066 ミリアム・マリア・ヴァリ「プロメテウスの火 その3」
と、その時、…唸りを上げて始動する、大型重機用ディーゼルエンジンの排気音!
ユルユルと道路に出て来て、葛葉達の方へと近づいて来る、ブレーキー大佐の白いD-Bodyの機体。 リチャードにミサイルを打ち込まれて破損した幾つかの関節部位からは、油圧機構用のオイルらしい赤色の液体が漏れている。
葛葉:「大佐、大丈夫ですか?」
ブレーキーのD-Bodyは呼びかけに返答する事無く、ただ淡々と、距離を詰めて来る、…
葛葉は、グレネード・ランチャー用の20mm炸裂弾のマガジンを、換装する。
葛葉:「イボンヌ、大佐の様子がおかしい。警戒しろ。」
イボンヌ:「ミリアム、念の為にもう一度「聖霊」を召喚して。」
ブレーキーのD-Bodyは、6輪駆動の走行ユニットで、道路を埋め尽くす様に放置された一般車両を押しのけ、乗り越えながら、…
葛葉:「大佐は、…何処だ?」
D-Bodyの走行ユニット、所謂「戦車の車台」の上の「コックピット部分」が、…無い。 それは分離可能で、独立した電動パワード・スーツとして使用可能になっている筈だが、 その部分が、無い?…何処だ?
と、次の瞬間!
ゴシック建築の教会の天辺から、行成り何かが、…飛び降りて来た!
レンガと屋根を突き崩しながら、
ホッキョクグマの様な白い、格闘用ロボット・スーツが、…急襲する!
葛葉は一瞬早く気付いて、アサルト・ライフルの照準を極め!…るが、
その時には、既に、ブレーキーのミニガンは、…掃射を始めていた!
最大速度、100発/秒、通称「無痛ガン」の弾幕が、イボンヌを、…貫通する!
一方で、葛葉の射撃するNATO弾がD-Bodyの装甲に通用する筈も無く!
葛葉:「ミリアム、上だ!」
しかし、ミリアムが振り向いて仰ぎ見た曇り空には、既に「敵」の姿は無く!…群生層飛蝗の嵐しか、見えない!
ワンテンポ早く! ブレーキーの操る6.6トンのD-Bodyの機体が、遥か33mの高さから着地して! アスファルトの地面を、…砕き弾き上げた!
一瞬、反応の遅れたミリアムの胴体を! ブレーキーのミニガンが、直撃!
超高速の弾幕がミリアムの右半身を銃撃!…切断した!
葛葉:「ミリアム!」
ミリアムは、そのまま変な方向に折れ曲がって、地面に、…崩れ落ちる!




