126 葛葉 毅:「攻撃目標 その3」
翔五達のテントに、葛葉が乗り込んできた。
葛葉:「ご心配おかけしました、もう、大丈夫です、」
一同、顔を見合わせて、それからミリアムに視線集中、
ミリアム:「え?…私、何かしでかしました?っけ?」
アカラサマに気難しそうなひねくれた少年が、偉そうに口角を上げてミリアムを睨み付ける。
山猫:「ミリアム、お前に一仕事頼みたい。」
ミリアム:「この子、誰?」
ミリアム、きょとん顔?
世界統一政府の少佐:「控えろ、言葉を慎め! 世界統一政府総司令官、ヴェルクカッツエ(やまねこ)殿の御前であるぞ、」
山猫のコピーに関する説明に3分、…
葛葉:「それで、何をすればいいんですか?」
少佐:「行くのはミリアムだけだ、葛葉伍長は今回の作戦からは外れてもらう。」
冷たいモノ言いに、葛葉は気付かれない様に、唇を噛み締める、
翔五:「別に君がどうとかじゃなくて、人間には無理なんだ、」
ミリアムが、不安そうに葛葉の顔を見つめる。
ミリアム:「だって、私は単独行動できない決まりじゃなかったでしたっけ、」
ミリアムは、ストレスで暴走した場合にミリアムを殺害してリセットする為の「安全装置としての同伴者」と作戦行動を共にする決まりになっていた。
山猫:「今回の作戦は、ミリアムだけで行ってもらう。」
葛葉:「何処へ、行くのですか?」
山猫:「太陽の裏側だ、」
山猫がパソコンに映し出した人工衛星写真には、何やらゴミだかノイズだか妖しい白い点が映っていた。
少佐:「これは丁度地球から見えない太陽の反対側にある人造物の写真だ、この直径3475km、厚さ30kmの円盤状建造物は、長楕円軌道を公転する地球から完全に隠れる軌道で太陽を公転している。 当然、敵の前線基地と考えて間違いないだろう。」
葛葉:「前線基地ですか?」
翔五:「15年前に俺が世界を創った時には、こんなものは作らなかった筈なんだ、」
葛葉は、一文字に口を結びながら、翔五の顔を覗き込む、…
葛葉:「此処へ行って、どうするんですか?」
少佐:「敵の「輩」である「外津神」を排除(殺害)して来るのだ。」
翔五:「ヨグ=ソトースが、この世界の悪魔と同じ仕組みだとすると、何処か、意識しやすい場所に現実に存在する「本体」が必要だ、半分は賭けだけど、太陽の反対側の中継基地に居るのはそれだろう、そして、コレだけの大事をやってのける為には、「輩」になる「外津神」も近くに居る筈。 そしてそいつは「人間」と同じく、不死身じゃない。」
少佐:「向こうが人類との共存を考えられないのだとしたら、こっちもなりふり構ってはいられない、…我々は神々と戦う為に結成された組織なのだからな、」
葛葉:「悪魔を操る「外津神」が消滅すれば、ヨグ=ソトースは止まるのでしょうか?」
翔五:「恐らく、止まらないだろうな。」
翔五:「そっちは、こっちが何とかするよ。…ヨグ=ソトースの統合方程式を無効にする方法を、アリアが今検討中だ、…」
大尉(技術顧問?):「現在までに観測されているプロメテウスの最高速度はマッハ35(時速42875km)、太陽の裏側までの距離は大体3億kmだとすると、片道6978時間、ざっと290日かかる計算だ、勿論地球と「外津神」の公転による相対移動を利用する事が可能だから、仮に公転軌道を追っかけてくる「外津神」を回転方向270度の位置で捕まえるとすれば、相対距離は2/3で済む計算になる、」
大尉:「それでも190日になるから、実際の飛行はプロメテウスに冬眠カプセルを搭載して最大速度まで加速、その後カプセルのみ慣性飛行で「外津神」に接近後、人口冬眠を解いてプロメテウスを再度召喚、攻撃、作戦終了後再び冬眠カプセルにて地球に戻る、…と言う作戦だ、現在スイングハイを利用できそうな最適飛行経路を計算している、」




