理想のカポー
「春のやわらかい日の光に照らされて、山吹色の髪の毛はハイライトとシャドーにキレイに塗り分けられていた」
「・・・保勇先輩、何ですかそのナレーション、てか、まだいらしてたんですか?」
別館から出ると、そこにちょうど山吹色のあのコが前を歩いていた。どうやら別館に入っているコースの学生らしい。
「俺たち、午後はフィギュア造形士コースだから」
「あ、松葉さんも。お疲れ様です」
「で、後輩くんは上京してあのコに一目惚れしたって訳かぁー、いやー思春期楽しんでるね~」
両頬に両手をあて、顔を赤らめるふりをする保勇先輩、絵になるなー、この人は。
「む~、リア充してる人には言われたくないですー」
「リア充?」
「リアル世界に恋人がいて、充実してるって意味です」
リア充という言葉はこの頃は、まだそこまでオタクの世界でも使われていなかった。
ましてや、今のようにファッション誌が、『リアル楽しんでる=リア充』といった表現で一般人が使うなんてことはありなかった。
「あはははは!何それおもしろーい!」
「んじゃ、俺たちはリア充だな。悪いな此花!」
「うわー、大人の余裕いやだー、あー」
「大人の余裕ったって、俺たち2人とお前は1つしか年齢かわんねぇーけどな」
「そ、そんな追い討ちを・・・」
「ゆずくん、いじめすぎ!後輩くん大丈夫、後輩くんもすぐリア充になれるから」
「あー保勇先輩ありがとうございます!保勇先輩は優しいです!松葉先輩にはもったいないです」
「だろ?羨ましいだろ!俺のカノジョは最強だからな」
「もうーゆずくんたら、後輩の前で恥ずかしい・・・」
「まどか、それは可愛く生まれた女の子の宿命だよ」
「えー何それ、宿命とか中2病だよ~」
「やっぱり、そうかな?我ながら決まったと思ったんだけどな」
「全然、決まってないよ~」
「リア充爆発しろー!!!」
「リア充爆発しろ?」
「おっ、それはいわゆるテンプレか?」
「えー、そうです。リア充が目の前でイチャつきはじめたら使うテンプレです」
「なるほど、面白いな」
「うんうん、これだと私たち何回も爆発させられちゃうね!」
「ははっ。そうだな。まどかは可愛いなぁ、まったく」
「ゆずくん、後輩くんの前で恥ずかしいよぉ」
「リア充、」
「ドカーン!」
「???どうしたんですか?保勇先輩」
「リア充爆発させられる前に、リア充自爆してみたの?」
「ははは、まどか面白すぎ!」
「はい、保勇先輩面白すぎます。ははははは」
この2人はほんとに素敵な先輩で、理想のカップルだと思った。