130 葛葉 毅:「大逆転 その3」
少佐:「さて、時間だな。」
少佐のゴツい腕に嵌めたマットウオッチ(かっちょいい時計)は、喜多見の指定した日の出時刻に辿り着こうとしていた。
そして、…
次の瞬間!
まるで大気が割れる様な鋭い破裂音と共に、…辺りを、強烈な青い輝きが、包み込んだ!
葛葉:「これは!?」
その光は明らかに、…サクラ達の眠る、仮眠用テントの中、から、発せられている!
駆けつけたテントの中で、
眠ったままのカイトの左腕が、恐らく「外部からの遠隔操作」によって展開し、…
その前腕部の肉が、裂けて、…剥き出しになった前腕の二本の骨と筋肉の隙間に、…血に塗れた、小さな、青白い「トルコ石の蛇」が、妖しい輝きを放っている。
青い光は、周囲の物質を透過して、半径200mを包み込み、…
葛葉の目前で、眠っていた忍ケ丘芽衣が、見る見る内に、真っ白な塩の結晶に変わって、崩れ落ちる。
隣の作戦室テントでは、転寝していた京橋朋花が、茜の膝に抱かれていた舘野涼子が、そして、幽体離脱中のアリアが、塩粒に変わって、…崩れ落ちた。
茜:「いやああああぁ、…!」
狂気に泣き叫ぶ三条茜!
そしてホテルの部屋で、珈琲カップの割れる音が響いて!
恐らく、星田翔五の様子を見に行った鴫野瑞穂も、…
葛葉:「一体、何をしている?」
葛葉は、俄に騒がしくなった部隊の動きに反応して、…鋭い警戒の視線を、少佐に向ける。
少佐:「おっと、妙な気は起こすなよ、これは正しい手続きなのだ。」
少佐は、葛葉の後頭部に埋め込んだ化学兵器爆弾の起爆スイッチを握りしめて、葛葉に、…見せつける。
そして、もう一台の冬眠カプセルが、アリアの眠っていた簡易ベッドの全く同じ場所に位置合わせされて、…念の為にハンディクリーナーで回収された塩の結晶が、カプセルの中に、詰められた。
少佐:「慎重にやれ、ソイツだけは直ぐに再生するぞ、再生途中で構わん、液体窒素で氷づけにするんだ。」
そしてストレッチャーに乗せられて、…星田翔五と濱平万里が運ばれて来る。
兵士A:「どうやら二人は仮眠を取っていただけの様です。」
少佐:「気味の悪いモノを見ずに済んで良かったではないか。」
葛葉:「殺したのか?」
少佐:「催眠ガスで眠っているだけだ、今は、な。」
そう言うと、少佐は、ホルスターからH&K USP(拳銃)を抜いて、星田翔五の頭を、…撃ち抜いた! 3発、4発、…
薬莢が跳んで、コンクリートの床に音を立てて、…跳ね返る。
葛葉:「貴様、どう言うつもりだ。」
既に、葛葉の周りには、FA-MAS (アサルトライフル)を構えた兵士達が取り囲み、…葛葉は直ちに、膝を付かされて、後ろ手に手錠を嵌められる。
少佐:「なーに、世界の安全管理上のリスクを、取り除いただけの事だ。」




