返り討ち
森を抜けた先の町はアレンを拒絶していた。
アレンはこの町の子だったのだろう。
この町ではアレンは潰れてしまう
直感的にそう思った。
俺に向けられる視線が冷たいのは田舎の町では当たり前だが、アレンに向けられる視線が殺気を帯びているのは、アレンの母親が病気だったからだろう。
自然を装った不自然な老人がこっちに歩いてくる。
俺たちと10歩ほど離れた所で足を止めた。
「その子どもをよこせ」
不躾な言い方が気にくわない。
そっと戦闘体勢を整え小声でアレンにしっかり掴まっているように言う。
アレンがキュッと腕に力を込めたのを確認してから老人を無視して歩き始める。
「聞いているのか、若造!!」
歳を取っていると言う理由だけで尊敬して貰えると思っている人間の態度。
敬意を払うつもりも従うつもりも更々ない。
背負っているアレンが怯えているのがわかる
老人の横を通り過ぎると、路地からぞろぞろと腕に自身があるだろう男たちが10人程出てきた。
手に手に鍬や鎌を携えている。
「ガキを置いていけ」
「そうすればお前は見逃してやる」
仕方のないことだが、俺はただの旅人にしか見えないらしい。
弱いやつを殺さない程度に相手をするのはとても気を使う。
ついつい急所を狙ってしまうのだ。
あてられる殺気をやはり無視する。
「おい、てめぇ聞いてんのか!?」
我慢しきれなくなった血の気の多い数人が殴りかかってくる。
アレンが落ちないように押さえながら、回転を加えた蹴りをお見舞いする。
綺麗に入った。
「ぐっ・・・」
白眼を向いて1人が無力化される。
くずおれた音とともに全員が殴りかかってくる。
3分もかからずに全員が地に伏した。
「よっわー・・・」
思わず言ってしまったが、誰も聞いてはいまい。
なぜなら、無力化するために意識を落としていったのだから。
暗い町の道に静けさが戻る。
老人はいつの間にか消えていた。
恐ろしくなって逃げ出したのだろう。
「アレン、大丈夫か?」
返事がない。
首を回して見ると
アレンは目を回していた。
色々な意味でやり過ぎたようだ。
また襲われないとも限らないため足早に町を出た。
劉璃としては襲ってきても返り討ちにする気だが。
結局、町を出た為、野宿になってしまったが、仕方ない。