猪 売る!!
しばらくは森で暮らすつもりで買いこんだというのに、4日もたたずに町へ行く事になった。お出かけするぞーっていうと子ども達は大はしゃぎである。荷馬車に肉の入った壺と、マッドボアの毛皮、牙などを積み込む。子ども達も荷馬車に乗る。座り心地はよくないので毛布が緩衝材代わりだ。俺が頑張って整備した道は、ほぼまっすぐに町へと続く道になっており、ロッキーは俺無しでも町まで行けそうだ。生肉を運んでいるので、襲われる心配もある。俺はロッキーには乗らずに護衛として横を歩く事にした。
森では、グレイウルフに1回、ビッグラットに2回襲われた。俺の腕もあがったもので、投擲と水魔法の牽制で難なくグレイウルフを仕留めれるようになっている。ビッグラットは言うまでもなく。倒した後は、解体をする暇は無いので荷馬車に乗せようとすると子ども達が、「キャアキャア」と悲鳴をあげていた。しばらく我慢してもらおう。洗ってない魔物は若干匂うが、それも仕方なし。平原では、平原狼5匹の群れに出くわす。ちょっと、数が多いなと思ったので投げナイフで牽制中にロッキーを荷から解放。
「ロッキー、荷馬車を守れ!!」
「ヒーハー!!」
相変わらず理解力の高いロバである。そのうちしゃべるんじゃないか。。。守りはロッキーに任せ狼を屠っていく。数が多いとはいえ、グレイウルフよりは弱い魔物である。
「水弾!!」
「キャン」
ペットボトルほどの大きさの水の弾を複数飛ばすと、それだけで狼は吹っ飛ぶ。確実に1匹づつ斧で仕留めていく。初級とはいえなかなかに使い勝手のいい魔法だ。4匹は俺が倒し、1匹はロッキーが顔をふみつぶしていた。平原狼も荷馬車に積み込んでいく。森で狩りをしようと思うと出ないのにまったく…
順調に荷物も増えつつ町に到着した。門番がマッドボアの毛皮を見てびっくりしていた。冒険者ギルド裏口に向かい大声で職員を呼ぶ。
「すいませーん!!」
「あーすぐ行くー。待ってろー」
この声はスキンヘッド。(冒険者ギルド長)
「おう、坊主か。で、この子らがこの前引き取った子達だな。アリエッタから聞いてるぞ。こんにちは、嬢ちゃんたち!!」
子ども達はスキンヘッドのおっさんにびびって、俺の後ろに隠れた。まあ いかついからな。
「ん?怖がらせちまったか。まあ いいや。こっち来るってことは多めの買取だろ?って、でかいな。」
ギルド長は、荷馬車に乗ったままでも見える大きな毛皮を見てびっくりしていた。
「あの大きさ、ワイルドボアよりもかなりでかいな。カールさんが言ってた大猪か。」
ん?爺さんあの大猪知ってたのか。
「爺さんは、あの猪の事なんか言ってたんですか?」
「んとな、森の中で爺さんとお前が住んでいる所によくでるのが、普通の猪。魔物じゃなくて獣のな。で、そこから少し奥に行くとワイルドボアっていう普通の猪の1.5倍くらいの大きさの猪の魔物がでるらしい。だいたいグレイウルフより少し強いくらいって爺さんは言ってたな。」
ほー。ワイルドボアっていうのも見たことなかったからな。奥には行かなかったし。
「で、爺さんはたま~にワイルドボアを町での依頼がてら狩ってくれてたんだが、ある日とんでもなくでかい大猪を見つけたって言ってた。殺りあったら確実に死ぬと思って逃げたそうだ。それ以来ワイルドボアの依頼はもう受けんって言ってたの覚えてるよ。坊主と暮らす前の話だ。」
さすがの爺さんの弓の腕でもあいつは無理だろうな。なんせでかすぎる。
「たぶん、爺さんが言ってた猪だろうぜ。俺もびっくりしたけど、でかいなこいつは。このでかさはマッドボアっていう魔物だと思うが、こんなにでかかいなんて冒険者ギルドの資料にも書いて無かった気がする。坊主の家周りの主だったのかもな。」
マッドボアの中でもでかい方だったのか。
「あまりにでかいので、肉も食べきれないし加工も大変なんで解体だけして壺に入れて運んできたんですよ。荷馬車に乗っている物全て買い取ってもらえたら助かりますが。」
「町にワイルドボアの肉もあまり出回らないのに、そのもう一つ上の肉となれば、皆大喜びだぜ。ちょっと商人ギルドに話ししてくるわ。飲食店のやつらこぞって買うと思うぞ。皮も規格外だし革職人に見てもらうか。半刻ほど待っててくれ。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
ギルド長はさっそうと駆けていった。
ぼーっと待ってるとギルド長が帰ってきた。しかし、後ろに30人以上人を引き連れている。
え?多すぎねえ?って思ってると、皆が荷馬車の中を見て面食らっていた。
「でかいな!!」「なんだあのでかさ!!」「誰があんな大物しとめたんだ?」「あれだけでかけりゃ肉もすごいぜ。」「あーそうだな、きっとワイルドボアなんて目じゃないくらい旨いに違いねえ」
マッドボアの毛皮を見ながら、皆が騒がしくしていると、ギルド長がこそっと耳打ちしてくれた。
「今来たのが商人ギルドの中でも飲食に係わってる者たちだ。普通の猪の生肉で1kg10銅貨ってとこだ。ワイルドボアならその2倍の値がつく。マッドボアならその5倍以上だろう。1kg50銅貨で売ってやろうと思うがいいか?」
「え?冒険者ギルドに売らないと手数料とれないんじゃ?」
「手数料代わりに10kgほどこっちにくれ。それでいい。」
「それでいいなら、お願いします。」
ギルド長はうなづくと皆を見ながら話しかけた。
「あー皆、見てもらったように、この馬鹿でかいマッドボアの肉をこの坊主が売りたいと言っている。1kg50銅貨だ。買うか?」
「20kgだ!!20くれ!!」「俺は50買うぞ!!「おい50も買ったら皆に当たらんだろ遠慮しろ!!」
一斉に皆が買う意思を示した。結局300kgちょっとあった肉は、ギルド長が連れてきた30人ほどの飲食に係る人が買っていった。なんとまんぷく亭の旦那さんもいた。目が合ったの会釈しといた。実際肉がここまで高値になると思っていなかったのでホクホクである。1.5金貨くらいだろうか。ぐへへ。いけないいけないおっさんがでている。
肉を買った人が立ち去ると、残ったのは一人だった。革職人らしい。
「見事な大きさの毛皮だね。しかも体に傷らしい傷もない。敷物としても大いに喜ばれるだろうね。」
まあ 溺死させたのであまり傷はないよなあ。
「2金貨てとこでしょうか。」
2金貨!!
「可能でしたら2金貨でひきとってくれますか?」
「喜んで。いい毛皮を買えました。ありがとう。」
革職人と俺はがっちり握手した。
残りは牙と、道すがら倒した魔物である。血抜きもしていない。あと、マッドボアの魔石。魔石と牙をギルド長に渡した。
「体もでかいと魔石もでかいな!!牙二本で1金貨、魔石は2金貨で買い取ろう。解体していない魔物はまとめで10銀貨でどうだ?」
もうなんでもいい(笑)どうぞどうぞ。金貨祭りじゃああああ
「はい。それでお願いします。」
結局、全部で6金貨と60銀貨になった。
かつてないほどの裕福感を感じる。あれもこれも買える。ふっふっふ。命を引きかえには少し安いので鍛えて強くなるまでは戦いたくはないが、良い稼ぎであった。大猪主さんありがとう。君の雄姿は忘れない。




