ハンター
しんしんと雪が降り積もる音だけが辺りを支配するなかただひたすらに一点を見つめ獲物が現れるのを待ち続ける。自分の心臓が鼓動する音すら辺りに響きそうな静寂の中、ただただ待ち続ける。
どれくらい待ち続けた頃だろうか。今日はダメだったと登っていた木から降りようとしたときだった。
ほんの微かな音と共に草木が揺れ積もっていた雪が不意に落ちる音が響く。
…来た。
俺はゆっくりと手に持っていた弓に弦を張り矢をつがえる。
狙っていたポイントに現れたのは頭部に一本の角を持つ角ウサギ。真っ白な毛皮と角は目を凝らしてなお違和感しか感じさせないほど辺りに溶け込んでいた。
まだ…まだだ。
焦りそうになる自分を押さえつけゆっくりと弓を引く。
角ウサギは辺りをキョロキョロと見渡しゆっくり…ゆっくりとあるポイントに近づいていく。
理想のポイントにたどり着いた角ウサギは二度、三度と辺りを見渡した後に雪を掘り返していく。
まだ…。
目当ての物を見つけたのか最後に辺りを警戒しあちこちに向けていた耳が垂れ下がった瞬間、
今だ!
引いていた矢を放ち直ぐ様次の矢を引く。
「ギュ!?」
小さな悲鳴が角ウサギに矢が突き刺さった事を教えてくれる。
二本目の矢はすぐに放たずじっと角ウサギの動きを待つ。
………。
辺りに響き渡った角ウサギの鳴き声が幻聴にすら思うようになり再び雪の降り積もる音だけが響くようになった頃になってようやく弓を下ろす。
「ふぅー…」
小さく息を吐き力の入っていた身体をリラックスさせる。
木から飛び降り着地してなお弓の弦は外さず弓をつがえたまま辺りを見渡す。
先程の角ウサギの様に何度も辺りを見渡しながらゆっくりと角ウサギに近づく。
真っ白な雪と毛皮を赤く染めた角ウサギの胸に矢が一本突き刺さっていた。
「今日の夕飯は角ウサギのステーキとスープにしよう」
耳を持ち角ウサギを目線の高さまで持ち上げて頷く。
俺はやっていける。
…ハンターとして!