貧乏なお家 華麗なる旅立ち
目が覚めると元の38歳のおっさんというわけではなく赤ちゃんとして目が覚めた。
昨日はいきなりだったので あまり観察していなかったが何度か乳をもらいつつ観察していくことにした。
気づいたこと
新しい俺の名前は、アル らしい。略称かどうかは不明。
恐らく一家が住んでいるのは 村で農民ぽい。
獣、モンスター、盗賊、アンデットという言葉が出たのでそういうのも出そう。剣と魔法のファンタジー異世界だと思う。(願望含む)
そして
・・・この家はとても貧しい。
なんていうか 色々とぼろぼろだった。
文明レベルとやらが今の状態ではよくわからないので何とも言えないところであるが
地方貴族とか領主の息子なんていうことは多分ない。。。両親の服もつぎはぎだらけだったし。
しかもである
きょうだいが他に5、6人いた。しかもみな幼く、がりがりってほどでもないが少し痩せて見える。
この新しい家族は大丈夫なのか。。。と非常に不安な状況である。
とりあえず 俺は乳さえあれば生きていけるし今の状態ではやれることもないので考えないことにした。
きょうだいが多いのは、不安なこともあったが、いいこともあった。両親が姉や兄に言葉や何かを教えている時に一緒に聞くことができるのである。
新しい言語を覚えるのは、簡単なことではなかったが、半年(体感的に)もすれば日常会話ぐらいは理解できるようになってきた。魔法のほうは才能があれば訓練しだいで使えるようになるらしい。
物心ついたくらいに神殿?につれていかれ才能とスキルを調べられるみたい。
普通は5歳で神殿に調べに行くらしいのでその時まで楽しみである。
家族の半分くらいは、水の魔法を使う才能があるらしく(たぶん父親の影響だろう)イメージの仕方を熱心に上の子供に教えていた。何でも頭の中で水をイメージし念じるだけでもいいみたい。特に詠唱みたいなものはなくても発動はするが、手から水をだすっていう地味なものしか目にしていない。基本的には家族の飲み水や農業に使っているっぽい。
その説明を聞いたあと 俺は夜中にこっそり魔法の練習を開始することにした。ネット小説では、子供の時期から魔法を練習すると威力やMPが増えるっていうのがあるしね!
まずは、父親の影響から水魔法から練習してみることにした。水の玉をイメージしつつ念じる、すると頭上に小さいほんとうに小さな水の玉が生まれた。あまりにあっさりなので自分の才能にびびってしまう。
まじかー チート展開きたなあ。俺あんまりチート展開すきじゃないのになあニヤニヤ
とうかれまくっていたが、火や風や土や光や闇など 他の魔法はいくらイメージしても念じてもうんともすんとも発動しなかった。で、結局1か月くらい試したところで自分に才能はないものとして諦めた。
チートきてなかったOrz・・・
まあ水魔法だけでも才能があったことがわかったので、とりあえず赤ちゃんしながら水魔法の練習をしまくった。水の玉をひたすら作っては水差しや窓の外になげつけ、疲れたら寝るを繰り返した。家族が言う1歳を超えたあたりには結構な量の水を作ることが可能になっていた。
魔法以外特にやることもなく赤ちゃんをやっていたのだが ある日 唐突に両親に売られた。奴隷商人が村に来ているらしく、売るそうな。
何を言ってるのか(以下略)な状態だが そのまんまだ。
水は魔法で作りだせるのだが、食べるものがないと悲痛な話をよくしてるなあと思ってたんだが、まさか売られるとは思わなかった。うっすら聞こえてきた内容では、労働力にならない俺が選ばれたんだそうな。。。ほかの子を売るよりまだ何もわかってない俺を売るほうが悲しみが少ないってことも言ってたなあ。でもまあ よもや1歳で奴隷落ちとは思わなかった。。。生活苦しそうだったしね・・・捨てられたり殺されたりするよりはたぶんましなんだろな・・・一応家族は泣いてた。俺も心の中で泣いた。(実際に声にも出して泣いたが。)てか1歳児を売っていくらになるもんなんだ?一番役立たずを口べらすって意味もあるのかな。。。ここは家族の為におとなしく売られとくか・・・動けないしな
奴隷に落ちるというのがどういうことなのか、現状ではよくわからなかったが、知らないおっさんに抱いて行かれ俺ははじめて 村の外にでることになった。首輪とか何かつけられるのかなとびくびくしていたがとりあえずは何もしないようだ。馬車の中に入れられたんだが、おそらく俺と同じように売られたであろう人たちが5人ほどいた。その人たちは首輪をしていた。あー、赤ちゃんだから俺はつけられなかっただけでやっぱり首輪あるんだわと悲しくなった。
1週間ほどドナドナされていたのだが、ふいに馬車が止まった。
「止まれ!!死にたくなかったら抵抗するな」
って声が聞こえてきた。たぶん 盗賊(震え)まじかー 売られた上に盗賊とか まじありえん(泣)と嘆いていると
「護衛の皆さん、お願いします」
「おーまかせとけ!!」
「なまいきな ぶっ殺せ!!」
と 物騒な声とともに刃物がぶつかる音やらなんやら外が騒がしくなった。あ、護衛いたんだ。そりゃそうだよな~と安心していたのだが。
「盗賊の数が多すぎる、このままでは、、」
と 護衛らしき人の声が・・・で、「うわー」とか「ぐはあ」とか聞こえる。なんかばったばったと人の倒れるような音も聞こえてくるし・・・護衛しっかりしろ( ;∀;)
やっべーまじかよー このままだと盗賊にさらわれるのかよー ハードすぎんだろ異世界
とびびりまくっていたら、奴隷女性の一人が
「あなたはここに隠れているのよ」と、汚れた布(正直くさい)にくるんで箱の中に俺を入れた。で、箱はあけたままにしといた。パッと見れば何もはいってないようにみえなくはないと 思う。で、そのまま外にこっそり放り出した。しばらくして静かになると
「てこずらせやがって、やろうども、積み荷をかっさらえ、アジトに帰るぞ」
音だけしか聞こえないのではっきりしたことはわからないけど、戦闘は終わって荷馬車ごと持っていくようだ。
「うん?この箱汚い布だけか、けっ」ゴン! と俺の入った箱は蹴られてふっとんだ。運よく反対にならなかったので箱の外に放り出されることはなかったが結構響いた。おのれ!!
人が遠のいていくのが聞こえてきて。良かった助かったんだ俺と安堵したものの、よくよく考えれば1歳の俺がどこかわからんところで一人放り出されても死ぬだけじゃんと思いなおす。しかし、かろうじてハイハイぐらいはできるもののまともにしゃべれず、うごけずではどうしようもできない。盗賊に連れてかれるのも嫌だがこの展開もやばくねとただ茫然とするしかなかった。
水魔法でなんとか水分は補給しつつ震えているうちにそのうち眠ってしまった。