手合わせ
静かな森奥の奥
ガン、ガン・・・ガキィン・・・
金属がぶつかり合う音の余韻が消え去る頃
「強くなったなぁ」
手にしている短刀が鈍く光を反射している
それとは反対に間延びした声
「あんたの腕が落ちたんじゃないか?」
余裕を含んだ声の持ち主の手にはやはり短刀が握られている
「言うようになったじゃねーの?
坊主」
「うるせえ、じじい」
会話をしながらも短刀は何度もぶつかり合う
「シュトーレン、劉璃!
休もうよー」
張り詰めた空気をぶち壊す女の声
短刀を逆手に握り直し、止めを刺す態勢に入りながら
「夏鈴ちゃんもう疲れたのかい?」
真っ黒な服装の30も半ばと思われる少し長めの天然パーマのかかった黒目、黒髪の男は女にへらへらと笑いかけながら返した。
「もう3時間も休みなしじゃん!」
若草色のプリーツスカートとジャケット、栗色の短い髪に暖かい浅瀬の海の瞳の17、8の夏鈴と呼ばれた女はむくれたように頬を膨らます
「もうそんなに経ったか
俺行くわ」
鞘に短刀をしまい、布の袋に大事そうに包む
「劉璃どこいくの?」
服装をすっかり整えたざんばらな茶髪に翡翠の瞳、やはりこちらも17、8の劉璃と呼ばれた男は返事をせず森の中に姿を消した。