050 大和武琉「ホテル・オブ・ザ・インフェルノ その3」
次の瞬間!
駐車禁止の道路標識が、フリオの胸板を、…貫いた!
其の儘、よろけて、後退るフリオ、そこへ、
床の砕ける音:「「…!ガン!…」」
突然出現した日本人の男が、もう一本、一方通行の道路標識を、フリオのどてっ腹に突き立てて! 大理石の床に、…串刺しにする!!
武琉:「そういう話は、まず、俺を黙らせてからにするんだナ。」
一瞬で、空気の流れが変わり!
一斉に、茜を確保して、後方へ退避するボディガード達!
ゴボリと泥の音を立てて噴き出したフリオの体液が、金属製の道路標識を溶かして、大理石の床を燃え上がらせる。
武琉:「お前、一体何モンだ?」
当然、致命傷を受けた筈のフリオが、ゆっくりと体を起こし、全身を燃え上がらせて、…真正面で仁王立ちして見下ろしている、目付きの悪い日本人男子の姿を、視界に捉える。
フリオ:『私は、お前を「生き続ける苦しみ」から救う者だ。』
ゆらりと、立ち上がろうとしたフリオの、…
武琉は、下段に構えていたもう一本の道路標識を一閃して!
フリオの首を、一瞬の内に切断した!
ゴロゴロと床を転がり、壁にぶつかって燃え上がり、消し炭になる、…フリオの頭部、
首を切断された胴体は、そのまま俯せに倒れて、切断面から可燃性の体液を垂れ流しながら、…やがて、痙攣を止めて、大人しくなる。
ふと見ると、尚も、フリオの死骸に向けて拳銃を構え、警戒を解かない背広女!
武琉:「こいつは未だ、生きているのか?」
背広女:「どっちにしても人間の常識が通用する相手じゃない事は、確かそうですね。」
部下が、背広女にヘッドセットを手渡しに来る。
CCDイメージセンサを通じて、現場の映像がベルサイユの本部に転送される、
ヘッドセットから伝えられる、少尉の指令、
少尉:「標的を、敵「聖霊」に分類、対「聖霊」用拘束具「グレイプニル」を使え、「液体窒素コンテナ」到着まで、なんとしても活動を抑え込むんだ。」
背広女:「了解!」
小型のジュラルミン製トランクから取り出される、真っ赤なワイヤー、ショットガン型のボウガンにセットされた「銛」に括りつけられて、フリオの死体に、照準を極める、…
と、発射の一瞬前! じわじわと、首の切断面から漏れ出していたマグマの様な粘液状の血液が、ボコボコに床を溶かして!
その侭、フリオの死体が、大理石の床諸共に地下へ落下した!
背広女:「しまった、逃がすな!」
落下と共に、地下のフロア中辺り構わず飛び散った体液が、壁を、床を、調度品を、発火させて! 見る見るうちに、ベースメントフロアは災に包まれる!
刺激性の真っ黒な煙が視界を奪い、あっと言う間に、フリオの死骸の在り処が確認できなくなる。




