030大和武琉「不死身の男 その4」
葛葉:「あの男は、一体何者なんだ?」
葛葉は、白シャツに付いた血の跡を気にする目つきの悪い男から、目が離せない。 既に、腹を貫通した筈の傷跡からの流血は止まっている様だった。
背広女:「彼は大和武琉さん。ネクター・ケースの特別重要参考人よ。 我々は彼らをホテルまで送り届ける途中で、貴方からの応援依頼を受けたの。 近くに居て良かったわ。」
十人以上の人間が、一撃で、動きを封じられて、地べたに転がっている。 中には、生死が不明な者までいる。
偽警官を拘束した背広男が三条茜に近づいて、
背広男:「三条茜さんですね、余り無茶な事をされては困ります。」
三条:「ごめんなさい。」
背広女:「葛葉さん、彼女の事は引き継ぎます。基地に戻ってください、緊急招集がかかりました。」
葛葉:「何かあったのか?」
背広女:「詳しい事は伝達されていません。直接確認して下さい。」
葛葉:「了解した。」
葛葉は、未だ立ち上がれない三条の元へ歩み寄って、手を差し出した。
葛葉:「余計な面倒を掛けたな、済まなかった。カヌレ、美味かったよ。」
三条:「そう、良かった。怒ってないかちょっと心配だったんだ。」
葛葉は、三条の柔らかな手を握り締めて、…
葛葉:「会えると良いな。想い人に、」/三条:「ありがとう。」
それから、後から到着した別の警官から、大型バイクを借りる。
バックミラーにとまっていた、黒い飛蝗が、チキチキと鋭い羽音を立てて、飛び上がった。
最後にもう一度括目した葛葉の視線に、大和が気づく。しかし、お互いに一言も言葉を交わさないまま、…葛葉の乗ったバイクは、大和と三条を、…置き去りにする。




