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別れ
闇だ
全くの、なにも見えない伸ばした指さえ消す闇だ
ひどく寒く寂しい
――――
声にならない歌が、微かな響きが闇に優しく恐ろしく溶ける
僅かに見える光は頼りなく、か細い
日の光を嫌う姫が氷柱の影で笑っている
その顔は青白く、生気を感じられない
薄い青を溶かし込んだ着物から伸びる腕はただただ細く、人形のようだ
美しい
恐ろしい
二つの言葉が乱反射して消えた
目が覚めた
微かにかいた汗が引くと同時に夢の内容は消えた。
身支度をし、荷物を持って外へ出る。
ラベット夫妻とアレンは黙ってついてくる。
振り返り、しゃがむと
「アレン、元気でな?」
アレンの頭を乱暴にぐしゃぐしゃと撫で、俺は笑う。
アレンは素直に頷いた。
「またね、りゅうり」
小さな子どもはくしゃりと笑うと手を大きく振った。
山道誰もいない道を黙々と歩いていると、切り株に座る黒装束の男――ボスの側近が居た。
「仕事だ。」
紙を手渡すと男は消えた。
俺はまた血濡れの道を歩く