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プロローグ
師匠に事あるごとに言い聞かされた言葉がある。
『いいかい?
この世界はね、みんなが思うほど格好いい世界じゃない、むしろとてつもなく穢い(きたない)
この事を忘れるなよ?』
最期の言葉もこれだった。
あの女はそれだけ言って笑った。
師匠は強かった
誰よりも
だから、沢山の人を殺すことになってしまった訳なのだが
それでも、あの女は穢れなく美しかった。
例え泥に、血にまみれようとも穢れることがなかった。
心が強かったのかもしれない
しかし、殺めた後は決まって夜空を見上げ泣いていた
誰よりも強く、やさしかったのだ
やさしいからこそ、苦しめずに殺す
やさしさを追求した結果が彼女の強さだったのだ