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アニメ学院で出会った女の子は中毒系女子でした。  作者: 神戸 生一本(かんべ きいっぽん)
第一章
2/13

過去はここに置いていこう。

高校3年の三学期、センター試験の会話で盛り上がる教室。


 この学校の生徒で就職する生徒はいない。


 もちろん、それは彼も例外ではない。


「で、お前は結局どんすんの?」


「そーねー」


 気のない返事を返しながら、それっぽく窓の外をながめる。


「いや、ひたってる場合じゃなくでしょ」


 ばれたかと内心思いながら、ポーカーフェイスを決めながら、答える。


「別にひったってねーよ。たださ、やっぱ大学にやりたいことないのに、大学行くべきなのかな?」


「何?お前なんかやりたいことあんの?」


「そーねー」


 ほんとはある。できれば堂々と言いたい。だが言えばセンター試験前のクラス中の注目を浴びるだろう。それは正直面倒だ。それに、こいつは友達でもないし。


「楽しいことないかなー」


 俺と話してはいるが、話していない。ただの暇潰しなのだろう。


 やはりこいつは学校以外で会わないはないただのクラスメート。正確には遊びに誘ったが、やんわりと断られた過去がある。


「さてと、んじゃあ、俺帰るわ」


「ういー」


 登校こそするが、この時期に授業があるわけでもない。2年のGWで投げ出した部活の後輩に呼ばれたのだ。卒業生として部の伝統の色紙の寄せ書きを渡したいと。


 嬉しさよりも申し訳なさで言葉がでなかった。絞り出すように礼は言ったが、伝わっただろうか。


「あと、何回登校すんのかな」


 この学校は標準服という名のいわゆる制服はあるが、各式典以外の日常は着用義務がないので、私服の生徒が多い。


「そのおかげで繁華街に出ても荒目立ちしないんだけどね」




 三宮に繰り出し、青いアニメショップに向かいながら、一人言を言うのも3年間の思い出かもしれない。


「卒業ねー」


「卒業したら、上京するし、少し感慨深い・・・こともないか」


 買いたいものがあるわけでもないので、ぐるっと店内を見て渡る。


「上京すれば、もっとあるよな」


「あれ?糀?」


「うん?」


「あーやっぱ、糀だ!久しぶり!元気かよ!?」


「おう!住吉か!久しぶりだな」


「ほんとな、お前何してんの?」


「いや、上京する前にじもとのアニメショップ寄っとこうと思って」


 アニメショップで声なんかかけられると思ってなかったから、びっくりした。


「なになに!お前も上京すんの?俺もするんだわー」


「そんなのか?どこに住むんだ?」


「俺は町田にある親戚んちに下宿すんだわ。家賃なし、朝夕飯付き」


「町田かー。それは、、、中々遠いな」


「そーゆーお前はどこ住むんだよ?」


「俺は杉並区」


「いーなー俺もそこが良い!」


「はは、でも家賃かかんないなら、そっちの方がいいだろ」


「まーな!」


 高校卒業とともに上京するメンツは大阪が近いこともあってそういない。友達のほとんどは関西やその周辺の大学や予備校に進学していた。




 都内での再会を期待し住吉と別れ、生田神社に参拝して帰ろうと、立ち寄ったそのとき、また声をかけられた。


「あれ、此花くん?」


「あ・・・」


 思わず、心臓がぐにゃんと鼓動をあげた。


「久しぶりじゃん、元気かよ」


 心を固め、心臓ぐにゃんを悟られないよう細心の注意を払い答えた。


「うん、元気だよ」


 この声、この表情。傷口に砂利をこすりつけているようだ。


「そりゃ、良かった」


「「・・・・・・」」


 同時に言葉に詰まる。


「あ、俺これからお参りだから・・・」


「じゃあ、私も一緒に行こうかな」


「じゃー・・・行くか」


 なんなんだろう、この状況は。昔フラれた相手と上京前に参拝って。


「んじゃあな、また」


「此花くん」


「ん?」


「・・・ううん、何でもない」


「そ、そう?ならまた、元気で」


 上京前の三宮での思い出は、不思議な感覚を残して締め括った。

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