083 喜多見:「人ならざるモノ達 その1」
喜多見:「大和武琉よ、お前の血を人間に移植したとしても、再生するのはお前の細胞だけだ、宿主のDNA情報をそっくりコピーして成り済ます事が出来たとしても、それは依然として「お前」である事に、変わりは無い。…かつてお前が、「大和武琉」という人間を乗っ取ったのと、同じ事だ。」
武琉:「何を、…言っている?」
不意に武琉の目前1mに出現する喜多見!
しかしやはり、武琉の直突きは、何の感触も無い、…空を斬る!
喜多見:「お前はすっかり忘れている様だが、お前は本来「大和武琉」では無い。 元はと言えば「祖師谷」が瀕死の「大和武琉」に移植した、風変わりな異世界の「細胞」に過ぎない。そうして、それ以来「お前」は自らをも欺いて、細胞レベルで「大和武琉」に成り済まし続けてきたのだ、」(注、メタモルフォーゼ(妖改)エピソード0064)
武琉:「戯言は、…止めろ。」
喜多見:「真実だ、だが安心して構わない、それはごく当たり前の「新陳代謝」とさして変わりのない生体現象だからな、しかし確固として言える事は、…」
再び、行方を眩ませた喜多見の姿が、武琉の目前に、…結実する!
喜多見:「お前は、この私が、外の世界から持ち込んだ、人間とは全く別の生き物だと言う事だ。」
武琉:「止めろ!」
喜多見:「これを見るが、…いい、」
喜多見は、掌に乗るほどの黒い布袋から、透明な立方体を取り出して、地に、…墜とした。
それは、樹脂コーティングされた、人体標本、…「アバドンの目玉」、
フリオ・キャンデラが、アメリカから持ち込んだ、…「アバドンの感染源」、
ノートルダム寺院の裏の公園で、老婆を最初のアバドンへと作り変えた、…地獄の洞の「解錠呪文」、
武琉は、地に堕ちて、転がる、それを、…目で、追ってしまった。
武琉:「かーーーーーーーーーーーーーぁああ!」
それから、武琉は天を仰ぎ見て、…
まるで、20世紀のコンピュータがネット通信に使っていた音声信号の様な意味不明なビープ音を発する、…
葛葉;「…しまった!」
喜多見:「この地の伝承に倣って、お前の事を、そうだな、…「ショゴス」と名付けよう。」
喜多見:「お前には、全ての準備が整う迄の「道化」を演じてもらう、」




