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辺境生まれのハンターは日々成長中  作者: チョークさん
旅立ち
3/5

辺境開拓村での一日【昼】

兄さん達を見送ったあと広場に残った村人達と無駄話をする。


こういった他愛もない会話にも参加することが開拓村では大切な娯楽の一つなのだ。


「ロイルちゃんや、この前直してもらった屋根なんだがね」


「まだ雨漏りしちゃいました?」


「いやいや、すきま風すら入ってこなくなったよ。ありがとうなぁ」


「ロイルちゃんが作ってくれた椅子なんだけどさ、うちのじいちゃんすごい喜んでたよ!これお礼にもらってよ!」


「おお!ロイル!お前のお陰でもう秋の収穫祭用の薪が集まったぞ!ボーランド達と食ってくれや」


「ロイル君!」

「ロイルちゃんや!」

「ロイルー!」


……。


「おや、お帰り。まぁまぁまぁ!また沢山お土産を持って帰ってきたわねぇ」


両手一杯にお礼の品を持って帰って来た僕を見ると義母さんは呆れたように笑った。


「ロイルが力になってくれて大助かりだって皆から言われるよ。ほんと自慢の息子だ」


「やめてよ、恥ずかしいなぁ」


義母さんの言葉にむず痒さを感じながらテーブルに荷物を置いていく。


「毛皮に薪、これは塩じゃないかい!回復薬まである!ロイルあんた本当に皆に好かれてるねぇ」


なんでもお礼の品としては通常は野菜や干し肉など食べられるものを贈るのが普通らしい。


毛皮や調味料などを贈るのは開拓村のなかでも最大のお礼とされていて回復薬や鏃など狩りに必要な物が贈られるのは最大級のお礼とされ、何かあったときは命をかけてでも力になるという意思表明でもあるらしい。


「みんな大袈裟だなぁ。手が空いたときにちょっと手伝っただけなのに」


「一回じゃないだろう?何度も困っているときに助けてくれる人ってのはありがたいもんなのさ。でも……残念だねぇ」


義母さんはニコニコとしていた笑顔を急に歪める。


それだけで何を思い浮かべたのか理解できた僕は義母さんの手を取って笑って見せる。


「仕方がないよ。掟なんだもん」


「それはまだまだ開拓が始まったばかりに出来た掟だろうに。ロイルがいれば食い扶持を減らす必要なんて……」


「確かにここ数年は貯蓄できるほどに豊作だったけど何があるかわからないんだ。村に何かあったときには必ず駆けつける、それも掟1つだよね?外の世界に飛び出して色々なことを経験して、何があっても村を助けることができるようになる。そう教えてくれたのは義母さんじゃないか」


「ロイル…」


「義母さん達が父さんや母さんに変わって育ててくれた事にはすごく感謝してるんだ。今度は何かあった時、僕がみんなを助ける番なんだよ」


そこまでいうと義母さんはまだ悲しそうではあるが笑ってくれた。


本当に…愛してもらえてるなぁ…と、実感できた瞬間だった。


その後、お礼にもらってきた品を片付けお昼を食べた僕は再び村の中央広場に戻ってきた。


すれ違う人皆に挨拶をされ、無駄話をしながらやって来たため日はすでに真上から傾いていた。


「よぉロイルっ!」


「ロイルー!」


「ジアン!セルフィー!」


僕の向かいから手を振りながら駆け寄ってきたのは幼馴染みの二人、ジアンとセルフィーだ。


ジアンは村長の息子として毎日を勉学に励む優しそうな顔にいつも笑顔を浮かべている。


セルフィーは村一番の美人だ。整った顔立ちは村の男たちの視線を集め見惚れた為に奥さんに怒られてる旦那さんをよく見かける。


「今日は仕事はいいのか?」


「うん。逆に畑をこれ以上広げるなって怒られたよ」


僕の言葉に二人は苦笑して首を振った。


「なら私たちこれから休みに川に行くのよ。ロイルもいかない?」


こちらを覗き込むように上目使いで誘ってくるセルフィーにドキリとしながらも首を振る。


「いや、止めとくよ」


「そんな…どうしてよ!」


セルフィーはどこか攻めるようにいい僕の袖を掴む。


ジアンを見れば苦しそうに表情を歪ませていた。


「…二人の邪魔は出来ないよ」


「っ……」


「セルフィー!?おい、ロイル…」


悲しそうに顔を歪ませたあと走り去るセルフィー。


ジアンは眉間に皺を寄せ俺の肩を強く掴んだ。


「本当にいいのか?」


「なにがさ」


「セルフィーのことだよ!お前ら付き合っ」

「だったらどうすればいいってんだよ!!」


僕が怒鳴るとは思わなかったのかジアンは大きく目を見開く。


「村を出ていく僕に着いてこいとでも言えばいいのか!?ほとんど戦闘訓練すら受けていない僕に!町までたどり着ける可能性は三人に一人だっていう過酷な旅に!将来村長の奥さんとなる安定した未来を捨てて危険と儚い夢が待ち受ける外の世界についてこいと!?」


「ロ…ロイル…」


「いいのかだって?良くないさ!まだ婚約者として決まったのがジアン!君だったから諦めがついた!小さい頃から兄弟のように生きてきた君だから!それでも!この村で生きていけるならば譲りはしなかったよ!」


「……」


「…ごめん」


「いや、俺がよく考えずに言ったのが悪かった。すまん」


「そういうわけだからさ。僕がいうのも可笑しいけどセルフィーのこと…頼んだよ」


「わかった」


ジアンは表情を引き締めると力強く頷いて右手を差し出してきた。


僕は苦笑してその手を強く握り締める。


「いつか帰ってきたときに二人の子供に会わせてくれよ?その子に僕の冒険を面白おかしく聞かせるのが夢なんだから」


「…ぬぐ!?頑張る…」


ジアンは引き締めた表情を歪めると弱々しく頷いた。


小さい頃、村に帰って来たハンターの人達に泣かされた記憶が甦ったのだろう。


それでも、僕にとってその話を楽しそうに語るハンター達は憧れでとても輝いて見えたんだ。

あれー?平和な一日を書いてから旅立たせようと思ったのにおかしいな?


村を飛び出す前からロイルの色ある思い出となる出来事は巻き起こっていきます。

それが当時はとても辛い事でも成長したらいい思いでとなることもありますよね?

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