114 願いを叶えるモノ:「奇襲 その4」
翔五:「芽衣!」
続いて出現した「青い魔法陣」から、木の聖霊「青龍」が実体化!
翔五:「その子を、頼む。」
芽衣、深い溜息、…
芽衣:「翔五、流石に無理や、これはホンマの、抜け殻や、」
翔五:「ほんの少しの間だけで良いんだ、命を繋げないか?」
芽衣、自信なさげに頷いて、…
芽衣:「やってみよか、」
芽衣が、茜が抱きしめる「藤森楓」の「抜け殻」に触れると、…
するとそれは、次第にがさがさに乾いて、見る見る内に風化して、ぼろぼろに砕けて、…その中から、小さな、…ヒヤシンスの球根が、姿を見せた。
茜:「こ、れ、…は?」
芽衣:「さっきの女の子、まだ、微かやけど、生きてる。」
それから芽衣は、ビール瓶を拾って、アスファルトで砕き、…
行成り、自分の下腹に、砕いたばかりのガラスの生のエッジを、…滑らせた!
芽衣の下腹から溢れ出す容赦ない出血は、明らかにその傷が内臓に迄届いている事を示している。
それなのに、芽衣は、顔色一つ変える事無く、テキパキと手順を踏んで、自らの傷口の奥深くへと、そのヒヤシンスの球根を、…埋め込んでいく。
そして不思議な事に、確かに有った筈の下腹の傷痕は、あっと言う間に、跡形も無く消失して、…
翔五:「もしかして、俺の事もそうやって再生したの?」
芽衣:「それは、…企業秘密や、」
トランジスタ・グラマーなボディの眼鏡少女?が、一寸困った風な顔で、上目遣いに翔五を見詰めて、苦笑いする、
茜:「なにを、したの? …かえで、は? どこ?」
茜が、パニック状態になって、芽衣に縋り付く、
芽衣:「ちょお、落ち着き、…」
藤森楓は数ヶ月前に「悪魔」と契約を結び、その肉体を乗っ取られかけていた、…既の所で「関目亨」による呪文の施術により、「悪魔」化の進行は止められた筈だったが(注、イーヴィル・アイ、エピソード031)、「悪魔」は楓の体内で、少しずつ、気付かれない様に力を蓄え、「本体」の復活の機会を伺い続けたのだ。
ヒエログラフの呪術に護られた皮膚を除き、既に内側から肉体の殆どを食い尽くされていた楓だが、死の直前迄、彼女自身は「悪魔」の寄生に実感は無く、その意識は元の藤森楓のままだったと思われる。
忍ケ丘芽衣は、唯一残された藤森楓の残骸である「皮膚」から、「人間」の記憶をヒヤシンスの球根の形に集結し、自らの子宮の中で「人間」の再生を試みた、と言うのがアラマシである、が、…幾ら「生命」を弄ぶ「忍ケ丘芽衣」と言えども、死んだ人間の再生は「ルール」に反する行為であり、かなり成功率の低い賭けである事に、変わりは無かった。
翔五は、続いて京橋朋花を召喚、
赤い魔法陣から、炎の聖霊「朱雀」が出現する、
翔五:「上手くいった?」
朋花:「多分、」
朋花、ちょっと不安そうな、苦笑い、…
そこへ片腕の野良猫女が近づいてくる、
万里:「首尾よく「発信機」は、仕掛けられたのか?」
翔五:「多分、」
翔五、ちょっと不安そうな、苦笑い、…




