生活用品
森の家に戻り二日放置した家畜の世話をしつつ考える。
俺に子育てができるのか?
盗賊退治の追加報酬はいくらかわからないが、お金もあんまりない。10数銀貨ってとこだ。そういえば「まんぷく亭」の依頼完了手続きをするのを忘れていた。まあ25銅貨の報酬だけど。実際森の恵みがそれなりにあるので、贅沢を言わなければ生きては行けるだろう。なんてったって俺もここでもうすぐ13歳になるまで生きていたんだから。ただ人は食事だけでは生きていけない。服もいるだろうしこまごまとしたものも必要だ。う~ん。
「あっ」
思いだした。思わず声に出た。盗賊のアジトに生活用品が残っていたはずだ。生活雑貨のほとんどは放置してきたしな。
俺も少しは稼げるようになってる。それに俺のジョブは『教師』だ。子どもを教えるのにはうってつけではないか。俺も助けられた。巡り巡ってあの子たちを助けるのは俺の番なだけだ。
受けるとは決めた。住む場所も狭いながらもくっついて寝ればなんとかなるだろう。多分。約束までは3日ある。俺は元盗賊のアジトに向かうことにした。金がないんだから少しでも元盗賊アジトから生活用品運ばないと。そういえば壊れた荷馬車もあった。修理できればいいのだが。
ロッキーでかっ飛ばすと3時間ほどでアジト前についた。近づきながら気づいていたのだがアジトには昨日いっしょに戦った兵士達がいた。あー持っていこうとしたらやばいパターンでは・・・とドキドキしながら兵士に声をかけた。
「ご苦労様です。まだ後始末しているんですね?」
「あー、そのロバ見覚えあるな。昨日一緒に戦った最年少の子か?」
「そうです。」
「で、何しにここへ?俺たちはもし残党が戻ってきたらってことで待機してるんだが」
正直に聞くか。駄目なら駄目でおわりだろうし。
「えー実は、このアジトに生活雑貨とか残ってたと思うんですが、持っていっていいならもらえないかなあと。。。」
「確か碌なもの残ってなかったはずだが、いるなら持ってけよ。どうせここは使えなくするしな。」
「あっ、ふさいじゃうんですね。」
「また盗賊みたいなのに使われたら面倒だしな。」
「なるほど。では、すいませんけど中の物いただいていきます。」
「おー何を持っていってもいいけど、帰るときには声かけろよ~。」
「わかりました。」
やったー!!合法的に持っていっていいと許可が出た。しかも兵士がいるから安全だし!!根こそぎいただくぜえええええ。
まずは、入り口前に放置されていた壊れた荷馬車から手をかける。そこらじゅうから襲って持ってきたのか壊れた荷馬車は3~4台分あった。いいとこどりでなんとか一つは持って帰れそうだ。使えそうな板をはがして組み替えてるとさっきの兵士さんが手伝ってくれた。まじ感謝。本職ではないのでそれなりの見栄えにしか直せなかったが、なんとか使えるものはできた。
「良かったな。いっぱい持ってかえれよ。」
にかっと笑う兵士さん。さりげない優しさかっこいいぜ。
ロッキーに荷馬車を引いてもらい中に入る。100人近くが住んでいたアジトあったので、生活雑貨も多い。ただし全体的にあまりきれいでは無かった。汚れの少ない使えそうな毛布類、こましな着替え、調理器具やコップなども荷馬車に入れていく。子ども達とアイダさんが生活していたであろう部屋もあった。ひどいものだった。思わず涙が出た。鉄格子のついた部屋、大人の衣服からむりやり作ったであろう子ども用のつぎはぎだらけの汚れた服、壊れたおもちゃ、食器類もひどいありさまだった。使いつぶしたような裁縫セットもあった。食器類はおいておいたが、壊れたおもちゃやこの部屋にあるものはできるだけ持っていくことにした。壁にはたくさんの人の名前を石で削って書いたものもあった。5人どころではない。さらわれて子どもを生まされて、ここで死んだ子、売られた子、いっぱいいたんだろう。。。 決めた。俺は盗賊は許さない。これから先も絶対殲滅してやるよ。今はまだ力がない。強くなって必ず。凄惨なこの部屋の事は多分忘れない。
荷馬車に詰めるだけの荷物を積んだ。ロッキーにはすまないががんばって運んでもらおう。さあ帰ろうかと思っていたら、かまどに目がいった。調理道具ばかりに気を取られてさっきは見てなかった。何か違和感がある。あれ木をくべるところが無い?んん?もしかすると!!少し調べてみた。思った通り魔道具だった。魔石を設置することによって燃料無しに火がつく魔道具のようだ。魔石に魔力も残っていたのでそのまま火がついた。よし、これも持って帰ろう。少し荷物を減らしかまどを荷馬車につんだ。また重くなった。さらにすまないロッキー!!
外に出て兵士さんに声をかけた。
「ありがとうございます。これだけもらっていきますね!!」
兵士さんはちらっとこっちを見て
「おー、盗賊は出ないと思うが、魔物はでるからな~襲われないように気を付けて帰れよ~」
手を振り元盗賊のアジトを後にする。結構な荷物量をひっぱってくれてるロッキーであるが、まだ余裕がありそうなので
「乗ってもいいか?」
って聞くと
「ヒーハー(ご機嫌)!!」
と問題なさそうだったのでロッキーの背に乗せてもらった。歩くよりは早いだろう。
結局行きの二倍ほどの時間をかけて森に帰ってきた。道中襲ってきた平原狼は血祭りにあげて荷物がまた増えた。
早速かまどを設置した。元の魔石より多く魔力をこめることはできないが減った魔力を補充することはできる。壊れなければ長く活躍してくれるだろう。何より木の燃料を集めなくてすむのは助かる。労力の観点からしても資源の観点からしても。思いがけず荷馬車も手に入った。町へ物を売り買いするときには便利だろう。ややタイヤ部分が弱めなので何かで補強したいとこではあるが。
明日は少し狩りをして売るものを作ってからあさって町に向かうとする。少しでもお金を作って食料を買い足さないとな。




