017藤沢明里「濡烏の髪の乙女 その4」
状況が好転しないのを察したボディガードが前に出ようとして、ぼんぼんが優雅に?それを遮る。
ぼんぼん:「僕は、暴力は好きじゃない。君は、ちょっと考え違いをしているだけさぁ、だから僕は、君がこの僕にそんな口のきき方をしたからって、少しも気にしたりしないよ。」
相変わらず鴫野瑞穂は、ぼんぼんをシカトし続ける。
一方私は、半泣きになってガタガタと震えていた。 もしかしてまた、ドッカ得体の知れない暗い所に連れて行かれて、監禁されたりするの? 私達??
藤森:「武琉〜!」
ぼんぼん:「君と僕の間に足りないのは、そう、信用だよねぇ? 君は一体僕がどんな人間なのか、疑ってる。 本当の権力者、資産家、才能、そういう本物の成功者を、見た事が無いからだろぅ。」
そう言うとぼんぼんは指を鳴らして、…ボディガードの一人が、小脇に抱えたアタッシュケースの蓋を開けると、中身は50Euroの札束が恐らく、20束以上!
ぼんぼんはそれを五つ程摘まんで、ワザとらしく鴫野瑞穂の足元に、…落とした。
ぼんぼん:「おっといけない、…落としてしまった」
額面通りなら、恐らく25000Euro、ざっと330万円?
ぼんぼん:「そうだ、拾ってくれたら、それを君に上げるよ。 お近づきの印って奴だ、」
ぼんぼんの瞳孔が、まるで溶けた水銀の様な濁った輝きに、揺らぐ。 コイツには、何かしらの確信が有るのだろうか?…ところで私が拾ったら、駄目だろうか??
鴫野:「アンタ、名前なんて言うの?」
俄にぼんぼんの口元が、まるで裂けるミタイに、…にやけた。
ぼんぼん:「なんだ、僕を知らないのかい? そうかそれなら、これまでの君の言動にも納得がいくってものさぁ、そして今、君は僕に、興味を持った、そうだね。」
そして鴫野瑞穂は妖しげな眼差しで、必殺の微笑みを、…浮かべる。
ぼんぼん:「僕は土御門貴人、グローバル企業リョウブグループの取締役員、芸能プロダクションリョーブの代表兼プロデューサさ、君だって一度は聞いた事が有るんじゃないのかい? 実はパリには観光に来てるんじゃないのさ、こっちにもオフィスがあってね、今日はこの後、フランス演劇界の巨匠達とのディナーで、…」
鴫野:「残念だけど、ディナーはキャンセルになりそうね。」




