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Following the other world -光無き者-  作者: クロブチンC
春の始まりの暖かさ
3/19

門と決意

ハルニアの街に入ります。

 うっそうとした木々に隙間ができはじめ、差し込む光が強くなってきた。

それと同時に泥と水たまりでできていたような道も石で舗装されるようになってきた。

そして周りにあった木々が見えなくなると同時にザットが叫んだ。


「よぉ、ハルニアが見えてきたぜ。」


思わず後ろを振り返り、その街を見る。

この場所はどうやら少し小高いところにあったようで、街の全貌を見ることが出来た。


「おぉ…!」


そんなため息が自然に出てしまった。

それほどにその街は美しかった。


街の全部が壁に囲われ、壁の中にたくさんの家が建っている。

中央通りと思われる場所にはカラフルな垂れ幕がたくさん下がっているのがこんなに遠くからでも見える。

そして中央通りと思われる場所を目で追っていくとだんだんと垂れ幕は少なくなり、そのかわり大きな像が並んでいた。

さらにその先に目をやると_______


「あれがハルニア城だ。どうだ、美しいだろう。」


バルバスが笑い半分に言ってきた。

しかしそれは決して冗談ではなかった。


今まで子ども向けの物語や中世を模した活劇の中でしか見ることの無かった荘厳な城が、城下町を見下ろし、威圧しているかのように建っていた。


「よし、ラッキーは近くの馬屋に預けて、早速入るとするか。」


ベラトルモス、もといラッキーを馬屋につなげ、大きな壁の元へと歩いて行く。

訳の分からない状況におかれておきながら、実際かなりワクワクしてきた。

この世界の街はどんなのだろうか、どんな暮らしをしているのか、あの城の中身はどうなっているのか。

知りたくてたまらなくなってきた。


「あそこが城下町への門だ。」


大きな壁に大きな門、出る者も入る者もその門をくぐって入っている。

俺もあの門をくぐることができるのだろうか。


「おい、止まれ!」


ん、なんだ。兵士みたいな人に呼び止められたぞ。


「どうしたんです、衛兵さん。俺たちは何もしてませんよ。」


バルバスが慣れた様子で兵士の対応をする。

…いや、兵士に声をかけられているのに慣れているっておかしくないか?


「いや、そうじゃないんだ、旅の人。知っていると思うが、現在我がハルニアはあのヒョウセッツと交戦状態にある。ヒョウセッツのスパイが来るかもしれないんだ。悪いが出身地と出身表を見せてくれないか?」


…この世界でも戦争というのはおきているのか。どうしてなんだろうか、領土問題とかそんなんだろうか。

…ん?出身地と出身表?


「俺の名はザット、サントアキッド出身だ。出身表もここにある。」


まずいぞ、通るためには出身地と書類を渡さないといけないらしい。

出身地は日本ですなんていっても、この世界では信じてもらえそうにないし、書類が無いと分かると何をされるかどうか分かったもんじゃ無いぞ…

兵士がザットさんの書類を確認しているうちに…


「バルバスさん… バルバスさん…!」


「おっ、名前を呼んでくれたのは初めてだな。どうした、何か困ったことでもあったか?」


「出身地ってどこのことを言えばいいんですか…? それに書類って…。」


バルバスが「心底うっかりしてた」という顔になる。


「!! …心底うっかりしてた… まずいな、この状況で出身表がないとなったら何されるか分からん…。 良くて戦争が終わるまで投獄、悪くてその場で処刑って感じか…?」


投獄、処刑。恐ろしい単語がずらずらと並ぶ。


「ど、どうすればいいんですか…!」


「分かった…、 出身地は俺らと同じ、サントアキッドって名乗っておいてくれ。 書類は…こっちでなんとかする。」


「よし、次! エルフの男!」


「俺の番だ…、最後はお前だろうから、心を落ち着かせといてくれ。」


「は、はい…」


バルバスもザットと同じような返答をして、書類を渡した。


「ふむ、異常なし。 よし、最後はもう一人の人間だ!」


自分の番だ。


「は、はい!」


「出身地と出身表を。」


「えと、出身はサントアキッド…で、出身…表…は。」


「どうした、出身表を取り出さないか。」


まずい、怪しまれてる。 だめか…?


「あーっと、悪い! 衛兵さん! こいつ道中にさ、狼の群れに襲われちゃって! 必死で逃げているうちに落としちゃったみたいでさ!」


バルバスが助け船を出してくれた。


「なんだって? 出身表を落とした? ならば街に入れることはできないな。 さあ、お前だけでも帰れ。」


「いいじゃないの衛兵さん! 中でちゃーんと手続きしてさ! 作り直すから! ね?出身表。」


「いいや、駄目だ。さてはお前らヒョウセッツからのスパイだな! 切り捨ててやる!」


兵士が背負っている剣に手をかける。

だめだ、処刑される。


「まま、衛兵さん。 困ったときは、お互い様だよね? ね?」


バルバスがそういって兵士に小さな袋を押しつける。


「おい、何だこれは! こんなもの…」


小さな袋を持った兵士の表情が一変した。


「……ようこそ! 旅のお方! ここはヘルニアの街だ! ここのブラッドグレープワインと魚料理は世界一ウマいぞ! さあさ、入って!」


兵士はとても柔らかい腰つきになり、門を開け、俺らを街に入れてくれた。


「…バルバスさん。 いったい何をしたんですか?」


「なあに、兵士ってのは意外と切り詰めて生活してるって事を思い出してな。」


どういうことだろうか。

さきに街に入っていったザットが駆け寄ってきた。


「そういえば、シュンは出身表をもっていなかったんじゃないのか?」


「ああ、それに関しては大丈夫。 衛兵さんとじっくりおはなしして通してもらった。」


ザットが目頭を押さえる。


「…どのくらいだ?」


「金貨50くらいってところか。」


「お前…、貯めていた分ほとんど全部じゃないか…。」


「まあまあいいじゃないか! 先行投資だ、トーシ。」


「今日ぐらいは贅沢したいと思っていたんだけどな…。」


もしかしてさっきの袋には賄賂わいろが入っていたのか…。


…しかし、この街。 中で見てみるとやっぱりすごく美しいな。

街のほとんどが左右対称のつくりになっている、石レンガで作られた家々が互いを邪魔すること無く、しかし無駄なスペースを作ること無く、最初からそこにあったかのようにぴっちりと並んでいる。

奥には外から見たカラフルな垂れ幕が見える。どうやら市場があるようだ。

海風に乗る潮のにおいと、樽に入れられ運ばれる魚から、ここが港町だということが分かる。

市場から漂ってくる料理のにおいが鼻の奥を刺激して、困惑によって押し込まれていた空腹感を復活させてくれた。

一歩足を踏み入れただけで、ここがとても良い街だと分かる。


「__見つけたわよ! 光無き者とその側近の悪魔たち!」


高く、かわいらしい声が耳に入る。

光無き者、俺のことか? でも悪魔たちって、誰の?

振り返る。


2人の少女と全身鎧に覆われているでかい奴の3人がこちらを睨み付けていた。


「お嬢さんたち… いったい何なんだい? 初めて会った人を悪魔扱いはよくないと思うが…。」


ザットが前に出る。


「ふん! 神様のお告げをうけたのはアンタたちだけじゃ無いのよ! その光無き者、アタシたちに渡してもらうわ!」


「ロ、ロザリアちゃん… ここ門の前だよ… 人も衛兵さんもいっぱいいるし…、あんまりここでは騒がない方がいいんじゃないかなぁ…って私は思うんだけど…。」


「ウユ! チャンスは今しか無いのよ! ダンテも! 剣を抜いて!」


きゃんきゃんと騒いでいるエメラルド色の長髪をもった少女はロザリアというらしい。

あまり人の目が気にならないタイプのようだ。


それに対してウユと呼ばれた少女は… 耳がとがっている、エルフのようだ。

彼女はかなり常識人らしい。

連れがきゃんきゃんと騒いで、周りの人々にジロジロと見られていることに、羞恥心で耳まで真っ赤になている。


そしてダンテと呼ばれた鎧の奴。

真っ黒な鎧で肌をさらしている部分が一切無い。顔の1パーツすら見ることができない。


「こうなりゃ力尽くでも光無き者を連れて行くわ!」


ロザリアが杖を取り出し、杖の先に光を集める。


「おおっと、俺らとやる気かい? まあ君たちに勝てるとは思えないから、いつでもかかってくればいーんじゃない?」


バルバスが煽る、マジでか。


「ムキー! 言ったわね! 後悔してもしきれないほどボロッボロにしてやるわ!」


さらに杖先に強い光が集まって…


「やめろ! お前ら!」


ロザリアがビクッと反応して声のほうを向く。

パトロール中…の兵士が駆け寄ってきた。


「公衆の面前で武器を使った喧嘩とはいい度胸だな! ああ!? 続けてもいいが、続けたらハルニアの名において、治安維持のため逮捕、投獄するぞ!」


すさまじい迫力だ…

あっというまにあのロザリアが恐縮してしまった。


「いやー、衛兵さん。 来てくれて良かったー! 俺ら襲われてたんすよー、いやー来てくれなかったらどうなっていたことか。」


バルバスが追い打ちをかける。


「なっ…! アンタだってさっき武器だそうと…」


「うるさい! 今武器を出しているのはお前だけだ! 私の目にはお前が善良な一般市民に武器を向けているようにしか見えんな!」


「そ、それは…!」


「取り調べだけで済ませてやるから来い!」


「ちょっ…! 光無き者を…! ウユちゃーん! ダンテー! 助けてええ!」


少女が兵士に引きずられていく。


「ロ、ロザリアちゃん! ダンテさん、行こ!」


そう言ってもう一人の少女と鎧も行ってしまった。


「しっかし驚いたな、俺ら以外にもエシネジレン様からお告げをもらったものがいたなんてな。」


ザットが腕をくむ。


「えっと、どうして彼女らは俺を奪おうとしたんでしょうか…。」


「…エシネジレン様はお告げの時、お前を殺さずに持ってきてくれれば、どんな願いでも叶えるとおっしゃったんだ。」


「ははあ、それで…。」


…この人たちもその願い目当てに俺の護衛をしているのだろうか。


「ま、俺らはそんな、願いを叶えるなんてことに興味は無いけどな。」


え、そうなのか。 それじゃあ…


「俺はこのレウザエウが大好きなんだ。 だから滅んでほしくない。 だからレウザエウのために、お前を護衛しているんだ。」


「でも、俺一人のためだけに、さっきのような奴らがまた来て戦いになるかもしれないし、なけなしのお金を使って贅沢できないんですよ…?」


「んなこたあいいんだよ。 贅沢は生きていりゃいつでもできるし、戦いをすることだってそんなに嫌なことじゃない…  

この土地が滅んでしまうこと、俺の大好きなレウザエウが無くなってしまうことがなにより嫌なんだ、俺らは。」


__この人たちは…


「ザットー! 市場で盗賊たちの武器とか鎧を売ることができたぞ! これで今日の飯代と宿代は大丈夫だ!」


「おお、でかしたぞバルバス!」


__この人たちは本当にこの故郷が大好きなんだ…

この人たちになら、俺はついていって大丈夫だと思う。

そして俺の、俺の故郷に帰れるんじゃないだろうか。


「…シュン!」


「…は、はい!」


「飯食いに行くぞ!」


「…はいっ!」

挿絵とかも描いてみたいなーって思います。

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