040葛葉 毅「世界統一政府 その2」
大きな机の上で頬杖を付いていた、全身ピンク色の女?男?が、にやりと微笑んだ。
山猫:「あら、若いハンサムの質問なら、私は何時でも大歓迎よ。」
場違いなニューハーフのセリフにも、上級軍人達は眉ひとつ動かす事無く直立不動。
山猫:「ポール、今回の異常事態のあらましを、もう一度、葛葉伍長の為に説明してあげて。」
ポール(少将):「はっ!」
煌びやかな肩章を付けた八頭身のダンディグレイが、床からせり出してきた大型スクリーンのリモコンを操作すると、どうやら衛星写真らしい、パリ中心部のリアルタイム映像が映し出されてきた。
ポール:「本日14時頃から異常発生した群生相飛蝗の発生源を特定した。」
スクリーンの画像は、セーヌ川に浮かぶシテ島の、ノートルダム寺院をクローズアップしていく。 その裏手にある小さな公園の、ベンチ。
修道女の服を着た、一人の老婆が、ベンチに腰かけている。
その、修道服の裾、足元から、小さな、黒っぽい何かが、次々に這い出してくる?
ポール:「この女の姿をしたモノの体内から、一分間に約3300匹の飛蝗が発生、現在もペースを落とす事無く放出し続けている。 現時点までにパリに放出された飛蝗の数は、想定79万匹、一時間後には100万匹、このまま放置すれば24時間後には550万匹に達すると推測される。」
老婆の足元の地面を覆い尽くす黒々とした蟲の大群は、まるでその人間の身体を苗床にして羽化を開始した大量の寄生虫にも見える。
ポール:「問題は、ただ飛蝗が大量発生していると言う事だけではない。この飛蝗は、動物を襲う。」
画面が切り替わり、恐らく子猫の死体だった物に群がる大量の飛蝗の映像が映し出される。それから鳩の死骸、更に、飛蝗に噛まれて無数の傷を負った老人、病院に運ばれた人間の赤ん坊、顔の皮が、ボロボロに、…喰い剥されている。
イボンヌ:『おお、神よ!』
大佐:「神に救いを求めても無駄だ。」
ポール:「弱い動物から襲われているが、数を増すにつれて攻撃対象が子供から女性、より大きな獲物へと拡大しつつある。」
山猫:「こんなフザケタ状況は「聖霊」の仕業と考えるのが妥当よね。」




