051 大和武琉「ホテル・オブ・ザ・インフェルノ その4」
消化器もスプリンクラーも歯が立たない消えない炎に追われて、宿泊客を外へ逃がすしか外無いのだが、…
依然、ホテルの外には、肉食飛蝗の大群が飛び回っている。
フロント:『通りの向かい側のビルに退避できる様に交渉できました。』
(注『』フランス語)
車が渋滞する通りを横切って、宿泊客たちの大移動が始まり、ホテル従業員達がテキパキと誘導する。
渋滞で行き場を失った車のドライバー達が、心配そうに見護る。
既に火の手は他の階にも回っていて、…
茜と楓達もボディガードに連れられて外へ、未だ警戒を解かない背広女と、武琉が殿を努める、
と、その時!
地割れ/地響き:「「「…ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!」」」
行き成り、ホテルの前の「道路」が割れて?陥没し、大量のアスファルトごと、渋滞中の車が、地中へと引き摺り込まれた!
代わりに地下から出現する、巨大な、星鼻モグラ?! 体長10mのモグラ?? 観光バス程の大きさも有るそのバケモノの身体は真っ赤な溶岩の様に燃えている???
巨大モグラは地面に這い上がって来て、車を押し潰し、更に車の燃料に引火してそこら中立て続けに炎上、爆発!
舞い上がる黒煙も、火柱にもビクとも怯まず、巨大モグラはイソギンチャクの触手の様に鼻の突起をひらひら揺らめかせながら、茜に近づいてくる!
巨大モグラの背中の上には、フリオ!
全ての身に付けていた物は燃え尽きて、真っ裸!
見ると、その薬品に焼かれた筈の顔面は剥げ失せて、類稀な超美男子の貌に、挿げ替わっている!
フリオ:『アカネ・サンジョウ、お前は考えた事が有るか?』
フリオ:『お前が生まれなければ死なずに済んだ命の事を、お前が生きサラバエナケレバ、生き延びる事が出来た命の事を、そして今お前が自ら進んで身を差し出せば、今ここで、此れから死なずに済む命の事を。』
と、…
フルチンで演説を打つ、フリオの胸倉を、…
行成り!赤いワイヤーの括りつけられた銛が、貫いた!
ワイヤーの反対側を握るのは、武琉!
武琉:『しつこい男は嫌われるって、知らないのか?』
背広女:「大和! 聖獣は攻撃しても無駄だ、…あの男を、ワイヤーで絡めるんだ!」
力任せに引き戻したワイヤーが、フリオを巨大モグラから、引き摺り降ろす!
次の瞬間、
超巨大星鼻モグラが、超超高温の超超超超臭い息を、…噴きだした!
噴霧上の臭い息に触れたあらゆるモノが、次々に発火!燃焼を開始する!
ギリギリ、モグラの上で踏みとどまるフリオ、
ところが、さしものフリオの「何でも燃やす体液」でも、不思議は「赤いワイヤー」だけは、燃やせないらしい。
しかし、射程距離十数メートルのワイヤーを握る武琉の皮膚にも、超巨大モグラの劇臭呼気の噴霧が纏わりついて!
ぐつぐつと皮膚をただれさせて、じりじりと煙を上げ始める!
武琉:「ちっ!」
武琉の身体が、炎に包まれた!
拳銃を構えていた他数名の狙撃者も例外では無く、あっという間に全身を包み込む強痛の熱に、断末魔の悲鳴を上げる!
スナイパー1:『ぎゃああああ!』
スナイパー2:『わぁあっ! わぁあっ! …ママぁ!』
武琉は、燃え上がった身体の侭に、化物モグラに向かって突進!
跳躍!奇天烈な鼻を蹴って更に飛び!
武琉:「…うざってぇ!」
モグラの背にしがみ付くフリオを、…そのまま地面に蹴り飛ばした!
吹っ飛ばされて、道路の上に仰向けにひっくり返るフリオ(フルチン)!
その鳩尾を、踵で踏みつける、武琉!
黒焦げになった武琉の皮膚の下から、およそ人体の物とは思えない、青白いゲル状の新しい皮膚が、覗いている!
そしてそれは空気に触れた途端に、エメラルド色に硬質化して、硬い鎧を形成する!
フリオ:『お前は、一体何者だ?』




