042葛葉 毅「思春期の聖霊 その1」
地下5階に在る作戦準備エリア、その一画に在る更衣室。
葛葉とイボンヌは戦闘用の防護服に袖を通していた。 更衣室は男女兼用なので多少は気兼ねするのだが、イボンヌは惜しげも無くその素肌の上半身を葛葉の前に晒している。
微かに膨らみかけた下腹が、葛葉を更に恐縮させる。
葛葉:『本当に大丈夫なのか?』(注、『』は英会話)
イボンヌ:『心配いらないわ、一応安定期には入っているから、一週間後なら何も考えずにあなたに任せられたんだけどね。』
葛葉:『大事を取って作戦から外してもらったらどうだ?』
イボンヌ:『初顔合わせのあなたとミリアムを二人きりにする方がよっぽど精神衛生上良くないわよ。それに今回は要するに現場待機だけでしょう、日本人の男は噂に違わず心配性なのね。』
二人は、耐熱耐放射線の衝撃吸収ウェットスーツ(体温調節機能付)に身を包み、その上から、各急所をカバーするCFRP製のプロテクターを装着する。
それから各種武器類をひっかけたベルトを腰に締めて、先ほど受け取った「ミリアム」の自爆スイッチを、バックルに格納した。
葛葉:『「聖霊」は死なないって、本当なのか?」
イボンヌ:『ええ本当よ、実際に試したわ、どんなに惨い事をしても、ミリアムは完全に復活する。」
それを口にするイボンヌの表情は、まるで咎人の様に重く沈む。
館内放送:「イボンヌ少尉、葛葉伍長の両名は、15分後にパドックに集合せよ、」
10mの高さから飛び降りても大丈夫と言う衝撃吸収性のブーツと、各種リモコンと有機ELディスプレーが付いたグローブを付けて、通信用の小型ヘッドセットを頭に被る。
イボンヌ:『マイク、聞こえる?』
葛葉:『ああ、良好だ。』
管制室オペレータ:「二人とも、作戦中の会話は日本語で頼む。」
イボンヌ:「了解。ごめん、」
フルフェイスのヘルメットを小脇に抱えて、…
イボンヌ:「じゃあ、行きましょうか?」
二人は、いよいよ、プレハブ物置の扉を開けた。




