129 葛葉 毅:「大逆転 その2」
CH-53Kキングスタリオン(大型輸送ヘリ)が障害物を片付けたパリ・オスマン通りのど真ん中に降り立って、2台の冬眠カプセルを仮設作戦本部に搬入する、…
ミリアムは、真プロメテウスを召喚、整備士達がマニュピュレータとカプセルの連結具合を調整する。
少佐:「急げよ、時間が無い。」
ミリアムは急かされるままにカプセルの中に入って、
葛葉が、傍にしゃがんで、ミリアムの小さな手を、握りしめる。
葛葉:「済まない、お前に辛い事を全部押し付けるつもりではなかった。」
ミリアム:「私にとって一番辛いのは、毅と離れ離れになっちゃう事、でも、毅が悪いんじゃない。…判ってる。」
ミリアムは、漸く諦めた表情で、葛葉に苦笑いして見せた。
葛葉:「頼む、無事に戻って来てくれ。」
ミリアム:「お願い、もう一度、…キす、」
二人の間を裂く様に、行成り整備士がカプセルの蓋を、閉める。
カプセルの中からは、プロメテウスの操縦室内に設置されたビデオカメラの映像が見れる筈、…
毅は、金属の蓋で中の様子が何も判らなくなってしまったカプセルから離れて、ミリアムが見ているであろう、操縦席のカメラを、じっと見詰める。
通信兵:「プロメテウス、出撃して下さい。」
それでも飛び立とうとしないプロメテウスの前で、銃を構えた兵士達が、葛葉の頭に銃口を向ける。
葛葉:「ミリアム、私は大丈夫だ、…頼んだぞ。」
やがて、意を決したかの様に、ゆっくりと、プロメテウスは浮き上がり、直ぐに、朝焼けの空に滲んで、見えなくなった。
少佐:「葛葉伍長、貴様の処分は、追って決めるとして、…貴様は一体今自分がどう言う立場に有るかは理解しているのだろうな。」
葛葉:「判っています。」
少佐:「ミリアムを制御出来るのは、今やお前だけだ、…」
そして、兵士の一人が、葛葉の後頭部に、巨大な注射器で「何か」を、インプラントした。
葛葉:「っ…!」
少佐:「つまり、ミリアムを正しく組織の管理下に置く為には、貴様の「生殺与奪」が我々組織の手のうちに有る事を判り易く示す必要が有ると言う事だ。…今お前に注射したのは、無線で起爆する化学兵器爆弾だ。」
作業員が、もう一台の冬眠カプセルをテントに運び込んで行く。
少佐:「それにしても、この有事に至って尚、情事に及ぶとは、…平和ボケした極東の猿の考える事は、全く持って理解不能だな。」
少佐は衛生兵を呼びつけて、…
少佐:「星田翔五と濱平万里を叩き起こせ、セックスの最中だろうが何だろうが構わん、…」
少佐、深い溜息を吐く鴫野瑞穂に、…
少佐:「悪いが、お前にも付いて行ってもらった方が、事が穏便に済みそうだな、頼めるか?」
瑞穂:「全く、…」
冷血の女、鴫野瑞穂、…思う所有るのか或は、翔五の事となると冷静な判断を失ってしまうのか、…言われるままに、ホテルへと足を向ける。
少佐:「衛生兵、一応「創造主」殿に敬意を評して、「目覚めの珈琲」を持って行け、判ったか!」
若い衛生兵は言われるが侭に、テキパキと走り回る。




