098 葛葉 毅:「聖霊の輩 その1」
朋花と涼子、茜と楓、それに明里とサクラが、「ロンギヌスの槍」に貫かれた侭の哀れな姿で地面に横たわるミリアムの周りに集まってきた。
ミリアムは、目を見開いたまま、まるで人形の様にピクリとも動かない。
サクラ:「お姉ちゃん、死んじゃったの?」
サクラ、ミリアムの傍にしゃがみ込んで、泣きそうな顔で、恐る恐るその金髪に触れる。
翔五:「大丈夫だよ、…」
翔五は、ミリアムに突き刺さった槍の状態を確かめる。 槍は、まるで元から皮膚と一体化していたかの様に、ぴっちりくっついている。
翔五:「うん、大丈夫だ、…」
かつてアリアが幾度も貫かれ、その身動きと共に全ての尊厳を奪われた、因縁の槍、…それでも最後には、アリアは、この槍に貫かれた侭で、メルカバーを倒したのだ。(注、サミシタガリヤ4、エピソード051)
「聖霊」は「輩」に対する思いが強くなる程に、その「能力」を増大する。
翔五:「この子の「所有者」或いは「マスター」が誰なのか、知らないか?」
葛葉:「所有者、マスターに該当するのか不明ですが、「ウツノミヤヒロシ」と言うネット上の架空の人間に対して恋愛感情を抱く様に「調整」されていると、聞きました。」
翔五:「…山猫が考えそうな、下らないアイデアだけど、聖霊が本当の人間と架空の人間を見分けられない訳がないだろう。」
翔五:「だとすると、この子は未だ、自分の「輩」を持っていないんだナ。」
葛葉:「「輩」と言うのは、何なんですか?」
どうやら世界統一政府の中にあっても、幾つかの秘匿ランクが存在するらしく、葛葉は「輩」に関する詳細を教えられていなかった。
翔五:「…聖霊は元々、自分の望みを持っていない、自分から世界に対して能動的に働きかけない、外的要因に反応するNPCプログラムミタイナものなんだ。「魔法」を発動する為に人間をコアにするんだけれど、コノ子みたいに完全に聖霊と一体化した場合は、もう「心の動き」が無くなって「天使」か「悪魔」の指示に盲従して行動するようになる。 でも稀に人間が「主人」になる事が有る。その人間の事を「輩」って言うんだ。」
翔五:「「天使」の中には、自分で動けるにもかかわらず「輩」を持つ者がいる。 「輩」を持つことでその人間の「心の変化」を優先要因にして「能力」を増強する事が出来る様になるらしい、…要するに「君の為なら世界中を敵に回しても構わない」って気分の高揚感がパワーアップの源になる訳だ。だから「聖霊」も「輩」を持つと、時には「天使」や「悪魔」を凌駕する能力を持てるようになる。」
翔五:「それで「聖霊殺しの武器」と言うのは元々「天使」や「悪魔」が使う武器なんだけど、「天使」並みにパワーアップした「聖霊」には「聖霊殺しの武器」が効かなくなることが有る。」
翔五:「だから、この「聖霊」にも「輩」がいれば、「ロンギヌスの槍」を撥ね退ける事が出来るかも知れない、って、そういう事なんだ、」
葛葉:「成程、」




