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Following the other world -光無き者-  作者: クロブチンC
春の始まりの暖かさ
2/19

第一章 神と旅立ち

このくらいのペースで書きます。

帝国歴4年(双陽歴3454年) 木枯らしの月 29日

フリグス地方東部 森


「よかった、致命傷にはなってみたいだな。」

「結構ぴんぴんしてるぜ、事前に守護をかけていたのかもしれない。」


ザック、バルバスと呼ばれていた二人が俺に歩み寄ってくる。

どうやら心配してくれているらしいが、俺に心配してくれるという喜びを感じる余裕はなかった。

むしろ、逆だ。

一人は剣で人を殺している。首を、バッサリ撥ねて。

そうしてもう一人は魔法を使って人を爆殺しているのだ。


そいつらが近づいてきて喜べるわけがなかった。


「うわあああぁぁっ!なんなんですか、あんたらは! お、俺のことも殺す気なのか!」


…恐怖が頭の中をぐるぐると回ってちゃんとした言葉遣いも出来なくなる。


俺の叫びを聞いた二人はすこし驚いた顔を見せると二人で苦笑して見せた。

「ハハハ、殺す? 何言ってるんだ。 俺らはお前を殺させないために来たんだ。」

バルバスがそう言う。


何だって? 俺を、殺させない? 何で、何から、誰がそんな。

また頭の中が疑問でいっぱいになる。


「なんだ、お前。何も知らないのか?」


バルバスはまだ笑いを含みながらこちらに言ってきた。

まだ笑っているバルバスに苛立ちを覚え、知るわけないだろ、と言おうとしたとき。



目の前に急に人が現れた。



また、わけのわからないことだ。

この世界で、魔法はなんでもありなのか。考えることすら無意味に思えてきた。


「お前は、我がこの次元に呼び出した。」


…何だって?今、何て言った?

この、急に現れた、…ローブを羽織っていて顔は分からないが、男は。

自分が、俺をこの世界に呼んだと言ったのか?


「我は知識の神、エシネジレン。光を持たぬ者、光無き者よ。」


光無き者…? 俺のことなのか…? どういう意味だ…?


「お前はこの世界を救う勇者だ、この世界は今まさに、危機が迫っている。お前はこの危機を打ち破る運命にある。ウォヌスの碑を訪れよ。」


勇者、俺が? 危機?


「それと…そうだな、この世界の知識を集めよ。知識の神からの命である。その目でこの世界を知り、碑に訪れたとき、我に知識を渡すのだ。そうすれば、お前を勇者に仕立て上げてやろう。」


ふと気がついて横に目をやると、ザットとバルバスが跪き、ローブの男に祈りのようなポーズをしていた。


「お前たちも、この光無き者が死なぬよう、気をつけるのだぞ。」


「心得ております、知識の神、エシネジレン様。」


「では、さらばだ。」


そういうと男はすうっと透き通ったかと思うと、そのまま消えてしまった。


…自分がどうしてこの世界にきてしまったのか理解できたが、理解できない。

どうして俺なんだ。というより、俺にこの世界がどうこうっていう力はもってないぞ。

こういう事を頼むなら、もっと適任がいたんじゃないのか?

プロレスラーとか、剣術の達人とか。どうして俺なんだ?


「お前は神に選ばれたんだ、素晴らしい名誉じゃないか。」


不意に肩をたたかれて驚く。ザットがにこやかな様子でこちらを見ていた。


「まずは自己紹介をしないといけないな、俺の名はザット、人間だ。あのエシネジレン様の命を受けて、お前を護ることになった。」


そういうと自信ありげに腰に下げている剣を抜き、掲げて見せた。

この人が味方なら、かなり心強いかもしれない。


「よう、俺はバルバスだ。まあ、ちょっとした考古学を学んでいるエルフさ。分からないことがあったら是非教えてくれ。エシネジレン様も知識を欲していたようだし、俺のため込んだ知識を分けてやってもいいんだぜ。」


エルフ、と言った。たしかに彼の鼻は人間に比べるととんがっていて、耳もすこしばかり長いようだ。

しかし、肌が白っぽいだとか、羽があるだとか、美男子であるだとかの特徴は一切無く、知らなければ人間と間違えそうだ。


「是非あんたの名前を教えてくれ。これから旅をすることになる。」


自己紹介。しなければならないか。


「えっと、俺…えと、僕の名前はシュンです。人間…です。」


そう言ったところでいきなり沸いてでたように質問が頭の中を埋め尽くした。

分からないことだらけでは勇者になるどころか生きることも難しい。

そもそもまだ勇者になるから連れられたと言うこと自体、納得できていない。

とにかく今自分が置かれている状況をしっかりと把握しなければ。


「あの、ここはどこなんですか? さっきの男はだれなんですか? それに、さっきバルバスさんが使っていた、魔法…はなんなんですか?」


「おっと、早速質問で溢れているな。 …一つずつ、答えていくとしようか。」


ザットが剣を鞘にしまい、説明を始めた。


__ここはレウザエウ大国、ああそうか、まずレウザエウよりも広いところから説明しないといけないんだな、異次元からきたんだものな。

エシーフって聞いたことは? …ないか。

俺らはこの次元のことをエシーフと名付けている。そしてエシーフの中心にあるこの星、スレアで俺たちは暮らしているんだ。

そしてスレアの中、最大の大陸がこのエタルフ大陸だ。

ん?ユーラシアってのは聞いたことないが、まぁそっちの世界ではそうなんだろう。

そしてエタルフ大陸の中心、レトニワール帝国国家の真北にレウザエウ大国がある。想像はできているか?

レウザエウ大国の南西、フリグス地方に俺らはこうして話し込んでいるんだ。


…全く知らない単語だけで説明をされて、すぐに理解できる人間はどれくらいいるだろうか。俺なんて小学校の頃、日本の都道府県を覚えるだけでもあんなに苦労したのに。

だが、泣きを言っている場合ではない。この世界で生きるためにも、覚えなければならない。


…他の国のことは覚えられそうにないから今は聞かないでおこう。


ザットは語り終えると、少し後ろに下がった。

「そうだ、ベラトルモスをつなげたままだった。バルバス、悪いが残りの質問に答えてやってくれないか。 そういう質問はお前の方が得意だろ。」

そう言って奥の方へ走って行ってしまった。


「まったく、俺の返事を聞く前に飛び出しやがって、そろそろ悪い癖だと言ってやるべきかな。」


バルバスが頭をかきながら俺につぶやく。


「まぁ、ベラトルモスを持ってくるならそんな時間はかからんだろう。よし、じゃあエシネジレン様と、お前の言っている魔法…いや、“光”について教えてやろう」


__エシネジレン様は神だ。 怪訝な顔だな。なに、神があんな風になれなれしく下界に降りてくるはずがないって? 

それは間違いだぜ、確かにそう滅多に出てくることは無いが、神様は結構俺らに会うために現れるぜ。 きっと暇つぶしなんだろうな。

話はどこまで…ってそうだ、エシネジレン様は特に知識、言語、勉学を司る神様なんだ。学生がよく彼を信仰してるな。 神様は他にもいるぜ? 生と死の神エヴィラ、 感情の神エムリス、あ、最高神の… 何、覚えられない? まあいい、そのうち教えるよ。

それで… ああ、“光”のことか。 そっちの世界では何て呼んでるんだ? ええ?そもそもそんな芸当すらできない、だって? おいおいまじかよ、赤ん坊でもできるぞ。なんで出来ないんだ…。分かんない、ってそっちの方が俺には分からんね。


そこまで話されたところで、おーいと言う声が聞こえた。

振り向くとザットが大きな動物に乗ってこっちに向かっていた。


…いや待て、あれは動物なのか? どっちかって言うと虫だぞあれは。

なんだあの生き物は? 


ザットがこちらに到着し、その生物から降りる。


「ラッキーのやつ、もう少しでつないである杭をひっこぬくところだった。ベラトルモスにしてはかなり元気なんだな、やっぱり。」


ものめずらしそうにその生物を見ていると、ザットが気づいたようだ。


「どうだ? ラッキーはかわいいだろう、こんな小さいころから育てたんだ。いい相棒だよ。」


そう言って手のひらを広げる。

小さい時は手のひらサイズの生き物が、大人を何人も乗せられるような生き物に成長できるのだろうか。いや、それよりも


「なんですか…この生き物は」


ベラトルモス、あるいはラッキーと呼ばれた生き物は、明らかにこの世のものの姿では無かった。


末端にほんのりと緑色がかかっている、茶色のゴキブリのような殻から、もさもさと毛が生えている6本の足、地面に引きずっている尾のようなもの、長く伸びる2本の触覚。

この特徴だけで言えばただの虫であるが、問題はその毛の生えた足がまるでタコの足のように自由自在にうごめいていることだった。それに、でかい。大人数人を乗せることなど容易そうだ。


…しかし本当に気持ち悪いな、この足… さっきから見ているだけで鳥肌が止まらない…


ザットはこの反応にひどく驚いたようだった。


「なんだって!ベラトルモスを知らない? そんなはずはないだろう!」


まるで冗談か何かのように聞こえたのだろう。しかし


「ザット、本当なのかもしれねえぜ。こいつのいた世界では、“光”の概念すら無かったんだ。俺らの常識はたぶん、通用しないと思う。」


バルバスがザットに言った。


「はい、その、光というやつも、ベラトルモスのことも、何にも分かりません…」


「なんてこった… 異次元から来たってのは思ったよりもかなり面倒なことなんだな…」


本当にそうだ。あっちの常識が分からないのだから、こっちも相手の常識がさっぱり分からないかもしれない。


「まあ、そこんところはじっくりと教えてやろうぜ。まずはハルニアに戻ろう!」


バルバスが明るく言う。


「そうだな、まずはハルニアで計画を立てよう。」


ザットもそれに同意したようだ。


「よし、じゃあラッキーに乗ってくれ。運転は俺がする、ザット後ろに。」

「当たり前だ、行きは俺が操縦したんだぞ。」


二人はひょいひょいとベラトルモスの上に上っていった。

俺は…すごくこいつの足が気持ち悪いからあんまり触りたくないんだよな…

と考えていたらザットに持ち上げられ、背中の甲殻の上にのせられた。

広い背中の上に、簡易的な椅子がくくりつけられてあって、これに座ればいいだろうと言うことであった。


「よーし、ラッキー。いい子だ、いくぞ」


バルバスが手綱をひくとベラトルモスは歩き出した。

まるで馬のような感じだが、6本の軟体動物のような足を器用にうごかしている為か、揺れはほとんど無い。乗り心地自体はとても良い物だ。




後ろに動いていく木々を見ながらふっと考えた。

俺はこれからどうなるんだろう。俺は本当に勇者なんだろうか、俺は家に帰れるのだろうか。夢ならもう十分だから覚めても良いと思うんだが…


そう考えても覚める気配は一向に無く、木々のこすれる音と頬をなでる風が、余計にこれは夢ではないという現実を教えているようだった。


今後のためにも、是非評価をお願いします。

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