沈みゆく昼
「…ここも、満杯?」
「申し訳ありませんお客様、ついさきほど部屋が埋まりまして…」
「ロ、ロザリアちゃん…ここで最後の宿だよ、どこも空いてないよ…」
「なんでこんな宿がいっぱいなのよ…!」
「うう…今度からは街についたら、まずは宿の確保をしたほうがいいなってわたしは思うな…」
「ううううなんでせっかく街についたのに野宿しないといけないのよ!あのバカ共も全然見つからないし!どっか寄り道してんじゃないわよね!?」
「あ、あそこの木の下とかよさげだよ。」
「…もう寝る!」
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1つ目の太陽が沈んだ。辺りは薄暗くなったようには見える。体感だと、2つめの太陽が沈むのは1つめが沈んでから四十分後くらいだ。
「今日はここでキャンプしたほうがいいかもしれないな。シュン、テント下すの手伝ってくれ。」
「あ、はい!」
ラッキーの鞍に乗るのももう慣れたものである、こいつの体下には剛毛が生えていて、そこは足をかけても形が崩れないほど強靭なのだ。片足を剛毛にかけ、もう片足を振り上げ鞍の上に置き、そのまま滑り込むようにして乗り込む。最初こそうまくはできなかったが、今はもう大丈夫だ。
なんか俺、これ続けてたらいつか又割できるようになるんじゃないかな?
「よいしょ…っと。」
鞍の脇にくくりつけてあるテントと、何本かの棒を地面へと落とす。
つぎはぎだらけのそのテントは、彼らが旅慣れていることを表していた。
「…おまえも手伝えよ。」
ザットが棒を地面につきたてながらナディアに文句を言う。
「いやーおさかなちゃんがかわいくてねー。」
ナディアはどこからつかまえたのか、バッタのような虫を池に投げ入れていた。
池の主は投げ入れられた端から虫を食べ続けている。
「よしっと。」
棒を何本か立て、それぞれを縛ると、テントの骨組みの完成だ。
あとはテントを上からかぶせ、今日の俺たちの宿が姿を見せた。
「…今はリベットファルじゃなかったのか?」
「お、バルバス。」
バルバスが小さなあくびをしながらラッキーから降りてきた。
「どこだここ…道に迷ったのか?」
訝しげにバルバスが辺りを見渡す。
ザットとナディアはそれをみて少し笑った。
「違う違う、私が見つけた面白いものを皆に見てもらうためにここまできたの。」
「面白いもの?」
「フフ、いうなれば、満月の如き真円の池と、その守護者ってとこかしら?」
バルバスがさらに怪訝な顔になる。
「なんだそりゃ…お?」
バルバスが池にちかづき、中をのぞくととても驚いた顔になる。
「おお…ナディアの言ったこともあながち間違いじゃないな!」
「へ?」
「どうしたバルバス、そのでけえ魚のこと知ってるのか?」
「お前ら知らないのか!?金月魚だぞ!?」
「金月魚…あーあれか!へーこいつが…金月魚!?」
ザットとナディアは少し考えたあと、声をあげた。
それに金月魚は驚いたらしく、岸からすこし離れた。
「バルバスっ!今日何の日だ!?」
「それがだな…幸運なことに満月の日だ!」
「やー!やったやった!」
全員が大はしゃぎしている。
なんだ、この魚、なにするんだ?
「時間もちょうどいい!おいシュン!見逃すなよ!」
「はあ…」
ふと空をみると、2つめの太陽が今まさに、沈むところだった。
ゆっくりと西にある光の線は幅が狭くなり、そして…
夜が、訪れた。




