073 星田翔五:「這い寄る混沌 その3」
ルーブル美術館のベースメント・フロント・ロビー、
ガラスのピラミッドが上下共に粉砕して、肉食飛蝗から避難していた人々の頭上に降り注ぐ!
至近距離で建物が倒壊する衝撃が震え、まるで絨毯爆撃の様な地鳴りが響き、…
直下型地震の様な揺れは数秒で納まったモノの、美術館内に展示されていた幾つかの歴史的重要文化財が、崩れ落ちて、砕け散った!
翔五:「…納まったのか?」
明里:「何だったんですか? …今の?」
辺りには、割れたガラスで負傷した無数の怪我人が、呻き声を上げている。
想定外の非常事態に、瑞穂が、翔五の元へと駈け戻って来た。
瑞穂:「大丈夫?」
翔五:「ああ、平気だ。」
明里:「普通、逆ですよね、…男が女を気遣うものですよね?」
呆れ顔で溜息を吐く藤沢明里、
そして苦笑いする翔五の携帯が、…鳴動する!
何故か躊躇する、翔五?
瑞穂:「なんで出ないの?」
瑞穂と明里が凝視する中で、恐る恐る相手を、チェックする翔五、…?
翔五:「山猫だってば、」
瑞穂:「早くでなさいよ、」
翔五、瑞穂の顔色を伺いつつ、恐る恐る、…携帯に応答する。
翔五:「もしもし、ちょっと今、たて込んでんだけど。」
山猫:「ちょっと手を貸してくれないか?」
キョトン顔の翔五、もう一度、発信元の名前を確認する。
翔五:「お前誰だ? 俺の知ってる山猫は、もっとオカマっぽいヤサグレタオッサンだぞ。」
山猫:「私は16番目のコピーだよ、たった今ベルサイユの本部が破壊されて、3番目の私は恐らく死んだと思われる。」
山猫は「世界統一政府の総司令官」兼「星田翔五との交渉窓口」を努める為に、不慮の事故や攻撃で死亡しても直ぐに代役が立てられる様に、世界中に46のコピーが作られている。 因にコピーを作ったのは翔五の「聖霊」の一人、忍ケ丘芽衣である。
翔五:「16番目って、何処だっけ?」
山猫:「サン・マロだ、モンサンミッシェルの近く。」(注、メタモルフォーゼ(妖改)エピソード0209)
翔五:「ああ彼処か、知ってるか? 其処の基地って一回モンサンミッシェルごと完全に海に沈んだ事が有るんだぜ、」(注、サミシタガリヤ4 エピソード050)
山猫:「君が「メルカバー」と戦って初勝利を納めた「巻」だろう。 ちゃんと歴史のテキストに記してあるよ。 それで、過去の栄光に浸っている最中に申し訳ないが、一寸手を貸して欲しいんだ。」




