045葛葉 毅「思春期の聖霊 その4」
葛葉:「ミリアム、これは仕事だ、多少気に入らなかろうが従ってもらう。 作戦の妨害は許さない。」
ミリアム:「なに、この独裁者、やな奴!」
美少女は、さっきから一度も葛葉の顔を見ようとしない。
イボンヌ:「お蔭で好きなマンガ読み放題なんだから、ちょっと位我慢してね。」
葛葉は、シートの背凭れを倒して、渋々のミリアムを後ろに跨がせた。
ミリアム:「触んないでよ!」
整備士はニヤニヤ笑いながら、フロントカウルにもたれ掛って、葛葉の顔を覗き込む。
トーイ:『このお姫様は照れ屋だからな、まあ、直ぐに慣れるさ、』
(注、『』英会話)
対する葛葉は、あくまでも無表情で、…イグニッションの隣の目立つボタンをチェック。
葛葉:『このスイッチは何だ?』
トーイ:『こいつはペトロ(ガソリンエンジン)とモーターのハイブリッドだが、モーターはハンドルのスイッチを押した時だけ、加速装置として使える。回生ブレーキで発電、充電量はこっちのメーター見てくれ。』
葛葉:「了解だ、…ミリアム、しっかり掴まってろよ。」
ミリアム:「すけべ、……!」
美少女、しかめっ面のふくれっ面、…
イボンヌ:「イボンヌ少尉、葛葉伍長、出動します。」
管制室:「確認した。出動よろしく!」
パドックのゲートが開いて、遥に続く地下通路が現れた。…先が、見えない。
葛葉:「一体、このトンネルは何処まで続いてるんだ?」
イボンヌ:「このまま、ブローニュの森の環状道路地下道まで行けるわ。」
葛葉:「まあ、渋滞しなくて助かるか。」
進入禁止用の車止めが降りて、ライトが赤からグリーンに変わり、
モーターアシストされた二台の白いマシンが、直列三気筒2ストロークの甲高い排気音を唸らせながら、薄暗い隧道に、紅い尾灯の残像軌跡を塗り潰す。




