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ラベット夫妻

アレンを連れて俺はある建物の前に立っていた。

あまり来たくない所だが、アレンを預けるあてはここしかない。

かといって一緒に連れていくには道中は危険すぎる。


つまり、アレンを預けるために山の中にあるここまで来たのだ。


コンコン

木製のドアを軽くノックする。

「はいはーい」

声と共にドアがすぐに開けられる。

「あら、りゅーちゃんいらっしゃい」

中から出てきたのは恰幅の良いおばちゃん、ラベット・シルヴァだ。

「りゅーちゃん可愛い子連れてるわねぇ、とにかく入りなさい」

シルヴァは軽々とアレンを抱っこすると家の中に入っていった。



家の中にシルヴァの夫、ラベット・バーバルの姿は無かった。

「バーバルは?」

出されたコーヒーを口に運びながら尋ねる。

「裏で仕事してるよ」

アレンに砂糖の入ったコーヒーミルクをとお菓子を出しながら簡潔にシルヴァが答える。

突然

ドォォォン

と重いものが倒れた音が聞こえ、しばらくして家のドアが開いた。

そこに立っていたのはこの家の主人、バーバルだ。

ノースリーブから伸びる日焼けした逞しすぎる腕と担いだ大きな斧、木の葉まみれと言う異様な風体をしていた。

「アンタ、ちゃんと落ち葉払ってっていつも言ってるでしょう!」

家の中に入ろうとする夫をシルヴァは叱る

「そうカリカリするなよ」

バーバルは言いつつ外へ消えた。



ラベット夫妻に事の次第を話終わる頃には窓から真っ赤な西日が差し、気温は下がり始めていた。

アレンは何をするでもなく、同じく話を黙って聞いていた。

「りゅーちゃん、今日は泊まっていきな」

話終わりから続いていた沈黙を破り、シルヴァは夕飯の支度を始めた。



「りゅうり・・・」

布団に入って暫くした頃アレンに小さく呼ばれた

「どうした?」

なるべく優しく聞き返す。

「ぼくはこれからここで暮らすの?」

そう言えばアレンには説明していなかった。

ちゃんと説明しなければならないだろう。

アレンは小さいながらも利発的な子どもだと言うことが今まで一緒に居てわかったからだ。

「あぁ。

ただ、俺はお前が邪魔だからじゃない、俺がしている旅がお前にとって危険しかない。それに、不規則な生活だ。勉強も満足に受けさせることが出来ないからラベット夫婦にお前のことを頼んだ」

子どもにもわかりやすく言ったつもりだったが少し難しかったようだ

「簡単に言うと、俺と居ることはお前にとって良くないって事だ。」

「そっか・・・りゅうりともうちょっと一緒に居たかったな・・・」

「夜更かしは体に良くないぞ?寝ろ」

小さな頭を撫でると暫くしてアレンは眠った。

この寝顔を見ることはもう無いだろう。

血濡れの、人殺しの俺が幸せを掴むことは許されないのだから

俺の来た道には今まで殺してきた人の死体しかない

やつらは俺の幸せを赦さないのだ


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