったわよね?」
ぺトラさん唐突に何を?確かにロッキーは訳ありだったが…
「で、どういった訳ありがいるんでしょうか?」
「ふふw乗ってきたわね。ちょっと待ってて。」
駄目だ、訳アリ、特価と聞くと我慢がならない。惹かれてしまう。ぺトラさんにうまくやられているなあ。
しばらくして、ぺトラさんが連れてきた動物?を見てぎょっとする。歩いてますよね…二足歩行で
「えー、ぺトラさん、こいつは・・・」
頭が牛で、体は人間、、、ミノタウロスというやつではなかろうか…いやよく見ると体も牛じゃね。歩く牛・・・
「そう。牛よ。」
確かに牛だ。うん。牛だな。まだ小牛なのか小さめ?だ。背は俺より低いな。
「子牛ですか?」
「そうね。生まれて1年てっとこかしらね。」
「なんで二足歩行で歩いているんです?」
「私が聞きたいわよ。訳アリの理由もそれだし。」
「武器持って戦ったりは?」
「しないわね。牛だし。」
たぶん4足歩行の方が力ありますよね・・・
「えー何の役にたつんでしょうか?」
「さあ。知ってたら売れ残らないでしょうしね。さすがにこれ以上ここに置いとくのもね。やっぱり肉・・」
肉って声を聞いて、二足歩行牛は、ぶもぶもと悲しげな声をだす。やめてくれこの流れはデジャブを感じる。う~んでもこの牛おかしいんだよなあ。普通の牛の骨格で二足歩行できるもんでないだろうし。安定感のある歩き方してる気がするんだけどなあ。
「あのぺトラさん、この牛ってどこから連れてきたんです?どこかの牧場産ですか?」
「確か商人が売りに来たかな。めずらしいので見世物にしようと思ってたらしいんだけど。この子めちゃくちゃ臆病でね。見世物にならないから売られたの。」
確かにびくびくしてるなあ。話をしてるとコニーがやってきた。
「うわぁあああああ。先生~この子は駄目~?」
目がキラキラしてるね。どこに惹かれる要素があったんだい…?
「何かね。この子たすけて~って言ってる気がするの。先生だめ~?」
二足歩行牛ぶんぶん顔を縦に振ってるな。なんかロッキーと同じで言葉わかってないかこいつ。別の猫を見に行ってたはずのマリーもこっちにきた。牛を指さして
「せんせーマリー猫いらない~この子がいい~」
「この子がいいよね~?」
「ね~」
おいおいお前もかマリー。コニーと意気投合してるじゃないか。この牛連れて帰って何か役に立つのか?
「あの、ちなみにこの牛おいくらで?」
「10銀貨でいいわよ~。肉にしたらもう少しするんだけど。ものすご~く感情豊な顔してるでしょ、この牛。だから肉にするの忍びなくってね~。困ってたのよ。いいところに来たわ。ほんと。」
まあ、確かに感情豊な顔してるなあ。今も目をうるうるしてるし。
「じゃあ買います。」
結局買ってしまうのか~
「やったー!!」
マリーとコニーが万歳している。ケビンはぺちぺちと牛を叩いているが、そのたびに牛はビクっとしている。本当に臆病だな。というか、ケビン危ないからやめなさい(驚愕)
「またよろしく~」
嬉しそうなぺトラさん。まあ、俺も高い家畜で無かったからお金も3金貨ほど残ったし。よしとするかな。子ども達を荷馬車に乗せて帰ることにする。二足歩行牛は、俺と外を歩く。ロッキーと牛が目を合わせた時何となくだが、
「ヒヒン(新入りわかってんだろうな!?)」
「ブ、ブモ(は、はい)」
というような流れがあった。訳は俺だ。
「名前は、マリーとコニーでつけなさい。世話もきちんとするように。」
「はーい。なににしようかな~」
あ~でもない、こ~でもないと楽しそうである。植物油や酢、酒などを買っているので帰りも慎重に荷馬車を走らせる。しかし森の半ばまできたころアクシデントに見舞われた。グレイウルフが3匹で襲ってきたのだ。さすがに3匹はまずい。「警戒」により不意はうたれなかったが、戦況は厳しい。ロッキーは解放してあるが、ロッキーもグレイウルフ相手にどこまでやれるか。。。ロッキーに馬車を守る指示を出しグレイウルフと対峙する。出し惜しみは無だ!!
「水弾!!」
ありったけの数の水弾を生み出しグレイウルフにぶつける。50はくだらない。3匹の内真ん中のグレイウルフは逃げ遅れ吹っ飛んだ。もう少し精度をあげたら蜂の巣みたいにもできるかもしれないが、今の俺のレベルでは厳しい。ふっとんだグレイウルフに投げナイフを3本ほど投げつけさらに追い打つ。結果を見ないまま残り2匹を追う。1匹はロッキーが押さえつけてくれている。余裕はなさそうだがすぐにどうこうということも無いだろう。もう1匹は!?と目線を荷馬車の方にやると荷馬車に襲い掛かろうとしていた。
「くそ!!」
「きゃあ~!!」
子ども達が悲鳴をあげる。投げナイフも間に合わない。やばいと思ったその時、茶色い物体がグレイウルフにタックルをかました。二足歩行の牛だ!!。ぶもーぶもーと鼻息荒く立っている。荷馬車を背に守るように。
「よくやった!牛!!」
タックルを喰らい、道の境界線の柵にぶつかったグレイウルフが起き上がろうとしているところを斧で一閃。念の為もう一発頭部に斧を入れ確実にしとめる。残りは!?とロッキーの方を見ると血まみれになりながらもグレイウルフを組み伏せていた。近づき斧でしとめる。最初に水弾でぶっとばしたグレイウルフは投げナイフの追撃で死にかけていたので、これも仕留めた。
思わずへたり込んでしまった。やばかった。牛がいなけりゃ子ども達がやられるところだった。
「ふぅ~。」
「ヒヒン(痛)」
あーそうだった、ロッキーがケガしてるんだった。癒しの水でくまなく傷を治癒していく。
「ロッキーもよくやったぞ。さすがだ。」
「ヒーハー(疲)」
さすがにきつそうだな。ロッキーをなでてやり、牛の方に目をやると子ども達に囲まれていた。
「ありがと~牛さん。怖かった~」
「ありがと~」
ひとしきり牛を撫でた後、ロッキーも撫でていた。ケビンとコニーはバッシバッシと叩いていた。やめろ傷がひらくじゃないか。
「さあ、お前たち荷馬車に乗ってくれ。また襲われたらかなわんから、すぐ帰るぞ。」
グレイウルフ3匹を牛にかつがせて、家に帰った。ロッキーに負けずおとらず、二足歩行ながら牛もなかなかにパワフルだった。3匹かついでもしっかりした足取りだ。
家に帰り荷物を降ろしたころ、牛の名前が決まった。
「んとね~この子の名前は「ニコ」にする~」
コニーと紛らわしくないか?って聞いたら「いいの~おそろいなの~」って言っていた。どこがおそろいなのかよくわからないが、まあ本人たちがいいなら良しとする。ニコに何か能力はあるのか確認するのに『本』を見てみると
≪名前=ニコ 種族=1/8 ミノタウロス レベル=1 スキル=『剛力 1』『言語理解 1』 技=『ぶちかまし 1』≫
となっていた。え?1/8ミノタウロス?牛じゃねえのかよ!?てか牛とミノタウロスで子どもできるのかよ。1/8なのでかなり血は薄いとは思うけど…というか7/8牛じゃないのか?多い方取って。まあ深くは考えまい。それにやっぱり『言語理解』持ってるな。でもまあ、ニコも拾いものだった。大人しそうだし子ども達もなついてそうだし。
結果良ければ全てよしってことで。。。明日からもがんばろ・・・




