093 星田翔五:「星を継ぐ者 その2」
イアン:「さてと、それじゃあ僕達は「高みの見物」を決め込ませてもらうとするよ、…次回、コソドロが「本当の世界」をクスメトりに来た時の参考に、…「ヨグ=ソトース」が一体どれ程の物か、じっくり観察させてもらおう。」
翔五、天下のメルカバー相手に、ニヤリとほくそ笑む、
翔五:「イアン、お前達じゃ、喜多見には勝てないかも知れないぞ、」
イアン:「聞き捨てならないね、翔五、どう言う意味だい?」
翔五:「お前達天使や悪魔は「嘘を吐けない」だろう。 吐く必要も無いからな、無限の寿命と最強の力を持っていれば、騙される事なんて想定内の誤差でしかない、…でも喜多見は、結構「ギリギリで嘘にならないハッタリ」をぶっ込んで来るぜ。」
イアン:「僕達が騙されて、負けるとでも?」
翔五:「15年前に俺に負けたの、覚えてないのか?」
イアン:「別に、負けてない、君に少し時間を上げただけだ、…その間に君がちゃんと「世界を滅ぼして」くれたのだから、僕達の勝ちだとも、言えるだろ。」
翔五:「うむ、お前の新たな一面を見た気がする、…この負けず嫌いめ。」
イアン:「それで、君ならどう凌ぐんだい? 自称「ナイアーラトテップ」の仕掛けた「ヨグ=ソトース」とか言う「時空改変」を、」
翔五は、メルカバーに包囲されて、空中で身動きの取れなくなっている喜多見を、真下から、じっと見上げる。 喜多見の直ぐ傍には、紫色の怪しい光を放ちながら「銀の鍵」がクルクル回転している。
翔五:「そうだな、…」
翔五:「まず、愚かにも人間様と知恵比べしようなんて考えた「小悪魔」ゴトキのハッタリの種明しから、…始めようか。」
翔五:「まず、「時空改変」と言うのは、こんな風に段階的に、少しずつ変わって行くもんじゃない。 有る条件を満たす「世界」の状態=「解」を決定する「統合方程式」は、ビッタシ一つだけだ。 その「方程式」が見つかれば、「時空改変」は一瞬の出来事だ。 実際にやった俺が言うんだから、確かだ。」
翔五:「つまり、「時空改変」は、未だ始まっちゃいない。」
翔五:「だって考えても見ろよ、たかだか15年そこら前に俺が作った「世界」だぜ、「ハリボテの歴史」に、こんなイメージ通りの「中世ヨーロッパ」のデータなんて、作り込んじゃいない。」
涼子が天に向けて差し上げた掌の数十センチ上空に、黒く光る魔法陣を出現!…その魔法陣の向こう側から、薙刀の様な、細長い柄の付いた「戈」が、…降りて来る!
楓:「出た!…魔法少女、」
(注、イーヴィル・アイ(邪視眼)エピソード051)
鉄壁の美少女が、妖しい輝きを放つロング・グレイブを受け取って、チリチリと黄金色の火の粉を舞い上がらせる矛先を下げ、…下段に構える。
ジリ、と喜多見をニラミ付けた涼子の視線に、喜多見は身体の自由を奪われて、…次の瞬間!
「トリアーナ」の刃を備えた、水の聖霊操る薙刀が、…喜多見の胴体を、貫いていた!
喜多見:「ゲボ!」
あっと言う間に、「幻覚」が消え失せて、…辺りは元の、21世紀初頭の、ぼろぼろに破壊されたパリのオスマン通りへと、…戻る。
皆も、身に付けているモノも、元通り。
喜多見:「何をする! 一寸した演出効果のサービスじゃないか!」




