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トリックスター(プロメテウスの火)  作者: ランプライト
第九章「メッセンジャー・オブ・ザ・パルプ・マガジン」
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072 葛葉 毅:「這い寄る混沌 その2」

葛葉は一瞬だけ、躊躇した。


目の前で、正気を失ったミリアムの、脳に埋め込まれた爆弾を起爆する事を、躊躇った。


その1コンマ数秒の内に、全ての破壊は完了していた。


葛葉が、ベルトのバックルに格納したその起爆スイッチを押す事で、目の前の少女の頭蓋骨が吹き飛び、脳漿を撒き散らし、その頭部を半分以上失って、少女は、…地面に崩れ落ちる。


葛葉:「南無三、…」



ミリアムの絶命に合わせて「聖霊」は霧の様に姿を眩ましたが、…そのたった一呼吸の間に、街は廃墟と化し、辺りには、残像と残響だけが、…反芻する。



葛葉の目の前で、上顎から上を吹き飛ばされた少女が、ピクピクと、痙攣を繰り返していた。


葛葉は尚もライフルの照準をミリアムの頭部に合わせた侭で、周囲の状況を、…確認する、


一旦は引き下がったかに見えた「アバドン」の群れが、再び葛葉達に向って、近づく気配がする。



葛葉:「何で、此処へ来るんだ? 他に行く所は無いのか!」


既に四方八方を囲まれていて、動けない状態のミリアムを担いで逃げるのはとても無理そうだ。…イボンヌのバイクはと言うと、「プロメテウス」に金属部品を吸い取られて、もはや使い物になりそうに無い。


チラ見したミリアムの頭部が、ゆっくりと、手品の様に、元に戻って行く。


葛葉:「ミリアム!」


ミリアムが呼びかけに応える様子は無い。 完全に脳を失ったのだ、そう簡単には復活出来ないのだろうか?…が、しかし、葛葉に決定的な攻撃手段が無い事を悟った「アバドン」達は、もはや何を遠慮する事も無いかの様に、ゾロゾロと瓦礫の隙間から這いずり出て来て、…葛葉を取り囲む。


その数、凡そ200!



葛葉:「ミリアム!! たかが頭を吹き飛ばされた位で!…何時迄も寝っころがっているんじゃない!」


そして、掴み掛かって来た「アバドン」の脳天を、葛葉のアサルトライフルが正確に撃ち抜く!…しかし、止められても3体!が限界、…


敵の数は更に増して、一斉に、葛葉目掛けて、…襲いかかる!





そして、まるで光のシャワーの様に!

ピンク色のレーザービームの雨が、降り注いだ!



大轟音:「「… (略) …」」



突如、上空に「プロメテウス」が出現!

ホーミングレールガンの弾幕が!…一斉に「アバドン」の群れを、…粉砕する!


衝撃波と爆風が、周り中の全てを巻き上げ、吹き飛ばす!


大量の粉塵が、舞い上がり、…

見ると、ミリアムが、咳き込む様に、呼吸を、…



葛葉:「ミリアム、俺の言葉が判るか?」


そしてミリアムが、ゆっくりと、呼吸を再開する。



ミリアム:「毅、…」

ミリアム:「…そこは、…「メインカメラ」だから、…」







葛葉:「一体、何が、起きた?」


何かを切っ掛けに、ミリアムが大佐やイボンヌと同じ様に「アバドン」に汚染された事は確実だった。


少女は、喉に詰まった血液の塊を吐き出し、咽せて、…肩で息をする。


ミリアム:「…何かが、頭の中に、…入って来た。」


葛葉:「…何が原因か、推測出来るか? 何故、そうなった?」


ミリアム:「イボンヌの、目を見たら、…何も判らなくなった。」


見ると、肉塊の様に千切れた「アバドン」達が、立ち上がれないまま、腕の力だけで葛葉とミリアムの元へ、這いずりよって来る。 腑のハミデタ傷口からは、ザワザワと、数千匹の黒い飛蝗が這いずり出して来て、血に濡れた羽根を広げて、カチカチと奇妙な音を鳴らす!


葛葉:「ちっ、…」


葛葉は、イボンヌの亡骸に一瞬だけ目をやって、それからミリアムを、…抱き上げる。


葛葉:「兎に角、一旦逃げるぞ!」


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