121 葛葉 毅:「窮極の門 その3」
悪魔は、嘘をつけない。
だとすると、この案内人の語っている事は、真実なのだろうか?
人間が人間らしいと思うコレ迄の生き方は、分不相応な間違いだったと、…そう言う事なのか、しかし、…
葛葉:「なら、せめて人間を、此の侭、人間の侭に残せないか?」
タウィル:「それは駄目ですね、貴方達の様な不安定で弱い存在に、何時までも「願望実現能力」を所有させておく事はどう考えても好ましくないでしょう、…赤ん坊にライターを渡して遊ばせているみたいなものですよ。」
葛葉:「たのむ、人間は此処まで進歩したんだ、私達にだって、可能性はあっても良いだろう?」
タウィル:「貴方達だって、シロアリが仮令30mのアリ塚を築いたからと言って、化学兵器を管理させたりはしないでしょう?」
タウィル:「授業はコレ迄です、お帰りは、彼方、…」
気がつくと、葛葉は、門を潜ったその場所で、立ち眩みを起こしたまま、倒れて、気を失っていたらしい。
ミリアム:「あ、出てきた、」
瑞穂:「何かわかったの?」
葛葉:「すまない、…交渉は、出来なかった。」
葛葉は、城の塀に凭れて座り込み、…コレ迄の経緯を二人に伝えた。
葛葉:「…何も、出来なかった。」
瑞穂は、歯痒そうに、ネガティブサイクルにはまり込んでいる葛葉を睨みつけて、…舌打ちする。
瑞穂:「毅クン、しっかりしなさい。 貴方が動かなきゃ、私達には何も助けられないのよ。」
ミリアム:「ちょっと、毅に当たらないでよ。 毅は怪我してボロボロなの、それなのにこんなにこき使われて、…」
ミリアムが二人の間に割って入って、弁護する。
葛葉:「所詮人間なんか、君達の様な「聖霊」に比べれば、ちっぽけな、何も出来ない存在なんだ、」
葛葉:「伝説の救世主「星田翔五」だって、結局は、君達の力に頼っているだけじゃないのか。」
そして、あの案内人の言う様に、それは間違った「魔法」の使い方、なのかも知れない。
瑞穂、大きく溜息、…
瑞穂:「全くこれだから男は嫌い、…女々しいったらありゃしない。」
瑞穂:「翔五はどうしようもない馬鹿だけど、少なくとも自分のやる事はちゃんとやってるわ。」
瑞穂:「アンタ、聖霊って何なんだか、判ってるの?」
瑞穂:「聖霊はね、言って見れば只の「道具」よ、私は「翔五」の「剣」であり「盾」であるって事、「道具」は「人間」が使わなきゃ、何も出来ないのよ、「人間」に使われて、喜んでもらえる事が、「道具」の歓びなの、…判った?」
瑞穂、自分で言いながら、顔真っ赤になっている?
瑞穂:「全く! こんな恥ずかしい事、女に言わせんじゃないわよ!」
葛葉は、呆然と、瑞穂の顔を見詰める。
葛葉:「俺は、どうすれば、良い?」
瑞穂:「だから! しゃきっとしろ!」




