111 願いを叶えるモノ:「奇襲 その1」
再び、パリ、オスマン通り、
西の空を、巨大なアンモナイトにも似た、邪悪の影が埋め尽くしていく、が、…やがて一瞬の内にそれはまるで飴ガラスの様に、紫色の光の欠片に砕けて、空に溶けて、…消失した。
楓:「すごい、今の、見た?」
茜:「綺麗、ですね…、」
どっかから持ち出してきたテーブルとイスで、即席のオープンカフェを拵えて、異様な超常天体ショーを見上げる楓と茜、
テーブルの対面に座って、涼子がジュースを飲んでいる。
翔五は少し離れたテーブルで、ビールをちびりながら、そんな楓達の様子をじっと、…眺めていた。
翔五の対面では、明里とサクラが赤ん坊になった武琉の面倒を見ている。
背広女達の亡骸を建物の中に運び込んでいた朋花が、…半分崩れかけたレストランから数本のビール瓶を抱えて、出て来た。
朋花:「翔五クン、ビールのおかわりと、チーズも見つけたわよ、」
翔五:「サンキュ、…」
朋花は翔五の隣にピッタリ寄り添って腰掛けて、クローネンバーグの栓を開ける。
朋花:「一応パリに居たアバドンは全部焼却処分したけど、30000人位かな、テレビの映像とかでパリの外へ拡散したのが居たら、ちょっとわかんないね、」
翔五:「まあそれは、…仕方ないな。」
真っ赤なドレスの大きく開いた胸元から、形の良い白い乳房の深い谷間が覗いているのが、…どうしたって見えてしまう訳で、
翔五:「なんで、そんな格好なの?」
朋花:「あら、好みじゃなかった?」
やがて事態が沈静化したと思ったのか、ちらほらと街の様子を見に出てくる住民達、
ライフラインの復旧は全く目処が立たないらしく、街は依然として闇に包まれた侭だった。
それなのにこの辺りだけ明るいのは、明らかに不審な「鬼火」の街灯のお陰である、
翔五:「涼子、悪い、このビール冷やしてくれる?」
涼子:「翔五、飲みすぎ、」
確かに、テーブルの足元には、既に10本以上の空き瓶が転がっている
涼子は、ジト目で睨みながら、翔五の下へトボトボと歩き出す、
茜:「涼子御姉様ったら、…あんな顔もするんですね、」
そして、…
楓:「痛、…」
楓が、下腹を抑えて、蹲り、
茜:「御姉様、どうかしたんですか?」
涼子が茜から離れたその一瞬を狙って、…
ぽたぽたと、楓のジーンズを、無自覚の失禁が濡らしていく、
そして、楓の全身が、輝き出し!
突然!蒼い蛍光のヒエログラフが、その皮膚に浮かび上がった!
茜:「御姉様!」




