094 星田翔五:「星を継ぐ者 その3」
翔五:「大体、この期に及んで、此の場に居座る、って言うコイツの魂胆がミエミエなんだよ、それに何だ、そのアカラサマな「クルクル回る銀の鍵」は、…もはや「過剰演出」だ。」
翔五:「つまり、お前は、俺達を此の場所に足止めしたい訳であって、「ヨグ=ソトース」とやらは、此処とは違う何処か別の場所で、「方程式」を「計算中」なんだろう?」
ゆらゆらと、まるで操り人形の様に、数十、数百体の「観事」が、翔五達を取り囲み、…
地面に這いつくばった格好の侭で、喜多見が、ニヤリと笑う。
葛葉は、固まったミリアムを庇いながら決死の戦闘態勢を取るが、…大和武琉にへし折られた肋骨が、身体に刻み込んだ恐怖が、どうしようもなく足を、竦ませる。
翔五:「朋花、この際余計な登場人物には、消えてもらおうか。」
炎の聖霊は、にっこりと微笑み、…
朋花の上空に出現した赤い魔法陣を引き裂いて、…体長60mの真っ赤な「ケツアルコアトル」が、出現する!
遥か上空に飛び立った「炎の翼竜」の羽ばたきから、…無数の火の粉の様な「炎の妖精」が舞い乱吹き!
恰もソレは、最新型のクラスター爆弾よろしく、パリの街中に展開!
地上に出現した数百体の「アバドン観事」を、…一瞬で昇華!…刹那!仕掛け花火の様にパリの街を燃え上がらせて、…一体残らず、消滅させた!
火の玉小僧:「「……(暫し爆音!)……」」
翔五は、未だ不敵に笑みをこぼし続ける「地に伏した悪魔」の前にしゃがみ込んで、勝ち誇ったしたり顔を、突き返す、
翔五:「一体何処に「ヨグ=ソトース」は居るんだ?」
そして、こんな常規を逸したシチュエーションの全てを、
まるで、帳消しにしてしまうかの様に、
凡そ総ての者物を魅了するであろう深い眼差しが、…
皆の前に、降臨する。
その場に居た、全ての人間が、
男も、女も、皆、我を忘れて、その奇跡に、釘付けにされる。
それは、突然、天空に、出現し、…
キラキラと、光の鱗粉を撒き散らしながら、ゆっくりと、舞い降りて来た。
背の頃は130cm、華奢で中性的な肢体。傷一つ無い端正な小顔は透き通る様に白く、長い睫毛に大きくて深い瞳、ウェーブした艶やかな髪は腰まで届く豊かな長髪、そして潤った唇。
星を集積する夜光虫の様に、…全身から、朧げに光を放っている。
人々は、言葉を発する事を封じられて、
身じろぎする事も許され無い内に、その少女の、虜と化す、
奇跡の少女は、
翔五の元へと、歩み寄り、
静かに、つんと、つま先立ちをして、…
キスをした。
アリア:「翔五、見つけたよ。」
アリアは、こっそりと翔五に耳打ちし、…
翔五は、促される侭に、天空を仰ぎ見て、…
満点の星宙の中に、ポッカリと開いた穴の様な、「闇」を探し当てる。
翔五:「パーフェクト!」
それから、依然として空中でクルクル回転を続ける「銀の鍵」を手に取って、…翔五は、それを、瑞穂に手渡した。
翔五:「瑞穂、…手伝ってくれるか?」
瑞穂:「あんた、私の事なんだと思ってる訳?」
瑞穂の眼差しは、どうしようもなく、軽蔑?…憐れみ?…諦め?…
翔五:「時々、色々、残念な姉貴、」
瑞穂:「…、」
瑞穂、目を閉じて、…
瑞穂:「全く!」
アリア:「行くよ!」
瑞穂:「しゃあないな、…ご主人様の命令とあれば、…」
呪文の詠唱も、派手なアクションも一切無いままに、…
二人の姿は、瞬く間に宇宙の彼方へと吸い込まれて、あっと言う間に、…見えなくなる。




