006葛葉毅「聖霊少女 その2」
少佐の肩章を付けた太った士官が、二人の元に近づいてくる。
士官:「引き継ぎは終ったのか?」
男:「Yes Sir!…日本語で、宜しいのですか?」
男女は上官に向かって敬礼の後、気を付けの姿勢をとる。
士官:「ああ、この組織の公用語は日本語だ。覚えておきたまえ。葛葉毅伍長、リラックスしてくれて良い。」
士官:「君の経歴は読んだ。頭脳身体能力ともに申し分ない成績、しかも日本語と日本の文化に精通している。一つだけ腑に落ちない事が有る、どうして体操のオリンピック候補を蹴って迄、こんな汚れ仕事に就く気になった?」
葛葉:「自分は、英雄に憧れていたんです。国境を越えて人類の平和を守る組織からスカウトされて、他の道を選ぶ事は考えられませんでした。」
士官:「そうか、それで行成りの伍長特進か、御目出度う、これで君も晴れて、我々モブキャラの仲間入りだな。」
葛葉:「モブキャラ、でありますか?」
士官:「ああ、所詮我々人間に出来るのは、溝浚いの汚れ仕事だけだよ。」
女が苦笑いする。
士官:「イボンヌ曹長、何がおかしい?」
イボンヌ:「いえ、何も、」
葛葉:「質問してもよろしいですか?」
士官:「なんだ?」
葛葉:「何故、それほど日本語や日本の文化が重視されるのですか?」
士官:「理由は二つある、」
士官:「既に教育を受けたと思うが、この世界は「星田翔五」が「世界を滅ぼすスイッチ」を管理する事によってギリギリの均衡下で存続している。有事の際に星田翔五と正確迅速に意思疎通する為には日本語が最善なのだ。」
士官:「もう一つは我々の切り札であるミリアム・マリア・ヴァリだ、炬燵に潜って尻を掻いているあの「超物理化学兵器」は我々人類が初めて自らの制御下に置く事に成功した「人造聖霊」だ。 我々はあの「聖霊」を手懐ける「餌」として「ジャパニメーション」を用いているのだ。」