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悪の組織は迷走中

その頃、悪の組織の頭領は考えていた。敵であるヒーロー達を倒すにはどうすれば良いのかと。


ヒーロー達を倒すべく今は怪人を増やし、弱らせる作戦を行っている。

ヒーロー達が普通の生活をしている情報は掴んでいる。どこでどのような生活をしているのかも把握済みだ。

しかし、ヒーローでないときに直接攻撃するような不躾な真似はしない。悪役の世界では常識的なことだ。





「奴ら、なかなか疲弊しないな」





難しい顔で考え込む頭領に側にいた幹部達は小声で話す。





「頭領様まだ考えてますわね」

「もう三時間になるんじゃないかな?」

「不味い!このままでは倒れてしまう!」

「いや、そこまで弱くはないだろ」





幹部の名は上から、霞草、葵、猫柳、山茶花。

全て頭領が直々命名したものである。


小声で話しているつもりの幹部達の話は全て頭領にしっかり聞こえていた。

頭領のこめかみに欠陥が浮き出る。





「おい!聞こえているぞ!」





叱咤の声に急いで謝罪をする幹部達。しかし、頭領の機嫌が良くなることはなく、部屋から追い出されてしまった。


幹部を部屋から追い出した後も頭領は悩み続ける。しかし、どうにも思いつかない。ついには部屋を歩き回りながら考える始末。


ヒーロー達を完膚なきまで叩きのめし、自分達に逆らわないようにする方法。

そんな方法を模索している頭領の目にあるものが目に入る。それはこんなところにあるはずのないもの。不思議に思いそれを拾った頭領の頭に稲妻が走った。





「そうか!この方法なら奴らを無力化することができる!!こんな簡単なことに気がつかなかったとは!!ははっははははは!!!」





高笑いをする頭領。その扉を挟んで廊下側では幹部達がはらはらしながら待機をしているのだった。












「とうとう決まったぞ!!」





次の日、笑顔で何かの書類を持つ頭領に、幹部達の視線は集まる。頭領は徹夜で考えいたのか、目は赤く充血し、下には濃い隈ができていた。そんな頭領に幹部達は一斉に声をかける。




「まあ、頭領様!酷い隈ですわ!まさか眠ってらってしゃらないのですか!?」

「大丈夫か?気分は悪くないか?」

「おい!医者だ!医者をすぐに呼ぶんだ!!」

「辛いことがあったらいつでも僕達に相談していいんだよ」





過保護気味な幹部達に顔をひきつらせる頭領。

前々から過保護だとは思っていいたが、まさかここまでとは思っていなかったらしい。

その内一人で買い物に行くのも駄目と言い出すんじゃないかと内心恐々しながら頭領は話す。





「大丈夫だ、落ち着け、それよりもヒーロー達を倒す良い案が浮かんだのだ!」





自信満々に言う頭領に嫌な予感がする幹部達。

彼らにとって頭領は敬愛すべき方であるが、頭が少々残念なため突拍子もない作戦を思いつくことがあるのだ。


幹部達は目配せをし合う。頭領は期待に満ちた目で見ている、流すという選択肢はない。

誰が聞くか視線だけで押し付けあって最終的に負けた山茶花が聞く。





「で、どんな作戦を思いついたんだ?」





山茶花のその言葉に待ってましたとばかりに頭領は幹部達に書類を渡した。

そこには彼らが目を疑うような内容が記されていた。


全員が書類に目を通したことを確認し、頭領は高らかにいい放つ。





「これが次の『ヒーロー達をメロメロにして私達に手出しさせない作戦』だ!」





頭領の頭は彼らが想像していたものよりも残念なものだった。ネーミングセンスの酷さはともかく、内容は嫌でも触れなければいけないものだった。


自分の予感が外れていて欲しいという願いをこめて霞草は恐る恐る尋ねた。





「・・・・・あの、これって?」

「そのままの意味だ、ヒーロー達を我々の魅力で虜にして無力化を謀るのだ。この本を参考にした」

「あっ僕のだー」





自信満々の頭領の手には一冊の少女漫画が握られていた。それがこのあり得ない作戦の元であることとわかるのは難しくない。

とんでもないことをしてくれたなと全ての元凶である葵を睨む残りの幹部。しかし当の本人は頭領から漫画を返してもらいご満悦だ。


今度は猫柳が異議を申し立てる。





「申し訳ありませんが、この作戦は現実的ではないかと・・・」






申し訳なさそうに言う猫柳に頭領は不思議そうな表情を浮かべる。そんな頭領に心を痛めながらも猫柳が続けようとする。

しかし、猫柳が口を開くよりも前に頭領が合点のいった表情でこう返した。





「案ずるな、お前達が誰よりも魅力で溢れていることは私が一番知っている。ヒーロー達も所詮はただの人間。お前達の敵ではない!」





最後に満面の笑みで締めると、頭領は部屋へと戻って行く。頭領が去って行った後、幹部達は互いの顔を見て苦笑を浮かべる。もはや誰も今回の作戦を却下しようという気はなかった。


結局、彼らは頭が残念で、誰よりも自分達を認めてくれる頭領に甘いのだった。



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