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100 葛葉 毅:「聖霊の輩 その3」

それから、葛葉は、更に石化が進んだミリアムの身体を一瞥して、…ミリアムの傍らに、跪く。


翔五:「言っとくけど、彼女は動けないだけで、多分今でも、ここで起きている事はきちんと把握している、君の事も見えてるし、会話も聞こえてるはずだ、…つまり、半端な同情とか、事務的な責任感じゃ、彼女の心は動かないぜ、…その子を「救う為」に幾らキスしたって、駄目だって事だ、」



勿論全ての責任を取らされて、いざとなれば自分が糾弾されて極刑を受ける事になったとしても、それでもミリアムを救いたいと思う気持ちはある、…それ位の「覚悟」はとっくにできている。しかし、それ以上の、ミリアムの事を所謂男女の関係として「好きだ」と思う感情が有るのかと言われると、


翔五:「…君はその子に本当に何も感じないのか?」


そんな事を言われても、「ベル」だって「ビースト」の呪いを解く迄の愛を育むのには「時」を要したのだ。(注、美女と野獣) そんな簡単に、誰かを好きになる事など、到底無理の様に思える。



葛葉:「どうすれば、…」


翔五:「シンプルにその子可愛いじゃん、…可愛いモノは可愛い、好きになっちゃうのは、それで十分じゃないのか?」


勿論ミリアムは快活で、可愛らしい女の子だ、自分が嫌悪感を抱く理由など何処にも有りはしない。


しかし、軽薄な気持ちで、ミリアムの「主人」になるのは、「心を奪う」のは、やはり、間違っている様に思えてしまう、


翔五:「難しく考えてる振りして、恥ずかしいのを誤魔化してるばかりじゃ、永遠に恋愛なんて出来ないぞ、…男なら、時々は勇気を振り絞る必要が有るって事。」


葛葉は、一瞬、反抗的な視線を翔五に投げて、それから、ゆっくりと、そのミリアムの冷たくなってしまった唇に、…



口づけをした。





見開いたままの、ミリアムの両目から、つつ、と、…涙が頬を伝う。


葛葉は、不安そうに、ミリアムの顔を覗き込んで、


ミリアムは、恥ずかしそうに、葛葉から、…目を逸らす。



ズズズ、…と、ミリアムの傷口が緩んで、「ロンギヌスの槍」が、…ズレル。


葛葉は、槍の柄を思い切り握り締めて、一気に、…引き抜いた。


石の様に固まっていたミリアムの身体が、少しずつ元の柔らかさの境界条件を、復帰させて、…


それと同時に、張りつめていた周囲の緊張が、少しずつ、和らいでいく、




葛葉は、心配そうに、ミリアムの顔を見つめる、


ミリアム:「なによ、…」


葛葉、「大丈夫か?」


ミリアム、眉間にしわを寄せて、…


ミリアム:「…アンタさ、私とキスするの、…そんなに嫌な訳?」


葛葉:「そういう訳じゃ無いが。」


ミリアム:「じゃあ、なんでそんな困った顔してんのよ。」


葛葉:「すまない、慣れてないんだ、…こういう事に。」


葛葉、本当に困った顔で、ミリアムの顔を見つめる。


ミリアム:「毅、言っとくけど、…」


ミリアム:「これは、明らかに「貸し」、だからね。」


ミリアム:「ちゃんと、返しなさいよ。」


葛葉:「ああ、」


ミリアム:「本当に、解ってんの?」


葛葉:「ああ、」


ミリアム:「私のファースト・キスは、安くないんだからね。」


葛葉:「ああ、」




それからミリアム、一寸目を逸らして、…


ミリアム:「ちょっと、…痛いんだけど、」


葛葉:「傷が痛むのか?」


傷は、殆ど塞がっているが、銃弾の傷よりは再生に時間がかかるらしい、ジクジクとした傷口が、痛々しい。


ミリアム:「じゃ無くで、…地面に当たってる背中が痛いの、それくらい解らないの?」


葛葉は、ミリアムの身体を抱き起し、自分に靠れかけさせる、


ミリアム:「馬鹿、…」


ミリアム、ちょっと、頬を染めて、…



翔五:「なんだかんだ言って、あの子もまんざらでもないみたいだよな、やっぱり、」


涼子:「そだね、」


翔五、…やれやれと溜息、



翔五:「やっぱイケメンだからか?」


涼子:「そだね、」


涼子、…俺が付いてるじゃないか、と、翔五の肩を叩く、


ミリアム:「そこ、外野!…五月蠅い!」

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