意味のあるらしい仕事
今回の指令はとある官僚を暗殺することだ。
屋敷の塀を軽々越え、俺はターゲットの部屋に侵入した。
男は金を数え、下品に笑っていた。
ぶくぶくと肥えた姿が男の品のなさと汚さを倍増させていた。
ろうそくの揺れる光が影を化け物に映し変える。
ふと、男は後ろ・・・つまり俺を振り返った。
一瞬呆気にとられたような間抜け面が見えたが、それがだんだん恐怖に染まっていく。
「っひ・・・」
引き連れた呻きか叫びのようなものが分厚くテカテカと光る口から零れた。
見られたって構わない
何故ならこいつは半時もしないうちに死ぬからだ。
他の連中は薬で眠らせてあるから仲間を呼ばれる心配もない。
逃げ場はない
俺は一歩近づく
男は慌てて逃げようとするが、先程まで散らかしていた紙に足を滑らせ無様に転ぶ
「た、たすけてくれ・・・」
恐怖にかすれた声が辺りに響く
1歩、2歩、3歩・・・
見上げる目には恐怖が映し出されている
鞘から刀を払い、振り上げる
必死に辺りにあるものを掴み投げようとするが、手に力が入らないらしく取り落としている。
ザッ・・・
降り下ろした刀が男の左手をスッパリと落とし、血飛沫が花を咲かせる。
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ーーーー!!!」
どくどくと溢れる血は床にじわじわと広がっていく。
「死にたくない、しにたくない、いやだ、いやだいやだいやだ!」
ドサッ・・・
「いやだ、しにたくない、しにたくない」
こいつはもうじき死ぬ
俺が刃物に仕込んだ毒によって
毒が聞き始めたならここにはもう用はない。
切り落とした左手を皮袋に適当に放り込みろうそくの灯りを消して部屋を、屋敷を出る。
月のない夜道を目的地に向かってただただ歩く。
次の日、悪徳高官が死んだと言う話は町中に広まった。
俺は旅人として町を出た。