076 大和武琉&観事:「這い寄る混沌 その6」
ガラス:「「…(表現不可能な音)…」」
ソレを「音」だと言い張るのなら、ソレは、世界中の風鈴を一所に集めて、一斉に風に吹雪かせたのに等しい、…「衝撃」だった。
突然、何の前触れも無く、全ての建物、車、装飾品、食器、…そこら中の全てのガラスが、鋭角に弾けて裂けて、舞い上がる!…
まるで小魚が群れを成して捕食者を威嚇するかの様に、無機物達が隊列を成し、…意志を持って、空に舞う昆虫達を攻撃し始めた!
回転し、渦巻き、恰も巨大な海流の様に、あるいは津波の様に、問答無用で、飛行中の数億匹を上回る群生飛蝗の嵐に分け入って、…切り刻み、すり潰し、…
煌めく砂嵐の行き過ぎた後には、一匹の飛蝗の生存も赦されず、全てが悪臭を放つ肉骨粉へと加工されて、ドロドロのペースト状の霙が地上へと、…降り注ぐ!
そしてガラスの脅威は、屋外に身を晒していた全てのモノへと平等に襲いかかる!
膠着状態に在った「第三形態」の大和武琉=観事と「聖霊」と化したフリオの生身の肉体は、突然のガラスの瀑布に巻き込まれて、その皮膚をグザグザに引き裂かれた!
まるで直立歩行する虎の様な形態の観事は、反射的に体表面をエナメルの鎧で覆った「第四形態」に変身する事で、致命傷を避け、… (注、メタモルフォーゼ(妖改)エピソード0293)
フリオは、身体の骨の奥深く迄を切り刻まれ、削り取られて、…一瞬の不覚を取る!
観事はその一瞬を見逃さなかった!
「聖霊」の動きを封じる事の出来る唯一の武器「グレイプニル・ワイヤー」を流星錘の如くに操作して、…フリオの腕を、…絡めとる!
武琉:(上出来!)/観事:(やった!)(注( )は心の声)
観事は力任せにワイヤーを引いて、巨大な星鼻モグラの上からフリオを引き摺り落とそうとするが、…意外にも鈍重そうに見えた巨大モグラが一瞬で反撃に転じる!
まるでトドの様な突進で観事に迫り! …発火性の鼻息を噴霧する!
観事は凶悪臭の鼻息を避けて、更にビルの壁を使って飛櫓走壁! ぐるっと回り込んで更に、…ワイヤーをフリオに巻きつける!
観事:(どうだ!)
 
フリオは「聖霊」の力を持ちながらも、如何せんその能力の30%も発揮できてはいない、それが観事に幸いしていた。
上半身を固定されて、バランスを崩したフリオは、とうとう、モグラの上から引きずり落とされる!
 
当然、巨大モグラは黙っていない!
今度は行き成り、信じられない事に!
ビラビラの鼻の触手が数十mは伸びて!…観事に襲い掛かる!
 
観事:(きゃー!)/武琉:(何だと!)
 
一瞬!べたべたのビラビラ触手が腕を掠めて、…粘液に触れた観事の皮膚が、ジリと、…焼き焦げる!
 
気色悪さに一瞬バックステップした観事から、フリオを奪還して、その巨体の前足の間に護り隠す、…巨大星鼻モグラ!
 
観事:(あっ!ずるーい!)/武琉:(あんなんでビビってんじゃねえ!)
観事は素早しっこい動きで、鞭の様な星鼻モグラの触手を躱し、…
武琉:(余り、時間はかけられないぞ、)
観事:(でもこんな気持ち悪いの、どうやってやっつけるの?)
 
ホテルの前に背広女達が放置して行った、液体窒素タンクを拾い上げる!
武琉:(コイツで、あの気色悪い鼻のビラビラを凍らせてやる!)
発火性鼻息を、大跳躍で躱して! …空中落下しながら液窒ボンベの栓を、解放!
勢いよく噴き出した-196℃の沸騰液体をモグラの鼻にぶっかけて! 更に、怯んだモグラの頭に乗っかって、…
 
武琉:(これでどうだ!)
とばかり、液窒タンクを、モグラの鼻に、…打っ挿した!
 
巨大モグラは、溜まらず、全身から超高熱の汗を噴出! …観事の下半身を燃え上がらせる!
観事:(あちゃ!)
観事は、大火傷を負いながらも、…モグラの上から退避!
 
ミルミル内に観事の火傷は完治していくが、…
それはどうやらモグラの方も同じ事、…
 
武琉:(そう言えば、アイツを攻撃しても無駄だって、言っていたな。)
観事:(そう言えば、言ってたね〜)
 




