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トリックスター(プロメテウスの火)  作者: ランプライト
第二章「ラスト・シャンゼリゼ」
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014藤沢明里「濡烏の髪の乙女 その1」

私の名前は藤沢明里ふじさわあかり、神奈川県在住の20歳+α、職業見習いカメラマン。…とは言っても、短大を出た後はほぼフリーターで、ウチの母が経営しているアパートの大家手伝いミタイな事をしている。


人間生きていると時々、信じられない様な不思議な出来事に遭遇する事が有る。…つい半年前も、私は元幼馴染で今彼の男子と一緒に、イギリス旅行に行った時に、……(中略)……とまあ、そう言う経緯で、なんだかんだ有って、漸く彼は私に愛の告白をしてくれて、今日に至る。…しかし、


正直、彼が私を選んでくれるなんて思いもしなかったから、今だに疑心暗鬼でストレスフルな毎日から抜け出せない。何しろ彼の周りには「見た目清楚でしっかり者で可愛らしい妹キャラの許嫁」と「アニメの国から抜け出して来たみたいな尻尾付きの激マブ幼女」が四六時中纏わり付いているのだ。


公認彼女になったからって、元々幼馴染の私が、今更一体彼への接し方をどう変えれば良いのかなんて、…想像もつかない。 所構わず手を繋ぐ? 毎日ハグする? 一日一回はキスする? いっその事エッチしちゃう?? 


藤沢:「ありえへん、…はずかしすぎる。」


それなのに私は人一倍嫉妬深くて、独占欲が強くて、その癖ウジウジしてるから何も言えなくて、…だから、彼が半年前の事件で背負った「身体の問題」を検査する為にフランスに来る事になった時も(尻尾付き幼女と一緒に)、心配で居ても立っても居られずに付いて来てしまったのだった。


とまあ、そう言う経緯で、今私はパリのシャンゼリゼ通りに居る。 彼と尻尾付き幼女は未だ未だ検査中で、私は連れと一緒にお昼ご飯を食べに来たのだ。


ところで、ヨーロッパを旅行する時に困るのがトイレ事情だ。 日本ミタイにコンビニで貸してもらえたり、デパートに入れば必ず綺麗なトイレがあったりと言う事は稀で、要すれば大抵はカフェかレストランに入って、何か注文するのと引き換えにトイレを借りる。 所によれば有料の公衆トイレが有ったりするけれど、まあ、それ程数は多くは無い。 ここシャンゼリゼでも事情は同じなのだが、幸いな事に フランクリン・D・ルーズベルト駅の近くのファッションビルの一階には、無料で使わせてもらえるトイレがあった。


とまあ、そう言う経緯で、お昼ご飯の後、急にお腹の具合が悪くなった連れの一人がトイレに行っている間、私と、もう一人の連れは、そのビルのテナント連の一画に有るお土産屋さんの前で、ぼーっと時間を潰しているのだった。…のだが、


知らず知らずの内に、私達は、何時の間にか半径3m余りの、不思議な人垣に、…囲まれていた。

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