007葛葉毅「聖霊少女 その3」
葛葉:「ジャパニメーション、ですか。」
士官:「そうだ、元々「聖霊」は欲望に忠実で際限がない。それが奴等の行動原理でありモチベーションだ。生甲斐の為なら奴等は世界中を敵に回す事も辞さない。いや最早そこに意志が働いているのかすら解らん。」
士官:「そんな物に比較的安価で際限なく与え続けられる「餌」として、日本のオタク文化は最適だった訳だ。素体となった少女が思春期で「チュウニ・シンドローム」に対する免疫応答が緩慢だった事も幸いした。」
「聖霊」とは、原理・法則を超越して物理化学現象をイメージ通りに操作する事が出来るプログラムの様なモノで、勿論人間の手によって作られた物ではない。 古来より超常現象として取り扱われてきた類のソレは、世界各地に存在し、それぞれが個々に決められた条件で起動する。 但し「聖霊」単体では現実世界への影響力を持たず、人間と接触・融合する事によって初めて、用意されたプログラムに応じた超常能力を操る事ができる様になる。 その存在理由は「世界」に綻びが出来た際の修復とも、「世界」終末期の破壊と再生とも言われている。
一方で融合された側の人間は、時には心神喪失状態に、時には植物人間状態に、時には何も気づかず、時には身体に回復不可能な障害をもたらし、そして時には人間でなくなってしまう。 その状態をコントロールする事は極めて困難だとされていた。
士官:「更にミリアムを半永久的に我々の制御下に置く手段として、我々は「ウツノミヤ・ヒロシ」と言う「オタク・ドウジン」を採用している。「ヒロシクン」は我々がSNS上に構築し、成りすましている架空の日本人男子だが、ミリアムはSNS上で「ヒロシクン」と交流し、恋愛感情を持つに至って、今では「ヒロシクン」の命令に絶対服従させる事が可能になった。」
士官:「「ヒロシクン」に成り済ます為にも、ジャパニメーションやオタク文化に精通している事が有効なのだ。」
葛葉:「少佐、私はアニメには余り詳しくないのですが。」
士官:「ならば勉強しろ、直ぐにだ。」
士官:「正式な配属は9月からだろう、今からパリに戻って、役に立ちそうなオタクネタの20や30は仕入れてくるんだな。 それが何時かお前の命を救う事になるかも知れない事をよく肝に銘じて置け。」




