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辺境生まれのハンターは日々成長中  作者: チョークさん
旅立ち
4/5

辺境開拓村での一日【夜】

家の居間で義母さんとお茶を飲んでいると強く扉が開かれた。


「帰ったぞ!」


入ってきたのは両手にウサギや鹿の足を掴んで掲げて見せる満面の笑みの父さんたちだった。


「鹿を狩れたの!?」


「おうとも!しかも俺とファイドが一匹ずつ仕留めたからな!一番いい部分を貰ってこれたぞ!」


「今回は俺の勝ちだ!」


「ウサギや野鳥など数なら勝てたんだがな…」


勝ち誇るファイド兄さんを褒め称え、肩を落とすジャック兄さんを慰めながら父さんの装備をはずすのを手伝う。


義母さんは「お帰りなさい」と一言告げ急いで家の裏へと向かった。


きっと体を洗うためのお湯を用意しにいったのだろう。


「片付けとメンテナンスは僕がしておくからみんなはさっぱりしてしてきなよ」


「おう。任せた」


父さんの一言に兄さん達も僕に装備を預けて家の裏へと向かった。


玄関の横にそれぞれの装備を並べ一つずつチェックしていく。


破損がないか確認したあとは血がついたりしたナイフや剣を拭い磨く。


簡単なメンテナンスが終わったと同時に居間から香ばしいいい匂いが漂ってきた。


「ロイルー、そろそろご飯よ」


「はーい!今いく!」


本格的なメンテナンスは明日の朝、父さん達と一緒に行えるように準備だけして今に向かう。


「きたか」


「早く座れよ!腹がへって仕方がねぇ!」


「ファイド、意地汚いわよ?」


テーブルには今日狩れたのと言っていた鹿足肉の丸焼きが堂々とテーブルの真ん中に置かれておりそれぞれの席には肉と野菜が具沢山のスープと籠に山盛りになった白パンが置かれていた。


「丸焼きなんて久しぶりだぜ!見ろよ!塩で味付けされてるぜ!?」


「ほぉ?奮発したもんだな」


「ロイルが貰ってきたのよ?今日のご馳走はあなた達が食材を、ロイルが調味料を、私が調理をした全員が協力したものになるわ」


義母さんの言葉に全員で笑いながら頷き合う。


開拓村ではたとえドラゴンの肉を出されようが王宮で食べるようなご馳走を出されようが今回のような家族全員が協力した結果に食べる食事こそが至高のご飯とされている。


「ロイルが旅立つ前に俺たちの集大成を食えるってことだな」


「あぁ。羨ましいことだ。俺が家長を継ぐときには食べられるどうか」


「ふん、まだまだジャックには譲らん。ロイルが戻ってきたときにちょっとだけ考えてやろう」


「兄貴がダメなら俺が継いでもいいんだぜ?」


「ならばまずは字を覚えることだな」


「うっ…次男でよかった…」


「「「あははは!」」」


僕が旅立つことに不安を感じさせず皆も心配はすることない、いつでも戻ってこいと感じさせてくれる今日の夕飯はきっと一生僕は忘れないだろう。


「それじゃあ食うぞ!」


父さんの合図と共に僕たちの手は鹿肉へと殺到するのだった。





「ロイル」


「義父さん?」


家の外で食休みをしようと風に当たっていると家の中から義父さんが何かを持って現れた。


「いよいよ明後日だな」


「うん」


「よくもまぁ三人揃って元気に育ってくれたもんだ」


「義父さんと義母さんのおかげだよ」


そう返す父さんは恥ずかしそうに鼻の頭を掻く。


僕の横に腰を下ろすと空を見上げる。


「何を見ていたんだ?」


「星だよ。旅に出ても方角が分からなくならないように確認してたんだ」


「ほー。星で方角が分かるのか」


「うん。村のおじいさんから教えてもらったんだけどどこに行ってもどんなに環境が違う場所にいても空だけは変わらないんだって。だから空に浮かぶ星達の形を覚えておけばどこにいようが必ず村にかえって来れるって」


義父さん驚いた様子で何度も大きく頷くとじっと星を眺める。


「旅立ってもお前は必ず帰ってくる、改めてそう確信できたよ」


「当たり前でしょ?なんてたって義父さんと義母さんの息子だよ?」


「……」


義父さんは強く目を瞑りこちらに表情を見せずに持っていた白い布で巻かれた物を押し付けて立ち上がる。


「お前の……ロイルの本当の両親の形見だ。旅立つ時に渡そうとずっと預かっていた」


そういうと義父さんは僕の反応を見もせずに家の中に戻ってしまう。


「本当の両親……ね。何言ってるんだよ、僕にとって義父さんも義母さんも大切な両親だよ。本当もなにもない。ここが僕の家族のいる場所なんだから」


聞こえてるかもわからないけどそう言って布を取る。


現れたのは月の光を反射させキラリと光る一本の剣だった。

余談


「義母さん!ロイルが!ロイルがぁぁ!」

「よく頑張ったわね、あなた」

「あいつ、俺たちの事を!」

「えぇ、えぇ。本当に……よく育ってくれたわ」


「親父かあんなに泣くなんてな」

「義母さんの涙も初めて見た」

「俺たちも頑張らねぇとな、兄貴」

「あぁ。ロイルに笑われないよう努力を重ねよう」



ロイルの旅立ちは本人以外にも大きな変化をもたらす事になります。

本当はもう少し村の生活を描きたかったですがそうしたらいつまでたっても旅立たせることができなかったので…。

二万字分ぐらい泣く泣く消去したよ、こんちくしょう!!

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