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Following the other world -光無き者-  作者: クロブチンC
やがて来る凍てつき
10/19

エヴィラの勇者

「ついたぞ、聖堂だ。」


激しい光を何度か放ち、襲いかかってくる人々を回避した俺たちは、昼に<奇跡>が行われた聖堂に足を運んだ。


「あの司祭に聞いてみるのが、一番早いだろうな。」


ザットが前に出る、その声には底知れない怒りが含まれていた。

ザットが聖堂の扉を蹴破り、中へと入る。


「エヴィラの司祭! 出てこい!」


ザットが声を荒げる。

しかしその声は、聖堂の中に響いて消えるだけだった。


すると、聖堂内のベンチの陰から誰かがゆっくりと歩いてきた。

あの人は確か… 司祭の隣にいた、ヴェローナって名前のエルフだったな。

手にナイフを持って、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

俺たちを攻撃しようとしているんだろうか?


「誰もいないようだな、奥の部屋を調べてみよう。」


バルバスが言う。

なんだって? 誰もいない?

ここにヴェローナが歩いてきているじゃないか。

この人に話は聞かないのか?


「バルバスさん、あの、ヴェローナって人に話を聞かないんですか?」


「ん、ああ、そうもしたいんだが、いないんじゃできないだろう。」


「いるじゃないですか、そこに。」


ヴェローナを指さす。

ヴェローナとバルバスは互いに驚いた後、少し固まった。

先に行動したのはバルバスだった。


「“透明化インビジブル”だな!」


バルバスがヴェローナのいる方向に炎の球を生成し、撃つ。

ヴェローナはそれを、輝きの壁を作り出して、防いだ。


「見えた!」


いつのまにかザットがヴェローナの後ろに回っていた。

ヴェローナに手を当て、力を入れて、体勢を崩させたかとおもうと、一気にその身体を投げ飛ばした。

地面に叩きつけられたヴェローナをバルバスがおさえる。


「なかなか姑息な手を使うじゃないか!?」


「アキュラス様の邪魔はさせない!」


押さえられているヴェローナが叫び、彼女の体が輝きに包まれる。


「まずいっ!」


バルバスが押さえるのをやめ、こちらに飛び出す。

瞬間、ヴェローナを覆っていた輝きが爆発し、周りにあった聖堂のベンチを吹き飛ばした。

吹き飛んだベンチの欠片が顔に当たり、思わず顔を抑える。

顔を抑えるのをやめてみると、彼女は手を合わせ、輝きを集めていた。


「シュン、怖いとは思うが、あいつの攻撃を全部受け止めきれるか?」


ザットがひそりと耳打ちをしてくる。


「分かりました…、さっきの攻撃とかも全部…。」


「ああ、“光”だ、あれらは全部光の攻撃だ、つまりお前には効かない。」


戦闘に参加する。

それは自分の命をさらけ出すということだった。

もし何か間違いが起こって、俺の体質が急に消えてしまったらどうしよう。

輝きは俺を貫いて、俺の心臓がはじけてしまうのではないか。

恐怖、

頭の中をそれが支配する。

でも、俺はやらなきゃならないだろう。

これまで守ってもらってばっかりだったんだ。

勇者と呼ばれるなら、やってやらなきゃならない!


「やってみます…!」


「頼んだぞ! エシネジレンの知識の加護を!」


一歩、また一歩と前に踏み出す。

皆を守るために。

頭の中が真っ白だ、もしかしたら、という恐怖が俺を暗い世界に引きずり込もうとしている。

だめだ、歩け。

前に進め。


「まずはあなたからよ! 邪魔はさせない!」


彼女の手から青白い閃光が放たれる。

雷となって荒れ狂う閃光が、まっすぐに自分に向かう。

スローモーションとなってその光景が目に入ってきている。


目の前が白に染まる。


しかし、やはり俺は痛みどころか、微弱な風も感じることもなかった。


(やっぱり大丈夫だ…!)


ヴェローナは驚きの表情を見せる。


「なら…!」


再びヴェローナの手のひらの輝きが集まる。

それは輝きのまま凝縮され、光の粒になった。

彼女はそれを打ち出す。


「邪魔はさせない…!」


光の粒から感じたのは、ハルニアの酒場前で男から受けたような、

純粋な圧力、ただ、前回のよりも強く、重い。

しかしそれがぶつかっても、俺は何も感じることはなかった。


「どうしてっ!?」


ヴェローナは再度手を合わせる。


「…うっ!」


しかし、輝きが集まることはなかった。


「“光”が切れたな。」


そういえば前にバルバスが言っていたな。

光は昼間に体の中にため込むもので、夜間にすべて使い切ってしまうと、もう太陽が出るまでは光を使うことができない、と。


「“爆発エクスプロージョン”で随分と使ったみたいだな!」


ザットが走ってくる。


「うぅ…! まだっ…!」


ヴェローナが傍らに落ちているベンチの欠片を拾い、振り上げる。

ザットがヴェローナの前についた。

彼女は欠片を両手でがっちりと掴み、ザットに向けて振り下ろした。

ザットは剣を抜き、欠片を弾き飛ばすとそのままヴェローナを、肩からバッサリと、斜めに切り伏せた。


「アキュラス…さま…。」


ヴェローナが倒れる。


彼女から広がり始めた赤い血が、俺が抑え込んでいた恐怖を思い起こさせた。


「わっ…、ひっ!」


おもわず腰を抜かしてしまい、尻もちをつく。


「大丈夫か…シュン。」


ザットが手を伸ばしてくれた。

それに掴まって立ち上がる。


「あ、ありがとうござ…」


そこまで言いかけたとき、聖堂の奥の扉が開いた。

俺たちは開いた扉を向く。

するとそこには、昼間<奇跡>を起こした司祭がにこにこと笑いながら立っていた。


「ヴェローナ… 負けたか、残念だ。」


司祭、アキュラスが倒れているヴェローナの側に行く。

そして彼女の体に手をかざした。

一瞬、ヴェローナの体が輝いたかと思うと、切り傷がみるみるうちに塞がっていった。


「街をこんなことにした後でも、慈悲は持ってるんだな。」


バルバスが皮肉を言う。


「勘違いするな、ワタクシはエヴィラの司祭だ、人の命を助けるのが役目だ。」


「じゃあどうして街をこんなにした! 人々の命を奪うことをした!」


ザットが声を荒げて問いかける。


「それは、この世界を救うためだ、この街の人間には犠牲になってもらうほかないのだ。」


「…? どういうことだ!?」


そこまで言ったとき、聖堂の入口の扉が勢いよく開いた。

皆が振り返る。


「やっぱりここにいたわね! タコ坊主!」


「ロザリアちゃん、あの人も多分名前があるよ… あんまりそういうこと言うのはよくないんじゃないかなあって…。」


「戦士ギルドの者だ! この少女たちの報告を受けてきた! 司祭アキュラス! どうやらこの騒動の詳細を知っているようだな! おとなしく衛兵のもとへと来てもらおう! さもなくばこの場で切り伏せる!」


屈強な男が腰の剣を抜いて、歩み寄ってくる。

アキュラスはそれを見て、含み笑いをした。


「随分と人が集まったようだな、そんなにワタクシを止めたいか、世界を救わんとするこのワタクシを。」


アキュラスがその腕を上に掲げる。


「ワタクシはここで止められるわけにはいかない、全てはエヴィラの名のもとに!」


瞬間、彼の手のひらから黒い靄が噴き出す。

遺体の中に入り込み、魂を与えたときに使っていたものと同じ、黒い靄だ。

黒い靄は曲がりくねりながら天井へと昇っていき、

天井に着いた瞬間、爆散した。


「お前ら全員、卑しく潰れるがいい!」


聖堂の天井にヒビが入る。

ヒビの隙間に黒い靄が入り込み、さらにヒビを大きくしていく。

数秒もしないうちに、聖堂全体にヒビが入った。


「まずい! 頭を守れ!」


ザットが叫ぶ。

次の瞬間、聖堂は音を立てて崩れ始めていた。

大量に瓦礫が落ちてくる。

辺りで悲鳴が聞こえ始めた。

皆、大丈夫なのだろうか。

と、自分の上に大きな瓦礫が落ちてきているのに気づく。

それに気づいてから対処するにはあまりに遅く、そのまま俺の視界は黒に染まった。




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